認めがたい事実に、俺の返事も尻窄みになってしまう。
つまり学校側は、俺を見殺しにする選択をしたということだ。
そして答えを伝えた柊先生も、唇を噛み締め、床の一点を憎々しげに見つめていた。
それ故、計画の背後には各組織の思惑が交錯している。例えば単純に民間人に危害が加わらないよう、犯罪者予備軍をこの場所に隔離しておくべきとか、犯罪者予備軍を将来的に組織の下で利用しようとか、本当に様々。
我々は決して一枚岩ではないのよ。今この瞬間も、あなた達の行く末についての議論が行われ、各々の策謀が張り巡らされてる。でも忘れないでもらいたいのは、本当に、心の底から生徒達のことを想って教育を施そうとする人達もいる。必ずしも、あなた達に危害を加えようという人達ばかりじゃないの
…………
最初の質問に答えていなかったわね。この連続強盗殺人事件に平君が巻き込まれたことを知っていたのか、だったかしら。……答えはイエスよ。それどころか、犯人もほぼ特定できていた
……そう、ですか
認めがたい事実に、俺の返事も尻窄みになってしまう。
つまり学校側は、俺を見殺しにする選択をしたということだ。
そして答えを伝えた柊先生も、唇を噛み締め、床の一点を憎々しげに見つめていた。
私達には、あなたが盗難被害に遭った時に指示が下されたわ。『手を出すな』って。どうしてですかと尋ねると、上の人達は『平桔平の生死は我々の関知するところではない』
と。それどころか、『彼を巡る本物の犯罪者と犯罪者予備軍の接触は、貴重なデータになるだろう』とまで、のたまった人がいたらしいわ
そんな……
運営側の一部の人間にとっては、こんな凶悪事件ですらただの実験に過ぎなかったというのか。
生徒達の身の安全の確保を放棄してまで。
だがそんな事実に失望を覚える一方で、俺はそれを伝える柊先生の姿に、少しだけ安心していた。
それだけ悔しがってくれているのなら、きっと先生は本当に俺達のことを想って行動してくれる人達の一人なのだろう。
けれど柊先生は硬い表情のまま、椅子の背もたれに体重を預けた。
でも……そんなことも、きっと言い訳ね
え?
言い訳とはどういう意味だ?
生じた疑問に答えるように、先生は続ける。
私達が事件に関与しなかったのは、上司に手出し無用と宣告されたから。でも同時に、私は心の奥底で……このままずっと、あなた達の姿を見ていたいとも考えていた
それはどこか、咎人の懺悔にも似た響きがあった。
しかし俺はその告白を聞いて瞬時に納得ができた。
転校二日目に初日の感想を報告した際の彼女の態度や、巴や弦巻から語り聞かされたクラスの元々の状態など、いくつかの点を繋ぎ合わせれば、先生の罪の由来を推し量ることができるからだ。