俺の一言が巴の述懐を遮った。


買い物かごを持つ手がわなわなと震えている。




巴はこちらの異変に、はてと首を傾げている。

巴求真

どういうことですか?

平桔平

お前ら、そんな風に他人を思いやってるフリしてるけど……嘘なんだろ?

巴求真

……何を言ってるのか、理解できないんですが

俺は気の昂りを抑えるように声量を絞って、心情を吐露した。

平桔平

お前らなんだろ、一連の事件の犯人は? そうやって考えれば、犯行の手段も動機も全て辻褄が合うんだよ。……おまけに昨日の帰り際にも尾行なんかつけやがって。そうやって人を追いつめて、いたぶって……何が楽しいんだ?

巴求真

尾行?

巴が俺の放った単語の一つに反応したが、俺はかまうことなく、沸き立っていく激情に駆られて声を荒らげた。

平桔平

そもそもおかしいじゃねえか!? どうしてたった数日前に転校してきた赤の他人なんかに手を貸すんだよ!? それもお前らの手口かよ! どうせお前らは偉い奴の子供かなんかで、学校と組んで犯行を全部見逃してもらってんだろ!?

巴求真

……それはまた、言いがかりみたいな推理ですね

温度のない声が届いた。


周囲の人々もこちらを見て何事かと囁き合っている。


四方から突き刺さる視線に目眩がしたが、それでも俺の言葉は止まらなかった。


何も見ないように下を向いて、無機質な光沢を帯びる床に叫び続ける。

平桔平

うるせえ! それを言うならお前の話だってそうだろうが! とにかく俺は……俺は、学校も含めて、お前らのことなんかこれっぽっちも信用しちゃいねえんだ!

そして、全てを言いきった。


この瞬間まで溜め込んでいた全てのことを。




なのに、心には解放感などなく、行き場のない嫌悪感と虚無感が、潰しきれない膿のようにわだかまっている。


顔を上げると、巴と視線がぶつかった。


怒りや、憐憫や、侮蔑がないまぜになった感情を、その眼差しは語っていた。


ここでようやく俺は、取り返しのつかない過ちを犯してしまったことに思い至る。




自分を取り巻く全ての人間が、俺の罪を咎めているように見えた。

巴求真

……平さん。僕は前に言いました。『こんな能力持ってたって、不便でしかない』と

巴は、淡白な語気で語りだした。

巴求真

その理由をまだ教えてませんでしたね。簡単ですよ。どんな嘘でも見抜けるようになると、他人とコミュニケーションが取れなくなるんです。意図的だろうが無意識だろうが、人は会話の中に嘘を織り交ぜる。なぜなら、自分の本心を誰にも知られたくないから。本当の気持ちは内奥に秘めておきたいから。人は自分の理解者を求めると同時に、誰にも理解されたくないという矛盾した心情を抱えている。……でも、そんな思いも僕には関係ない。冗談、建前、見栄、ごまかし。この世のあらゆる嘘を、否が応にも見透かせてしまうんですから

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67|五日目 真相犯明―しんそうはんめい―

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