巴求真

うーん。単なる僕の気紛れと取ってもいいんですが……あえて理由を挙げるとするならば、平さんが嘘を吐いていたからですよ

平桔平

……どういう意味だ?

巴求真

平さんは言いましたよね? 『お前らのことなんかこれっぽっちも信用しちゃいねえ』って

平桔平

それは……

今となっては撤回しようのない暴言だ。


だが少なくとも、俺は嘘を吐こうなんて意識していたわけじゃない。




しかし巴はそんな胸の内すら見透かすように、

巴求真

言いたいことは分かりますよ。あの時は気が動転していて、虚言を弄する余裕なんてなかったでしょうしね。でもね平さん、あらゆる言葉は本心から言わなければ、嘘になるんですよ

平桔平

…………

巴求真

へへ、まあ少し頭を働かせれば、僕達が犯人という可能性に至るのは必然です。反対に平さんがそこにすら辿り着けないほど無能だったら、僕はもっと軽蔑していましたよ

やはり不気味な笑みを湛えながら、巴は言うのだった。


俺はもう一度「ごめん」と頭を下げる。



こいつらは俺が思っているような犯罪者予備軍ではなかった。

こいつらはただの、クラスメイト思いの高校生だったのだ。

さて、色々苦労もあったが、そんなわけで強盗殺人事件は解決か、と安堵したところへ、弦巻は表情を意味深なものに変えて、内緒話でもするように言った。

弦巻藤吾

でも、実はこれで全部が終わったわけじゃないんだよね。この事件にはもう一つ裏があるんだよ、桔平ちゃん

平桔平

へ? あの警官が犯人で、それで終わりじゃねえのか?

弦巻はまたちっちっち、と大袈裟に指を振る。

弦巻藤吾

甘いよ、桔平ちゃん。これまで得た情報を吟味してごらん。すると、もう一つの真実が見えてくるからさ

平桔平

う〜ん……

俺がその場で腕を組んで考え込み、全員がその姿を見つめていた。


なんだか俺だけできが悪くて、恥ずかしくなってくる。




だけど確かに、まだ不可解な点はある。

例えば、この事件が発覚した時のこと。


どうして犯人は部屋に侵入した時、俺を待ち伏せなかったのか。

家具の位置をズラしたりしたのか。

あとは菊菱から得た情報。

犯人はあんな異常な思想を動機にしていたが、それが空き巣事件が始まった頃の動きと一致しない。




そうだ。




今思えば一連の事件は、犯人の行動に一貫性がない……。

平桔平

……あ

俺はポンと手を叩く。


きっと今、頭の上には光る電球が浮いているだろう。




それに気づいた弦巻が俺を肘で小突いた。

弦巻藤吾

桔平ちゃん、ようやく真相が分かったかい?

平桔平

……もしかして、菊菱のことか?

弦巻藤吾

ご名答。さっすがだねー。……そんで、今から向かうの? 遊っちのとこ

俺はあの部屋の中にポツンと座る少女の姿を思い浮かべた。

平桔平

そうだな。あいつの不登校も直してやんねえといけねえし

弦巻藤吾

頑張りなよ、桔平ちゃん。ここからが君の見せ場だぜい

弦巻からゆるい鼓舞を受けた俺は五人と別れ、一人、菊菱遊のマンションへ向かった。

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76|五日目 真相犯明―しんそうはんめい―

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