しかしそれは、あまりに理不尽な結論ではないだろうか。




いつの間にか静まり返っていた室内を見渡すと、他の四人もどこかやるせない表情を浮かべていた。

俺は中でも、最もこの意見に反発したいであろう人物を見やる。

平桔平

八重梅、お前もそう思うのか?

今までの言動を鑑みても、この委員長はクラスで一番真摯に己の異常性と向き合い、更生に努めている生徒だ。


その努力が水泡に帰す恐れのあるこの説を、彼女がよしとするはずがない。

けれどそんな八重梅ですら、明確な異を唱えはしなかった。

八重梅規理

私は……巴君の発想を全面的に肯定するわけではないけど、一概に否定もできないと考えているわ。確かに時々、学校側は私達に対し、教育施設としては信じがたい対応をすることもあった。だから今回の件で、学校が平君を見殺しにする予測も立てられたのよ

俯いてかかる前髪のせいで、その表情は窺えない。

平桔平

……じゃあ、お前はどうしてそんななかでクソ真面目に頑張っていられるんだよ?

八重梅規理

それは……それでも、私には……

そこから先の言葉を彼女は紡ぐことができずに、ただきゅっと拳を握り締めた。




巴が語った話は、確たる証拠もない単なる深読みとも取れるが、少なくともこいつらが昏忌高校に対し、完全な信用を置けないでいることは理解できた。

だからこそ俺は、もう分かりきったことを改めて問うてみる。

平桔平

八重梅だけじゃなくて、お前ら全員さ、自分達をそういう風に扱っているかもしれないところにいて……辛くないのか?

巴の瞳が帽子の影の中で鈍い光を放った。


そして先ほど、八重梅が口にするはずだったであろう言葉の先を引き継いだ。

巴求真

それでも僕達みたいな犯罪者予備軍には、ここにしか居場所がないんですよ

平桔平

…………

一瞬、目の前の五人が今までの人生で受けてきた仕打ちが垣間見えたような気がして、俺は何も言えなくなった。




Dクラスの面々は、学校はいずれ自分達を搾取(さくしゅ)する気かもしれないと心の奥底で予感しながら、それでも規律に従って過ごしているのだ。

なぜなら彼らには、そうする他に生きる術がないから。




ここ以外の場所では、彼らは異端者として迫害されてしまうから。

海の底のような暗い沈黙がしばし部屋を支配した後、弦巻が「ぶはあ」と息苦しさから解放されたように大きく息を吐き出した。

弦巻藤吾

思いがけず辛気くさい方向に話が逸れちゃったけど、とにかく桔平ちゃんは自分の身の安全のため、独自に捜査をしなくちゃならないんだよねーん!

鳥居笹千流

そ、そうだよ。まずは桔平君のことを考えなくちゃ! ね、規理ちゃん!

八重梅規理

……え、ええ。そうね。少し無駄話をしてしまったけど、とにかく同じクラスの人を見殺しにするのは、委員長として寝覚めが悪いもの

弦巻と鳥居笹は沈んだ雰囲気を和らげるためか、必要以上に軽いテンションでこれからの動きをまとめる。


それにつられて場の沈んだ空気も緩やかにほぐれていった。


俺はその心遣いをありがたいと思った。

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43|三日目 御凶力申出―ごきょうりょくのもうしで―

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