そのままバァンと派手に机をぶっ叩く。
鳥居笹は

鳥居笹千流

きゃ

と悲鳴を上げた。

鳥居笹千流

ど、どうしたの桔平君? もしかしてうどん派だった?

平桔平

違ぇよ! どうしてお前が当たり前みたいにここに居んだ!? あまりにも自然すぎてそのままスルーしかけたじゃねえか!

そもそもどうやって家に入った? 
ここは施設が最新でも警備がザルなのか?


すると鳥居笹は観念したように俯いた。

鳥居笹千流

……ごめんなさい。私、好きな人ができるとついつい深追いしちゃうの

平桔平

これがついついのレベルかよ……

俺は室内の様子を見渡しながら、ようやく鳥居笹千流という女の危険性を理解した。

こいつの特性は所謂(いわゆる)、ストーカー体質なんだ。


……あーあ、唯一まともだと思ってた奴もこの有様か。

帰り際の妄想も台なし。
やっぱここは異常者しかいねえ。

巴め、なにが「優しくしてやれ」だ。


……けど待てよ。
少しだけ考えてみよう。


鳥居笹はルックスも上々。
それに俺のことをはっきりと「好きな人」と宣言した。

無断で家に入られたとはいっても、おかげで荷物整理の手間が省けたし、この蕎麦から察せられるように料理の腕も一人前だろう。

だったら、このまま居座られても許せそうな……いや、やっぱり結構キツくないか? 

本人の承諾なしにあれこれやられたんだぞ? 
それに家の場所とか、誰にも言ってないのにどうやって嗅ぎつけた?

そういった点を踏まえると……この鳥居笹って女怖くね? 

うん、そうだ。
こいつやっぱ超怖い。


以上、審判団の判定は、ギリギリアウト!

平桔平

それ食ったら出てけ。そしてもう二度と無許可で家に入るな

鳥居笹千流

えっ……

ごく当たり前の要求をしたつもりなのだが、鳥居笹はまるで死刑宣告を受けた罪人のように顔を青ざめさせた。

なんで信じられないみたいな顔してんだよ。
お前はすでに法を犯してるんだぞ。

鳥居笹千流

そ、そんなぁ……。和室でいいから住んじゃ駄目?

平桔平

駄目に決まってんだろ

住む気だったのか。
それに和室ならOKって、どんな基準だよ。

鳥居笹千流

家賃も払うから、月何十万でも。もし桔平君が他の女の子連れてきても私いないフリするから。そしてその子と結婚したとしても、ずっと桔平君の邪魔にはならないから

平桔平

重いよ!

不倫中のOLを彷彿(ほうふつ)とさせる歪んだ愛情。
もうストーカーの領域ではないだろ。

平桔平

……別に来るなとは言ってねえ。他人の家にはキチンと本人の許可取って入れってことだよ

常識的な意見を用いた説得に、ようやく鳥居笹は折れてくれたようで、

鳥居笹千流

……分かった。やっぱり私、勝手だったよね。ご近所さんへ挨拶回りしたりとか、新聞勧誘を断ったりしたのも、迷惑だったよね

平桔平

すでにそこまで……

完全に新婚の嫁さんじゃん。

こいつ一体いつからいるんだ? 
帰宅も俺とそう変わらない時間帯だったのに。

交渉を終え食事を平らげた俺は、鳥居笹を駅まで送り届け、そこでようやく本当に一人になれた。

一日目を終え、俺は最も深刻な問題に気がついた。

……ボケの量が多すぎる。

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17|一日目 犯罪学級―はんざいがっきゅう―

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