──信用?




ピンときたのは、巴求真。

あいつは詐欺師予備軍で、騙しが専門だ。


当然、人を信用させる術も心得ているはず。

すると、ここまでの流れは──全てあいつらの計算?

平桔平

いやいやいやいや……

俺は路上で一人、首を横に振った。

ない。


ないわ。


何一つ物証もないのに、考えを飛躍させすぎ。




人の行動にいちいち悪意を見出していたらキリがない。

それにいくら学校側が生徒を放任しているといっても、連続殺人にまで発展してしまえば、さすがに容赦しないはず。


根拠もなく人を疑うなんて、俺も人間不信になったもんだな。

己の人間性の変化に自嘲(じちょう)しつつ歩いていると、ふと視界に奇妙なものが映った。


場所は住宅街の路地。

時刻は夕暮れを過ぎ、藍色に染まる空の下、休日の行楽からの帰り道を行く人がちらほらと見受けられる。


そんななか、灯ったばかりの街灯の脇に、亡霊のように佇む異質な人影が一つ。

こちらが歩みを進め距離を縮めていくにつれ、徐々に身体の線が薄闇に浮かび上がる。


俺はなるべく正面を向いたまま、目の端で人影の特徴を捉える。


身長は俺より少し上くらい。




体格は普通で男性と見受けられる。

だが人物が特定できない。

なぜならその影は、時期外れの厚いコートを着て、頭をフードですっぽりと覆っているからだ。


はっきりと見たわけではないが、顔の輪郭すら判然としないフードの闇の中で、しかし確かに、その目はこちらをジッと見つめている。

俺は影の横は通らずに、さりげない動きで一つ手前の角を曲がる。


その瞬間、俺は走りだす。

急いで別の角を曲がり、今通った道をそっと覗いた。


フードの人物は、決して速くはない歩調で俺の跡をつけてきていた。


こちらの姿を見失ったせいか、キョロキョロと辺りを見回している。


俺は瞬時に頭を引いて、一度大きく深呼吸した。

──誰だ?

決まりきっている答えを出す前に、俺は全力で自宅まで駆ける。

マンションに到着すると、エレベーターに乗り込む。

ここで弾んでいた息を整えた。


居住階のランプが点灯し、静かにドアが開く。


辺りに注意を払いながら、慎重な足取りで自室の扉の前に立ち、鍵を開けた。


入室すると、忍び足で一つ一つの部屋の押し入れ、ベッドの下、大きめの家具の裏などを念入りにチェックしていく。


誰も潜んでいないことを確認してリビングに入ると、床の上に鳥居笹のものと思しき書き置きが目に入った。


無駄な個人情報が多くて読み辛かったが、要約すると彼女は八重梅と一緒に、ほんの一時間前にここを去ったらしい。


手紙を床の上に置いて座り込むと、冷たい汗がどっと湧き出てきた。




あいつは──誰だ?


決まってる。




あんな不穏な待ち伏せをする人物は唯一人。



連続強盗殺人犯だ。

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62|四日目 犯信犯疑―はんしんはんぎ―

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