アレク

しかし、なぜ君が実験のことを知っている?

フェリックス

それは、ヴィクターから情報を得たからです。

アレク

なに ヴィクターだと?

アレク

なるほど、あの猫は確かに人間界の物をたくさん持っているからな。

フェリックス

いいえ、ヴィクターはその実験から生まれた猫です

フェリックスの口調は静かながらも、その事実の重さをアレクに突き付けた。

アレク

なんだと?!

ヴィクターはかつて人間によって選ばれ、売買された。主は心温かい人であったらしいが、
ある理由によりやむを得ずヴィクターとの生活を断念しした。その後の受け入れ先は
ひどい環境で、日々、虐待の連続だった。

フェリックス

ある日、ヴィクターは酔って帰ってきた主人の目を盗み、ごみ箱の餌を食べていた。

しかし男に見つかり

腹を蹴られ
それでも収まらない男はさらに

殴ろうと襲ってきたのです

殴られそうになったその瞬間

男が足を滑らせ倒れた

体を強く打ち付けた男はその激しい衝撃により
うめき声が静かな夜に響いていた。
その時、ヴィクターの中の何かが切れた。
冷静さを保ちつつも、
内に秘めた復讐心が炎となって燃え上がった。

運命が逆転したことを確信したのだ

ヴィクターは冷酷にも飼い主の耳を鋭い歯で噛みちぎり、肉を裂き、その一部を地に落とした。
痛みで悶絶する飼い主を後に、
ヴィクターは夜の帳へと消えていった

フェリックス

そしてここ、キャットタウンに
流れついたのです

フェリックス

人の手によって養われる運命には、このような危険性も含まれています。

フェリックス

さらに、人間の社会で名声を得ることが、本当に幸せなのでしょうか?

アレクは沈黙し、
遠くを見つめながらつぶやいた。

アレク

あのヴィクターが…

人間界の過酷な現実と、猫が抱える
複雑な過去が、2匹の間に重苦しい空気を
作り出していた。フェリックスの言葉は、
アレクの心に深く刻まれた。

つづく

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