アルテミス

はじめましてー! 私アルテミスって言います。神様やってます!

アスマ

あ、そういうのは間に合ってるんで

アルテミス

ちょちょちょ! 違います違います! 宗教とかじゃないです

アスマ

けど今神様って

アルテミス

でも違うんです。えーとですね、神薙アスマさん、でしたっけ? その、どんな願いでも叶えてくれるアイテムに興味はありませんかっ?

アスマ

ないですね

アルテミス

即答っ!? いやいや待ってくださいよ。私はですね、強い信念を感じて、ここまで来たんです。アスマさん、あなたには信念がある。神の力を借りてでも叶えたいような、そんな強い想いがあります。私には分かります

アスマ

…………

アルテミス

それはきっと、私こと恋の女神アルテミスと引き合うくらいですから、恋の願いではありませんか? ほらほら、そういうお年頃ですものね? 遠慮しなくていいんですよ。お姉さんに相談してみなさいな、ほらほらぁ

アスマ

…………それは

アルテミス

はいはい?

アスマ

その――アイテムとやらは、本当にどんな願いでも叶うのか?

アルテミス

ええ、そりゃもちろん! 世界中の神様がそれを求めて戦うくらいですからね!

アスマ

へえ…………そりゃ、面白い

――カンカンカンカンカンカン!

アスマ

…………

くっそやかましい音で目がさめた。

見れば、太陽みたいな笑顔のアルテミスがフライパンとオタマでエイトビートを刻んでいた。超うざい。

アスマ

うるせえなぁ……なんだよ、バンドでも始めるつもりか

アルテミス

違いますよ。アスマさんがいつまで経っても起きないからです

アスマ

ほっとけって……昨日の戦闘で疲れてるんだ

アルテミス

いや、大した運動量じゃないじゃないですか

アスマ

ばっかお前、ボッチの運動不足を舐めるなよ

夏休みの間、今日までまともに外出したのは五回くらいだろうか。

ちなみにその五回は〈最終戦争(アポカリプス)〉しに行っただけである。

え? 友達と遊びに行く? なにそれ? クソ暑い夏に、わざわざ混んでいる海やらプールやらに行ったら具合悪くなるに決まってる。


ゆえに、遊びに行く友達など最初から作らないで、外出の機会を減らすことが最強の熱中症対策となる。

病院のパンフレットとかにも書いておくといい。

アルテミス

まあアスマさんが体力ゼロのダメ人間なのは分かりました

アスマ

そこまでは言ってない

昨日だって頑張って走ったじゃないか……。

アルテミス

分かりましたが、今日は九月一日、夏休みは終わりです。今日から学校ですよ!

アスマ

そういやそうだったか……

なんかバタバタしてて忘れてた。

つまり、アルテミスと出会って〈最終戦争〉に参加してから、一ヶ月近く経つわけだ。


出会ったときの会話――さっき見た夢――が、はるか昔のことに感じる。

アルテミス

どうかしましたか、アスマさん?

アスマ

いや、お前と最初に会話交わした時のことを思い出してな

アルテミス

私たちの運命の出逢いですね!

アスマ

ああ。あんときもお前はアホだった

アルテミス

んなっ、なんですと!? いやいや、そんなことありませんよ?

アスマ

いや、アホだろ。勝手に俺の願い事勘違いしたりして

アルテミス

あれはアスマさんが悪いんです! 騙すようなことをするから

アスマ

別に、俺はお前の言う通りだなんて言わなかっただろ

アルテミス

ぐぬぬ……

そう、俺とこいつの〈最終戦争〉は勘違いから始まった。

アルテミスが勝手に、俺に恋の願い事があると思い込んで、勧誘してきたのだ。

結果俺はこいつから〈転聖鍵(セイクリッド・キー)〉を受け取って〈転聖者(オーヴァーライド)〉となり、神々の争いに参加することになった。

高校生ならば恋の悩みの一つもあるだろう、なんていう下らない思い込みをしていたアルテミスが悪い。

恋愛脳はこれだからな……世の中、ラブコメに縁のない人間の方が多いんだぜ!

アスマ

そんなことより……その格好はなんだ?

俺はようやくその質問を口に出す。

ベッドの横でにっこにっこしてるアルテミスは普段のワンピース姿ではない。

俺が通う都立藍生(あいおい)高校の女子ブレザーである。

アルテミス

いえね、私も今日からアスマさんと一緒に学校に行こうかと思いまして

アスマ

はぁ!? どうやって?

アルテミス

いや、それはほら、こう、色々頑張ってですね

アスマ

……あーいい、もういい

どうせ俺には聞いたところでよく分からない。

神様たちは、人間社会に溶け込む様々な手段を持っているらしいのだ。

もともと持っていたのか、〈最終戦争〉のために用意したのか、その辺はよく分からないが。

まあ、確かにいつ戦闘になるか分からないんだし、パートナーとはあまり離れずに過ごしたほうがいいのは確かだ。

……こいつが近くにいることによる精神的苦痛は我慢するしかない。

アルテミス

そんなことよりアスマさん! 他に言うことはないんですかっ?

アスマ

ねえよ

アルテミス

はやっ!? いやいや、まさかそんなバカな。女子高生ですよー、金髪美人の制服姿ですよー。テンション上がりませんか? 人生楽しくなりませんか?

アスマ

自分で美人言うな

アルテミスは何が楽しいのか、相変わらずにっこにっこしながらポーズを取った。


仕方なく俺はアルテミスの制服姿を改めて眺める。 確かに妙な迫力はあった。


生粋の金髪は神々しいほどにきらめいて、おとなしいデザインのブレザー姿に精彩を加えている。


そそり立つように大きい胸は、布地を大いにひきつらせながら、その存在を主張している。


脚が長いからだろう、上下のバランスが相対的に変化して、どこか違う制服に見える。

総じて、学校で見る他の女子とは、明らかに差別化された、オンリーワンの魅力を生み出していた。
うん、つまり一言で言うと、

アスマ

――外国人のコスプレAVみたいだな

アルテミス

ひどっ! ええー、ちょっと待ってくださいよアスマさん。まさか感想、それだけですか?

アスマ

いいから、ほら、さっさと飯食うぞ

アルテミス

え! この話題もう終わりなんですか!? 私なんのためにこの服用意したんですか!

アスマ

学校行くためじゃねえのかよ……

誤解と勘違いからパートナーになってからというもの、アルテミスはちょいちょい俺に「人生の楽しさ」やら「世界の素晴らしさ」やらを主張してくる。

まあ、彼女としては、〈最終戦争〉には勝ちたいけど、その結果パートナーに世界の滅びなんぞ願われては困る、ってことなんだろう。

けど、その素晴らしさを伝える手段が制服コスプレとかだったりするからズレてるよなぁ……。

アスマ

だいたいその制服、俺は毎日学校で見るんだぞ。テンション上がるも何もないだろ

アルテミス

いやいやいや、そんなこと言ってると、卒業してから後悔しますよ。人は後から気付くんです。『あのとき自分はコスプレパーティの会場にいるようなものだったのか』と!

アスマ

……ああ、神様って長く生きてるから、ご年配の方の気持ちもよく分かるんだな

アルテミス

ちょー! 止めてくださいよ! 私高校生ですからね! アルテミスさん十七歳!

アスマ

はいはい分かった分かった……分かったからちょっと黙ってろ

朝からどんどん気力が奪われていく……。俺の苦味の強い粉を選んで、コーヒーを淹れた。         

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3|第1話 クズだけど異能バトルに参加してみた(2)

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