前触れもなく発生した暴風雨からどうにか逃げきった後、電車に乗って二つ目の駅、そこから徒歩一〇分の場所にあるマンションへ向け、俺はとぼとぼと住宅街を歩いていた。


財布を盗まれ、嘘に翻弄され、二度も命の危機に晒され、おまけにこれがたった一日の出来事という現実。

ならば今後はいかなる災禍に見舞われるのだろうかと想像すると、ますます気分も落ち込んでいった。


だが、騒ぎでくしゃくしゃになった地図片手に、ようやく目的地に到着すると、

平桔平

……おお

一瞬、これまでの不幸が全て頭の片隅に追いやられてしまうほどの感動に包まれた。


目の前に現れたのは、悠然と屹立(きつりつ)する超高級マンション。

校舎同様眩いばかりの新築物件は、地上数十階はありそうな高層も手伝って、周囲の住宅街と比べても一際スタイリッシュな風格を漂わせている。

……これって年収うん千万とかの奴が住むとこじゃね?

見渡せば近くにはスーパーやコンビニ、緑溢れる広々とした公園もあり雰囲気も良い。

玄関(エントランス)はオートロック。
俺の部屋がある階は十七階。
間取りも予め確認済みだが、たかが一高校生にちとサービスしすぎじゃないかと首を傾げたくもなる。

だがあんな異端児軍団の中に放り込まれるのならそれも当然か、と一人納得し、エレベーターに乗り込む。

恐らく俺にとって、ここの存在だけが昏忌高校に来た唯一のメリットであり、安らぎの場となるのだろう。

けれど、ここで油断は禁物だ。

こういう場合に限って、以前渡された部屋の情報は手違いで実は手狭なワンルームでしたとか、数人でシェアしろだとかというオチがつきものだ。
同居相手がティーン雑誌のモデルや女優の卵のような超絶美少女だったら大歓迎だが、現実はそう甘くない。

ここは気を引き締め、どんな現状も受け入れる覚悟を決めておかねば。

エレベーターを降りて、新居の玄関前に立ち、扉の穴に鍵を差し込む。

解錠の音を確認してノブを回すと、鉄の扉はスムーズに開いていった。

平桔平

……うおお!

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15|一日目 犯罪学級―はんざいがっきゅう―

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