人斬りと大量殺人者の予備軍を放って弦巻とゲーセンから退散した後、一人でマンションに到着すると、昨日以上の疲労がどっと押し寄せる。

謎の引きこもりの家で斬り殺されかけるわ、その子の面倒を見るハメになるわ、ゲーセンでヤンキー女が子供達を泣かしてるわ、委員長がそいつと揉めてゲーム始めるわ、珍事件がてんこ盛りの放課後だった。


それにあの後、また弦巻にスられてしまった。
その手口も驚くなかれ、ICカードにチャージした二千円だけを盗み出すという神技。

改札で残高がゼロになっていた時は、怒りを通り越して感動した。

やっぱりあいつの天職手品師とかだろ。

エレベーターで上階に上がると、そこにも悩みの種が一人。

鳥居笹千流

あ、こんなところで奇遇だね。桔平君

平桔平

人の家の前で奇遇もクソもねえだろ

しかも「こんなところ」て。

鳥居笹はさも道端で偶然出くわしたかのように、ちょいと片手を上げる。

その反対の手に持つ食材の詰まった袋は彼女の家用だと信じたい。

鳥居笹千流

今日は桔平君の好きなもつ鍋にしようと思って

平桔平

やっぱり俺用か……

学校での発言は冗談ではなかったようだ。


あとどうして俺の好物なんて知ってんのかな?
それに「今日は」ってことはこれからもあるってこと? 

よく考えたら怖い話するの止めてくれる?

平桔平

……でも家に勝手に入ってない分、昨日よりはマシか

鳥居笹千流

うん。私自分に負けないように頑張ったんだよ。桔平君の部屋の扉にへばりつきながら耐えたんだよ

平桔平

それはぶっちぎりでアウトだ

不審者丸出しの彼女に近隣住民もビビったろう。

恐怖の貼りつき女なんて都市伝説が生まれないことを祈る。

平桔平

でもどうせ来たんなら少しくらい上がってけよ。夕飯作りなら俺も手伝うから

これは本心から出た言葉だった。

女の子をこのまま一人で追い返すのは多少の罪悪感がないでもないし、わざわざ買ってくれた食材を無駄にしてしまうのも惜しい。

この際、彼女の絶品手料理を胃袋に収めておいても罰(ばち)は当たらないだろう。


招かれるのは予想外だったのか、鳥居笹は頬に手を当て赤面した。

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31|二日目 罪難多発―さいなんたはつ―

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