帰宅してリビングに入ると、猛烈な既視感(デジャヴュ)に襲われた。


あちこちの壁に穴が開き、窓やテレビの液晶は割られ、家具の類は例外なく歪な形にひしゃげているか、奇麗に切断されているかのどちらかだった。

まるでかつての学校玄関口やゲームセンターの再現……もしくはそれ以上の有様だ。

平桔平

これは、一体……

そう独りごちたが、元凶は明白である。


部屋の中央にあの切り裂き魔と破壊神の二人が、決して平穏とは形容しがたい雰囲気で対峙しているからだ。

八重梅規理

あら、お帰りなさい。今すぐこの人型のゴミをKILL(切り)分けてゴミ袋に詰め込んであげるから待ってて

人性悪乃

ユー、バスタード! こっちこそてめえを原形留めねえくらいに磨り潰してやんよ!

八重梅と人性は俺の帰宅に気づくと、それぞれB級格ゲーの決まり文句のような抱負を口にした。


詳細は不明だが、ある意味では想像通りの結末(オチ)ではある。

のしかかる絶望感に負けないよう必死に気持ちを強く保とうとしていると、部屋の隅で縮こまっていた三人と目が合った。

弦巻藤吾

お帰り、桔平ちゃん。俺は止めたんだぜ?

巴求真

僕も油断して一発貰っちゃいましたよ。……鼻血が止まらないなぁ

鳥居笹千流

だ、大丈夫だよ、桔平君……。後片づけは、私も手伝うから

彼らは床に身を伏せながら思い思いの台詞を言うが、誰一人として彼女達を止める勇気を振り絞ってくれる猛者はいないようだ。


まさか鳥居笹まで……信じてたのに。


そんな彼らを責める暇もなく、対峙した両者が動きを見せた。

人性悪乃

うおらぁぁぁぁぁぁぁ!!

金髪ヤンキー娘が放つ拳や足蹴りの乱打は壁、床、天井、家具、電化製品の別を問わず貫通し、破砕していく。

八重梅規理

KILL……

対する黒髪大和撫子も、その攻撃をかい潜(くぐ)りつつ、完全に竹刀袋を脱ぎ捨てた真剣を手に、間隙を縫って斬撃を繰り出している。

勿論、外した先の物体は真っ二つだ。




息つく間もない人外の攻防の最中も、確実に部屋はその原形を失っていく。

部屋の主である俺は無力感を胸に抱きながら、いつ訪れるかも分からない決着をひたすらに待つことしかできなかった。

平桔平

頼むから出ていってくれぇぇぇぇぇ……!

腹の底から絞り出した希求の叫びも、ところかまわず開けられた穴の中に虚しく吸い込まれていった。

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49|三日目 御凶力申出―ごきょうりょくのもうしで―

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