それから数時間後。


俺は強引に同行した人性と共に、警察署のロビーの長椅子に腰掛けていた。


隣りでシャカシャカとヘッドホンから音を漏らしながら、柄悪く脚を組んで座する彼女とは対照的に、こちらは身を小さくして神経をすり減らす思いで盗難届の必要事項を記入していた。

まずこいつは容姿だけでも相当に目立つ。

輝くような金髪にスラリとした手足、それに個々のパーツの均整がとれた顔。

傍から見ればモデルと間違えられてもおかしくない。

周囲にいる人々はこちらを何度もチラ見しては、ぼそぼそとどこぞの芸能人ではないかと囁き合っている。


加えて複数回にわたりここに厄介になり、ほぼ常連と化しているせいか、通りがかる警官もいちいち怪訝(けげん)な視線をこちらにぶつけてくる。


大方こいつがまた何かやらかしたのかと呆れているのか、それともこれから引き起こすのを警戒しているかのどちらかだろう。

とにかく、そんな奇抜な人物と一緒に衆目に晒されるのは居心地が悪い。


ただでさえ俺は目立つことが苦手なのだ。


即刻席を立って、離れた場所で無関係な一般人Aとして振る舞いたかったが、彼女は無駄に距離を詰めて座っているので確実にロビー内の人々からは連れと思われてしまっているだろう。

人性悪乃

思ったんだけどさー、他の奴らが盗まれた品あんだろ? もし犯人が警察に捕まった時に、取り返した物全部『それ自分のです』って主張すりゃ普通に貰えんじゃね?

平桔平

……どんだけ卑しい精神持ち合わせてんだよ

ヘッドホンの音量も下げずに人性が提案したが、俺はペンを動かす手を止めてしかめ面を返した。


出し抜けに何を言いだすかと思えば、また随分と貧乏臭いアイデアだった。

どうも今までの人性のイメージとも合わない案だけに、今イチその真意を計りかねる。


しかし彼女は恥じらいもない様子だ。

人性悪乃

いいじゃねえか別に。どうせ盗られても気づかないような代物なんだろ? だったら代わりにお前のにしても支障はねえじゃんか

平桔平

俺だって最低限の良識は弁えてんだ。お前はこう……節度っつーか、そういう明け透けにモノ言うところとかどうにかできねえのかよ?

俺の批判を彼女はせせら笑う。

人性悪乃

は、どうにもする気もねーし。お前みたいに他人の欠点見つけて直したがろうとする奴は、一つ直してやったら次はあれもこれもって偉そうに指図してくんだよ。それでこっちが迷惑そうにすると、『お前のためを思って』なんて薄っぺらい台詞吐くもんだから、マジでウゼエわ

そこまで言ったつもりはないのだが、俺の言葉は彼女にとってうんざりさせられる定型文だったようで、明らかに特定の人物に対するものと思われる不満をぶちまけられた。

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53|四日目 犯信犯疑―はんしんはんぎ―

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