八重梅規理

冗談はさておき……恐らく平君は、まだ事態の深刻さを理解できていないのよ

平桔平

深刻さ? 確かに空き巣に入られたのは痛手だし、それが原因で金策を練るハメにはなっちまったけど

八重梅はやっぱり、と言わんばかりに首を小さく横に振った。

八重梅規理

ほんと、平和ボケしてるわね。……いい? さっきも推理したけど、犯人は『強盗殺人』に拘泥(こうでい)していると考えられる。でも今回は空き巣しか行われていない。つまりまだ平君という住人は生存している。
分かる? もし犯人が盗難だけで満足していないとしたら、もう一度ここへ来て、今度こそ住人を殺害しようと企んでいるかもしれないのよ

怪談のような話に一瞬凍りついたが、俺はどうにか気持ちを前向きに反論する。

平桔平

そ、そんな……ビビらせんなよ。あくまで『もしも』の話だろ? それにそういう危険が迫ってるんだったら、警察に連絡を入れて護衛をつけてもらうとかすれば

八重梅規理

仮の話ではあっても、可能性は十分にある。それに護衛をつけると言ったけど、一連の事件と繋がりがあるかもしれないとはいえ、たった一人の空き巣被害者に警察はそこまでかまっていられないわ。巡回を増やすとかがせいぜいじゃないかしら

平桔平

じゃあ、学校側に助けを求めるってのは? 昏忌高校は政府が運営してるんだろ? だったら強盗殺人犯の一人や二人、余裕で捕まえられるんじゃないか?

縋るような口調で発した俺の案に対し、八重梅が微かに目を細め、淡々と語る。

八重梅規理

……あくまで私見だけど、学校側はこの件には関与しないと思う。なぜならば学校にとって平桔平という生徒は、少々奇妙な点はあるけど、あくまで平凡な一般人。つまり私達と違って代理のきく存在なのよ。もし平君が犯人の凶手に倒れても、また別の誰かが同じ手続きで連れてこられるだけでしょうね

平桔平

……マジで?

自分が消耗品であるという残酷な予測に愕然としていると、巴が「へへへ」と笑い声を上げる。

巴求真

全体の内で個は蔑ろにされるものですよ。恐らく僕達だって似たような立場です。もし収束の見込みのない不都合でも発生しようものなら、『上の人達』は僕達も含めた全てを闇に葬り去るでしょうね

巴は自分達のことを話しているはずなのに、どこか他人事のような言い草だった。

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41|三日目 御凶力申出―ごきょうりょくのもうしで―

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