ゲーセンに一歩足を踏み入れる。

すると耳を塞ぎたくなるような騒音の中に、

ぎゃははははは! ざまあみろ、このクソガキ共!

どこかで耳にしたような声が、一際大きく響き渡った。

平桔平

あれ? 今の声って

八重梅規理

……多分、気のせいよ

弦巻の懸念を、八重梅が否定するように首を振った。


一応確認のため、声の発生源であると思しき場所に向かうと、そこには娯楽施設からはかけ離れた景色が視界いっぱいに広がっている。


そこはトレーディングカードを用いて遊ぶタイプのアーケードゲームが並ぶ一画。


だがそこには子供達が友達同士でカードを自慢し合ったり、勝負に熱中したりする光景はない。

彼らはただ地面に崩れ落ちて悲しみに嗚咽(おえつ)を漏らしていたり、絶望のあまり真っ白な抜け殻と化していたりと、まさに死屍累々たる有様だった。

そして、その中央で腕を組んだまま帝王然と佇む人物が一人。

人性悪乃

あ~、やっぱゴミを散らすのは快感だなっと

平桔平

…………

人性悪乃だった。

人性悪乃

あ? 弦巻に斬り子にクソ平じゃねえか。一体こんなとこで何してんだよ?

運悪く、彼女が俺達の存在に気づいてしまう。

本当はこのまま他人のフリで通したかった。

八重梅規理

何してんだはこっちの台詞よ……

弦巻藤吾

あ、あくのん。まさかここにいる子供達全員……

人性悪乃

ははは、見ての通りだ! このガキ共が生意気だったから、格の違いを見せつけてやったんだよ!

平桔平

格って……

金髪の女子高生は呵々大笑(かかたいしょう)するが、俺達は苦笑すらできない。

そんななか、子供達のリーダーと思しき少年が、涙を堪(こら)えながらその暴虐ぶりを訴えた。

ち、ちくしょう。こいつ、俺達の持ってるカード全部奪いやがった!

対する人性は悪びれもせずに、

人性悪乃

人聞きの悪い言い方すんじゃねえよ。互いに合意したうえでの勝負だろうが

だからって金にもの言わせて何百枚もカード使うなんてズリーよ!

人性悪乃

ほざけ。あたしは誰が相手だろうが老若男女分け隔てなく全力を尽くす。それとも手加減してほしかったのか? それで負けてたらお前らそれこそ再起不能だったぞ

う、うわーん! この人でなしー! ていうか大人げなしー!

安い口喧嘩でも完膚(かんぷ)なきまでに叩きのめされ、子供達は蜘蛛の子を散らすように逃げていった。

ただ一人、逃げ遅れたと思しき子供がゲーム機の陰からこっそりとこちらを見つめている。


ごめんね……この人、俺達の同級生なんだ。

人性悪乃

はっはっはっは! いつの時代も勝った側が正義なんだよ、アスホール!

高らかに中指を突き立てながら英語スラングを敗残兵の背中に浴びせる彼女は、学校にいた時とは違って頗(すこぶ)る機嫌が良いようだ。


ならばご機嫌なままにさせておこうと俺達は無言のうちに同意して、こっそりと踵を返す。

人性悪乃

あれ、お前ら帰んの? 少しぐらい遊んできゃいいじゃん

マズい。
危ない人に声かけられた。

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28|二日目 罪難多発―さいなんたはつ―

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