ドン引きもそこそこに、俺は話を事件に戻す。

平桔平

……とにかくお前らは、たった二つの手がかりから犯人を絞り込んだってわけだ

弦巻藤吾

ま、ヤマを張ることはできたよね。でも確実ではなかったから、保険としてあくのんにはもう一仕事してもらったんだ

平桔平

人性がまだ何かやってたのか?

弦巻藤吾

警察署内での大暴れさ。あの騒ぎに乗じて、ちるるの住宅侵入スキルで俺達は別ルートから署の資料室に潜り込んで、警察が集めた容疑者のリストを探ったんだよ

平桔平

家ならまだしも……警察署にまで入れるのか?

そう尋ねると、鳥居笹は少し照れ臭そうにはにかんだ。

鳥居笹千流

私、桔平君のことを想ったら、力が湧いてきて……何でもできるようになっちゃうんだ

平桔平

何でも……

弦巻藤吾

ははは。結局のところ、恋する女の子は最強ってことだね

弦巻は奇麗にまとめるが、つまり俺はこの無限追跡女から、徹夜で掃除をした疲労をおして国家権力の懐に潜り込むほどの絶大な愛を向けられていることとなり、その底知れぬ執念にいよいよ心胆を寒からしめる思いだった。




でも、この件は人性の力も大きかったんだな。

警官に探りを入れるわ、計算ずくで暴れ回るわ。

もしかすると一番の功労者は彼女かもしれない。




ちょっと礼でも言っとこうかと彼女をちらりと見やると、「あ?」と、どすの利いた睨みをきかせてくる。


……やっぱこいつ、最悪の人種だよ。

破壊神(デストロイヤー)の圧に萎縮していると、弦巻が感慨深そうに両腕を頭の後ろで組んだ。

弦巻藤吾

でーも、リストを手に入れた後がいっちゃんダルかったんだよねー。数十人いる容疑者を片っ端から俺と求真で尋問してったんだからさー

尋問、と聞いて不穏な図を想像したが、すぐに弦巻がやんわりと否定する。

弦巻藤吾

そんな物騒なもんじゃないよ。ただ俺が『あなたは連続強盗殺人事件の犯人ですか?』って訊いて、求真がそれを嘘かどうか判別するだけ。一人二人だったら簡単だったんだけど、街中に散らばる数十人じゃあ、ちと骨が折れたよねー

平桔平

……マジか

まさかこの悪ノリコンビまでそんな大変な作業に従事していたとは……。


結局この事件では、全員が解決に向けて尽力してくれたのだ。


ほんの数日前に転校してきたばかりの、見ず知らずの一般人のために。




俺はその場に立ち止まって、全員に向けて深く頭を下げた。

平桔平

……ありがとう、お前ら。そして……ごめん。俺、一瞬でもお前らのこと疑った。そのせいで最低なこと言っちまったし……

弦巻が俺の謝罪を見て「桔平ちゃん、何か言ったの?」と巴に耳打ちしていた。


もしや巴は、俺がDクラスの面々を侮辱したことを伝えていないのだろうか。

巴求真

へへへ、本当ですよ全く。あれを聞いた時は、このまま見捨ててもいいかなとすら思いましたしね

巴は相変わらずニット帽の下で涼しい、否、卑しい笑顔だ。

平桔平

じゃあ……どうしてそうしなかったんだ?

あの時、巴から感じた怒りは決して偽物ではなかったと断言できる。


しかし今では、とうの昔に過ぎ去った小事を振り返っているかのようだった。

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75|五日目 真相犯明―しんそうはんめい―

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