影の正体に思い至った時、背筋に寒気が走り、歯がカチカチと鳴りだした。


危惧していたことが現実となった。




犯人は確実に俺の息の根を止めるため、再びここへ赴いたのだ。


恐らくさっきまで鳥居笹と八重梅がいたから、室内での待ち伏せは叶わなかったのだろう。


だが今、部屋の中には、自分たった一人しかいない。

襲ってくるならこのタイミングだ。


俺はもう一度全ての部屋を見て回り、外に通じる窓の鍵が施錠されているのを確かめた。


そして原形を失ったキッチンから包丁を一本手に取って、視界の広いリビングの隅に座り込んだ。


どうする? 

もう犯人は部屋の前まで来て、今にも扉をこじ開けて侵入してくるかもしれない。


……マズい展開になったな。


犯人の待ち伏せに気づいた時、警察のもとへ駆け込むべきだった。

だが失策を悔いる暇はない。

まずは助けを呼ばなければ。


しかし携帯を取り出して番号を押そうとしたところで、ふいに、今しがた冗談半分で組み立てていた推理が、やたら現実的な輪郭を帯びて再浮上してきた。

犯罪者予備軍真犯人説。

平桔平

……馬鹿か、俺は

嫌気がさして、頭を力任せに掻きむしる。


まるで愚考を頭皮ごと破棄するような、自傷にも似た行為だった。


それはさっき否定したばっかだろ。


学校が殺人まで容認するわけないし、今の人物の体格はクラスの誰にも当て嵌まらない。

平桔平

……あれ?

棄却(ききゃく)の材料を揃えていた俺の脳は、ここで別の解答を弾き出した。


興奮して血が巡っていた故か、あるいは菊菱の発言が耳に残っていた故か、いずれにせよ俺の思考回路は奇妙に冴えていた。




別の解答とは、巴が語った、学校が生徒を放任する理由についての二つのパターン。


一つは、学校が彼らの罪を大目に見ているから。


もう一つは、学校がいずれ彼らを利用しようとしているから。


だがここでもう一つパターンがある。


それは、彼らは何をしても罪に問われない人種だから。


例えば、あいつらは政府要人の実子で、たまたまあのような異質を備えてしまい、その特性を解放しながら気ままに過ごせる環境を欲した結果が、昏忌高校なのだ。



では俺がここに呼ばれた理由とは?

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63|四日目 犯信犯疑―はんしんはんぎ―

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