なかなかお似合いだよ、とどうやら俺達の関係を誤解した一言を添え、若い警官は去っていった。
その優しげな背中に、実はクラス全員分のモルモット役を強制されているんです、なんてブラックな内情は伝えづらい。
その後、受付に盗難届を提出し、人性と並んで出口に向かう。
そんなわけで彼女はこの辺りじゃマークされてる問題児だから、一緒に行動する時は怒りを抑えてくれるよう、気を払ってくれるとこちらとしてもありがたい
学校でも似たようなこと言われましたよ
そうなの? だったら一層頑張らなくちゃね。それじゃ、僕は交代の報告をしなくちゃならないから、この辺で
なかなかお似合いだよ、とどうやら俺達の関係を誤解した一言を添え、若い警官は去っていった。
その優しげな背中に、実はクラス全員分のモルモット役を強制されているんです、なんてブラックな内情は伝えづらい。
その後、受付に盗難届を提出し、人性と並んで出口に向かう。
結局何もなかったから良かったけど、お前がついてくる意味あったのかよ? ただ俺が一方的にヒヤヒヤしただけだぞ
情けねえ野郎だな。別に誰もてめえを取って食おうとしてるわけじゃないんだし、もっと堂々と構えてろよ
そっちが悠々としすぎなんだよ
仮にもここは最もお前を敵視する人間達の只中(ただなか)だぞ。
今すぐお縄を頂戴してもなんら不思議ではないというのに、その度胸の源泉はどこにある。
人性はこの後どうする? どっかのゲーセンでも行くのか?
しばらくはうろつけねえしなあ……家帰るわ
それが一番いい。
こいつを外に放り出しておいて碌なことはない。
お前はまたあの引きこもりのとこだろ?
……そうだった
よく考えると、毎日隣町まで訪問に行くというのはそれなりに重労働だな。
一刻も早く菊菱が登校してくれるよう気張らねえと。
署の玄関口まで歩いていき、これでようやく警察署と大量殺人者予備軍という、火に油を注ぐような危険コンボから脱出できると安堵した瞬間、入れ違いに入ってきた中年の警官が、こちらを軽蔑するようにほんの小さくぼやいた。
人性か。……ったく、いつまでも洋物かぶれみてえな格好しやがって
…………
──ヤバい。
人性には音楽で聞こえていないことを祈りながら、俺はなるたけ早足で出ていこうとした。
……が、彼女はそこに立ち止まったまま、ゆっくりとヘッドホンを外す。
──ああん?
終わった……。