七日目 罪校生一同
―ざいこうせいいちどう―

では、これにて物語は七日目を迎える。




総括してしまえば、全ての問題は解決したわけだし、まあまあのハッピーエンドといっていいだろう。


だが俺は一つだけ悩んでいることがある。


もしこの物語を、見ず知らずの誰かに語って聞かせることになったとしたら──俺はどう説明すればいいんだ?

不登校の女の子を復帰させるために奮闘する話?

それとも街を震撼させた連続殺人鬼を退治した話?

前者だとしたら、俺はただ手玉に取られ、翻弄されただけに過ぎないし、後者であっても、一方的に襲われたところをクラスメイトに助けられただけだ。


結局俺は一連の流れの中で、一人テンパってわちゃわちゃしていたちっぽけな存在にすぎない。




もしかしたら「そこにいたという事実こそが大切なんだ」と心優しき人は慰めてくれるかもしれないが、俺の立場はどちらかと言えば『蚊帳の外』という表現が適切であり、とてもじゃないがそんな気休めの文言で元気づけられるとも思えない。




そうだな……それを踏まえたうえで一言でまとめるならば、この物語は単に、一人の普通人が猟奇的怪物軍団の中に放り込まれる話、といった感じだろうか。

より分かりやすく説明するなら、初めにも述べた通り『日常もの』と呼べるし、少し言い方を悪くするなら『災害もの(デイザスター)』と言ってもいい。

要は日常的に災害に巻き込まれるってことだ。

……地獄みたいだろ? 




でも現実なんだな、これが。

さて、悲劇的な境遇を嘆いている場合じゃない。


異常者達に捧げられる贄となった哀れな子羊である俺にも、ここからの流れをきちんとまとめる義務があると自負してはいるので、一人一人のエピローグ的な小話を簡潔に紹介したところで、この物語を締め括ろうと思う。


ではでは皆さん、今しばらくのお付き合いを。

昼休み序盤で人性の逆鱗に触れてしまった俺は、購買の前に保健室に寄っていた。

鳥居笹千流

怪我が大したことなくて良かったね、桔平君

平桔平

当然のようにここにいたお前のほうが大したもんだよ

腕にできた擦り傷に消毒液を塗ってもらいながら、俺は相変わらずの鳥居笹の献身ぶりにドン引きしていた。

鳥居笹千流

あと桔平君の家の冷蔵庫、お野菜が足りなかったから今日の放課後にでも買っておくね

平桔平

……通い妻か、お前は

鳥居笹千流

え! つ、妻!? それって、プ、プロポーズと捉えていいのかな……?

平桔平

安心しろ。ただの譬えツッコミだ

鳥居笹千流

そ、そうだよね。でも嬉しいな。えへへ……

こいつの気配りの良さなら良い奥さんになれるだろうけどな。


個人情報も配っちゃうからプラマイゼロだ。

平桔平

だけどお前には色々世話になったよ。ありがとな

俺が礼を告げると、鳥居笹は力を込めて言った。

鳥居笹千流

ううん! だって桔平君のためだもん! そのためだったら私、世界を敵に回しても怖くないよ!

平桔平

そしたら俺も敵に回るけどな……

こいつの愛は、相変わらず重い。

平桔平

でもよ、俺に回す分の愛情を少しくらい他の奴らにも分けてやれよ

呆れ半分で漏らした言葉だったが、意外にも鳥居笹はすぐさまこう返答した。

鳥居笹千流

勿論! 桔平君ほどとは言わないけど、私、皆のことも大好きだもん!

平桔平

……そりゃ良かった

もしかして鳥居笹千流の愛は、重いのではなく、深いのかもしれない。

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84|七日目 罪校生一同―ざいこうせいいちどう―

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