平桔平

……クラスの奴らが、初めて行動を共にしたからですか

俺が言うと、先生がすっと顔を上げた。


心の中を言い当てられたことへの驚きか、己の過失に対する罪悪感のためかは分からない、ただその表情は酷く脆くて、儚げだった。

柊瑞穂

……そうよ。私はあのクラスの担任になって一年が経つけど、彼らはその間、決して互いの絆を深め合ったりはしなかった。弦巻君なんかは努力してくれたけど、それでもあの空間に充溢
(じゅういつ)した、息の詰まるような空気が取り払われることはなかったわ

先生の声は重かった。


内容にも増してその陰鬱な語り口こそが、つい最近まであのクラスの中にあった溝の深さを物語っている。

柊瑞穂

でもあなたが来てから徐々にクラスの雰囲気に変化が現れた。それこそ月並みな言い方になるけど、皆が一つの目標に向かって一致団結していた。私はあのクラスのそんな姿をずっと見ていたかった。あなたが襲われるかもしれないと予期した時も、本当は指示に逆らってでも警護に向かうべきだったのに。全てをあの子達に託してしまった

平桔平

…………

柊瑞穂

この不干渉は学校側の意思だったけれど、それ以前に私のしたことは一教師としての職務放棄よ。だって、自分の生徒を見捨てたも同然だもの

そこまで話すと、柊先生は口元を歪めて再び視線を床の上に這わせた。


自らの願望と責務を天秤にかけてしまった悔悟(かいご)がひしひしとこちらに伝わってくる。




けれどすぐに彼女は沈痛な感傷から脱して、毅然とした姿勢を取り戻した。

柊瑞穂

一つ、あなたにとって重要な提案があるわ

俺にとっての重要な提案。


先生は一瞬続きを口にするのを躊躇ったが、すぐに迷いを振り払った。

柊瑞穂

……ここだけの話、もしあなたが本気でここを出たいと願っているのなら、交渉次第で一般人であるあなただけは、政府の監視つきではあるけれど、この学校から出ていけるかもしれない。あなたはここでは無力だし、また今回のような事件が起きれば、やはり学校側はあなたを見捨てる判断を下すと思う。身の安全も考慮されずに、ここに残るメリットはあなたにはないわ

平桔平

それは……

どこかこちらを試すような、あるいは自らを戒めるような口振りだった。

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91|七日目 罪校生一同―ざいこうせいいちどう―

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