そのままバァンと派手に机をぶっ叩く。
鳥居笹は
そのままバァンと派手に机をぶっ叩く。
鳥居笹は
きゃ
と悲鳴を上げた。
ど、どうしたの桔平君? もしかしてうどん派だった?
違ぇよ! どうしてお前が当たり前みたいにここに居んだ!? あまりにも自然すぎてそのままスルーしかけたじゃねえか!
そもそもどうやって家に入った?
ここは施設が最新でも警備がザルなのか?
すると鳥居笹は観念したように俯いた。
……ごめんなさい。私、好きな人ができるとついつい深追いしちゃうの
これがついついのレベルかよ……
俺は室内の様子を見渡しながら、ようやく鳥居笹千流という女の危険性を理解した。
こいつの特性は所謂(いわゆる)、ストーカー体質なんだ。
……あーあ、唯一まともだと思ってた奴もこの有様か。
帰り際の妄想も台なし。
やっぱここは異常者しかいねえ。
巴め、なにが「優しくしてやれ」だ。
……けど待てよ。
少しだけ考えてみよう。
鳥居笹はルックスも上々。
それに俺のことをはっきりと「好きな人」と宣言した。
無断で家に入られたとはいっても、おかげで荷物整理の手間が省けたし、この蕎麦から察せられるように料理の腕も一人前だろう。
だったら、このまま居座られても許せそうな……いや、やっぱり結構キツくないか?
本人の承諾なしにあれこれやられたんだぞ?
それに家の場所とか、誰にも言ってないのにどうやって嗅ぎつけた?
そういった点を踏まえると……この鳥居笹って女怖くね?
うん、そうだ。
こいつやっぱ超怖い。
以上、審判団の判定は、ギリギリアウト!
それ食ったら出てけ。そしてもう二度と無許可で家に入るな
えっ……
ごく当たり前の要求をしたつもりなのだが、鳥居笹はまるで死刑宣告を受けた罪人のように顔を青ざめさせた。
なんで信じられないみたいな顔してんだよ。
お前はすでに法を犯してるんだぞ。
そ、そんなぁ……。和室でいいから住んじゃ駄目?
駄目に決まってんだろ
住む気だったのか。
それに和室ならOKって、どんな基準だよ。
家賃も払うから、月何十万でも。もし桔平君が他の女の子連れてきても私いないフリするから。そしてその子と結婚したとしても、ずっと桔平君の邪魔にはならないから
重いよ!
不倫中のOLを彷彿(ほうふつ)とさせる歪んだ愛情。
もうストーカーの領域ではないだろ。
……別に来るなとは言ってねえ。他人の家にはキチンと本人の許可取って入れってことだよ
常識的な意見を用いた説得に、ようやく鳥居笹は折れてくれたようで、
……分かった。やっぱり私、勝手だったよね。ご近所さんへ挨拶回りしたりとか、新聞勧誘を断ったりしたのも、迷惑だったよね
すでにそこまで……
完全に新婚の嫁さんじゃん。
こいつ一体いつからいるんだ?
帰宅も俺とそう変わらない時間帯だったのに。
交渉を終え食事を平らげた俺は、鳥居笹を駅まで送り届け、そこでようやく本当に一人になれた。
一日目を終え、俺は最も深刻な問題に気がついた。
……ボケの量が多すぎる。