五日目
真相犯明―しんそうはんめい―
五日目
真相犯明―しんそうはんめい―
そうなの……じゃあ、今日はお休みかしら?
はい。ちょっとごたごたに巻き込まれたせいか、体調が優れなくて……
仕方ないわ。こちらもいきなり仕事を押しつけてしまったし、しばらくゆっくり休みなさい
ありがとうございます
俺は柊先生への連絡を終えると電話を切った。
学校に関わる人間に対し確信を持てなくなった今、俺が取る手段はたった一つ。
菊菱と同じ、籠城である。
脱走や通報は不可能。
しかし他に有効な手立てがあるわけではない。
とりあえずは現状をやり過ごすための一手だ。
消極的ではあるが、数日家に籠れば冷静に次の行動を判断する余裕も出てくるだろう。
とにかく今は、学校やその関係者には近寄りたくなかった。
籠城を決め込むからには、まず数日分の食糧を確保せねばなるまい。
冷蔵庫は壊れているから、常温でも保存が利くものがいい。
俺は玄関の扉を開けて、そっと外の様子を窺う。
誰もいないことを確かめ、しっかり鍵をかけて、周囲に気を配りながら最寄りのスーパーへ向かう。
道中は常に物陰に注意を払っていたので、度々通行人から不審な目を向けられたが、そんなことは気にしてられない。
俺にとっては命に関わる問題なのだから。
スーパーに入り、買い物かごを手にする。
どれほど食糧が買い込めるだろうかと残金を確認するために、財布を開けた時だった。
こんなとこで何してるんですか〜?
真横に、制服姿の巴求真が立っていた。
驚きのあまり、俺は三メートルくらい飛び上がったと思う。
そのまま商品の陳列棚に衝突し、品物がいくつか落下した。
あーあー、いい歳してみっともない
うんざりした調子で床に散った商品を拾うニット帽の男に、俺は震える人差し指を向けた。
おおおおお前、どど、ど、どうしてここに……
? それは僕が先にお尋ねしたんですけどねえ。……お答えすると、ただのサボりです。そして偶然にも僕の住居はこの付近にありまして、暇つぶしにスーパーへ来てみれば、通学時間にもかかわらず、こうして私服の平さんと遭遇したというわけです
必要以上に動揺する俺を怪訝(けげん)な顔で見つめながら、巴は胡散臭さ満載の説明を返す。
……で、どうして平さんは学校に行かずにこんなとこにいるんですか?
う、うるせぇっ! 俺の勝手だろ!
俺は質問を振り切ってレトルト食品のコーナーへ向かう。
だが巴は数歩後ろに張りついて「どうしてですかぁ」「何かあったんですかぁ」と執拗に追及してくる。
きっと詳しく調べればこんな妖怪いるぞ。
振り向いたら死ぬやつ。