警官

そんなわけで彼女はこの辺りじゃマークされてる問題児だから、一緒に行動する時は怒りを抑えてくれるよう、気を払ってくれるとこちらとしてもありがたい

平桔平

学校でも似たようなこと言われましたよ

警官

そうなの? だったら一層頑張らなくちゃね。それじゃ、僕は交代の報告をしなくちゃならないから、この辺で

なかなかお似合いだよ、とどうやら俺達の関係を誤解した一言を添え、若い警官は去っていった。


その優しげな背中に、実はクラス全員分のモルモット役を強制されているんです、なんてブラックな内情は伝えづらい。

その後、受付に盗難届を提出し、人性と並んで出口に向かう。

平桔平

結局何もなかったから良かったけど、お前がついてくる意味あったのかよ? ただ俺が一方的にヒヤヒヤしただけだぞ

人性悪乃

情けねえ野郎だな。別に誰もてめえを取って食おうとしてるわけじゃないんだし、もっと堂々と構えてろよ

平桔平

そっちが悠々としすぎなんだよ

仮にもここは最もお前を敵視する人間達の只中(ただなか)だぞ。


今すぐお縄を頂戴してもなんら不思議ではないというのに、その度胸の源泉はどこにある。

平桔平

人性はこの後どうする? どっかのゲーセンでも行くのか?

人性悪乃

しばらくはうろつけねえしなあ……家帰るわ

それが一番いい。


こいつを外に放り出しておいて碌なことはない。

人性悪乃

お前はまたあの引きこもりのとこだろ?

平桔平

……そうだった

よく考えると、毎日隣町まで訪問に行くというのはそれなりに重労働だな。


一刻も早く菊菱が登校してくれるよう気張らねえと。

署の玄関口まで歩いていき、これでようやく警察署と大量殺人者予備軍という、火に油を注ぐような危険コンボから脱出できると安堵した瞬間、入れ違いに入ってきた中年の警官が、こちらを軽蔑するようにほんの小さくぼやいた。

警官

人性か。……ったく、いつまでも洋物かぶれみてえな格好しやがって

平桔平

…………

──ヤバい。

人性には音楽で聞こえていないことを祈りながら、俺はなるたけ早足で出ていこうとした。


……が、彼女はそこに立ち止まったまま、ゆっくりとヘッドホンを外す。

人性悪乃

──ああん?

終わった……。

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57|四日目 犯信犯疑―はんしんはんぎ―

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