弦巻藤吾

この事件のポイントは、ズバリ『情報』にあったんだよ

平桔平

情報?

警察が来て犯人を逮捕し、署で半日以上かけて事情聴取を終えた後、俺達はすっかり暗くなった帰り道を歩いていた。

弦巻藤吾

そ。つまり当事者しか知り得ない情報を知っていた人物こそが、犯人だってこと

平桔平

それがあの男だったってのか? でも警察なら捜査の詳しい情報を持っててもおかしくはねえだろ

弦巻藤吾

桔平ちゃーん、考えてみなよ? 犯人は新聞勧誘を装って住人の不在を確認してたんでしょ? でも言ってしまえば、新聞勧誘なんてそこら中にいるじゃんか。たまたま本業の人が寄った家で事件が連続した可能性だってある。なのにどうして、犯人はその手口を使ってると確信を持っていたんだろう。ましてやあの人は交番にいる地域課の警官。捜査本部に入ってもいないのに、そんな情報を持ってるなんておかしいと思わない?

平桔平

まあ、言われてみれば……

弦巻の論理に、納得の相槌を打った。

弦巻藤吾

それがまず一つ目の疑問点。そこで俺達は裏で結託して、その警官に当たりをつけたってわけ。そんであくのんに協力してもらって、あの人を探ってもらったのさ

平桔平

人性が? いつそんなことしてたんだ?

人性はヘッドホンをつけてブラブラと前を行く。


彼女は興味もなさそうに通り過ぎる街の看板を眺めていた。

弦巻藤吾

桔平ちゃんと一緒に署に行った時さ。あの時、たまたま警官と会ったんでしょ? そしてあくのんが盗難にあった品物について話した

平桔平

そういえばそんなことがあったな。……でも、それが何なんだよ? ただ盗品の名前を言ってっただけじゃねえか

弦巻はちっちっちと指を振った。

弦巻藤吾

そこがポイントなんだよ、桔平ちゃん。いいかい? 被害に遭った物っていうのは三件目までは靴と丸時計と鍋、つまり全部が大した価値もなかったんだよね。“持ち主でさえ盗難に遭ったと気づくことができなかったほどに”。辛(かろ)うじて一件目と二件目の事件については、被害者達がどうにか空き巣に気づくことができたけど、三件目は違う

その説明で合点がいった。

平桔平

そうか。そこからは殺人に発展してるから……

弦巻藤吾

そう。つまり“盗まれた品物の存在に気づく人がいなくなるんだ”。おまけに被害者は全員一人暮らしだから、他に家の物品事情に明るかった人もいない。どうにか警察は家の中から金品が盗まれていることを調べ上げたから、それ以降も連続空き巣事件と繋がりを持たせることができたけど、それでも三件目に盗まれた『鍋』なんて物に関しては、絶対に赤の他人が知る余地はない。
もしいるとしたら、それが盗まれたことを知っている犯人だけ。つまり、あくのんの言葉でそれは被害者の物だとうっかり零した、あのお巡りさんだったってこと

平桔平

…………

人性のキャラには似合わないと思ったが、あのやり取りにはそんな裏があったのか。

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73|五日目 真相犯明―しんそうはんめい―

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