メロンパンの袋を開けていると、レジ付近の机にあの兄妹の姿を発見した。
メロンパンの袋を開けていると、レジ付近の机にあの兄妹の姿を発見した。
どうも、菊菱妹と忍先生
俺が声をかけると先生は「やあ」と手を上げて応えてくれた。
二人で飯っすか。仲良いんすね
いやあ、遊が一緒に食べようって聞かなくてね。まだクラスの子達と仲悪いのかなと心配してるんだけど
先生の憂慮を聞いて、俺も苦笑して頬をポリポリと掻く。
確かにあいつらは一日二日で慣れるにはアクが強すぎる。
今しばらくは様子見の期間だろう。
平、桔平……
菊菱遊は持ち上げていた箸を置いて、俺の名を呼んだ。
忍さんに顔を向けていた俺は視線をそちらへ滑らせる。
……また、人生ゲームしろ
まさかの遊びのお誘いだった。
お前、人生ゲーム嫌いなんじゃねえの? 普通にテレビゲームでいいじゃんよ
どうやらこの間、桔平君に大勝してから味をしめたらしくてね。『ここでボロボロにされる分、あいつで解消する』って意気込んでるんだ
性格悪っ!
性根が腐ってやがる。
ようやく痛みを分かち合える仲間ができたと思ったのに、互いに傷つけ合ってどうするんだ。
だから今度は、お兄ちゃんも一緒に
そう言って彼女は俺と忍さんを交互に見やった。
ゲーム自体は楽しかったし、誘いに乗ってやってもいいんだが、俺には別のアイデアがあった。
いいけどよ。今度はウチ来て皆でやろうぜ。大人数でやったほうが盛り上がるだろ
う……
菊菱遊はその提案に声を詰まらせる。
だが、それにはノーは言わせない。
お兄さんも招待すっから。俺と二人がかりでお前を守れば、被害は最低限で済むだろ
その分こちらの被害が増してしまう点にはこの際目を瞑(つむ)ろう。
そうだよ、遊。どうせなら皆と仲良くなっておいたほうがいいよ
忍さんは俺に大賛成のようで、菊菱遊を優しく促した。
そしてしばらくすると、
……機会が、あれば
彼女は小さく頷いてくれた。