先生は今回そういう案が出たから、と言っていたが、もしかしたらここには定期的に普通の生徒を転入させているのかもしれない。
そして彼らは、ここに通う犯罪者予備軍の衝動を満たす供物とされるのだ。
そこから、途方もない憶測が、次から次へと濁流のように押し寄せる。
先生は今回そういう案が出たから、と言っていたが、もしかしたらここには定期的に普通の生徒を転入させているのかもしれない。
そして彼らは、ここに通う犯罪者予備軍の衝動を満たす供物とされるのだ。
そこから、途方もない憶測が、次から次へと濁流のように押し寄せる。
待て待て待てそれは強引な説じゃないかあいつらは事件解決に協力してくれてるでもそれがあいつらのやり口かもしれない標的を言葉巧みに誘導して信頼を得たり恐怖を演出したりでは今俺を待ち伏せていた人物は何者だあれは政府の監視員で獲物が逃げ出したり密告したりしないよう見張っていざとなれば抹殺するでは俺はどうすればいい警察に助けを求めるべきか駄目だ学校が根を張っているかもじゃあ親へ連絡するかそれは論外そうすればあいつらは俺の家族にまで手を出すかもしれないではどうすればいい最早この状況から抜け出す策はないもう誰も信じられないもう誰も信じられないもう誰も信じれない……。
ただ脳内で構築されるだけの、明確な証拠など何一つない被害妄想は、拒絶しようとすればするほど空虚な理屈で補完され、膨張していく。
『あいつらは、信用できない』
今までは実感できなかった、菊菱の台詞が幾度も反芻(はんすう)された。
どうして俺はあいつらを信じたんだ?
どうして俺はあいつらを疑うんだ?
答えの見つからない問いが、代わる代わる目の前に現れ、消えていく。
誰も信じられない……
携帯を持った手もそのままに独りごちた声は、自分でも驚くくらい擦れていた。
でも、
でも──俺は考える。
ここにしか居場所がない、という言葉も嘘だったというのか?
その時あいつらが発した物悲しい沈黙も、全て演技だったというのか?
目の前には、自分以外誰もいない部屋。
でもあいつらが昨日、どこに座ってどんな表情を浮かべていたのかは鮮明に思い出せる。
俺は五人の姿を床の上に投影させながら、部屋の隅で思考に埋没していった。