俺は合点がいったとばかりに手をポンと叩いた。
しかし、それは結局、こういうことではないだろうか。
ああ、なるほど
俺は合点がいったとばかりに手をポンと叩いた。
しかし、それは結局、こういうことではないだろうか。
つまり俺は、体(てい)のいいモルモットってことですか? あいつらが『普通』に慣れるための
ええ
女教師はモルモットという非人道的な譬えをあっさりと認めた。
残念ながら、辛抱強く話を聞いていた俺も、さすがに堪忍袋の緒が切れた。
冗談じゃないですよ! そのために俺はわざわざ転校させられたんですか!? 本人の許可も一切なく!
その訴えに、先生は「てへっ」と言わんばかりにあざとく舌を出す。
だってここが犯罪者予備軍の巣窟ですと言ったら誰も来ないでしょうし……それにこのアイデアが職員会議で出た時は『ヤバい』だの『そいつ詰んだ』だの教員一同が大絶賛だったわ
そいつら絶対語尾に(笑)入ってんだろ!?
教師達の会話レベル! ネットの書き込みじゃねえんだから。
とにかく、そんな勝手な理屈で命の危険に晒されるなんてまっぴらごめんですよ!
まあまあ、そう怒らないで。こちらだってあなたの最低限の命の保障は………………するから
その間は何だよ!? そこは完璧な保障なきゃ駄目だろうが!
人の命を何だと思ってるんだ、日本政府!
顔を紅潮させ激昂する俺に対して、柊先生はこほんと咳き込むと、無理矢理会話を締めに入った。
それじゃ、理解してもらったところで、お悩み相談は終了。こっちもこっちで新任の先生が行方不明になって大変なの。一応クラスメイトの簡単なプロフィールは渡しておくから、せいぜい用心して高校生活をエンジョイしてね。あと今の話は口外厳禁よ。この計画の存在が露呈してしまったら、全てが台なしだもの。それにここから逃げ出そうなんて無謀も控えるように。この学校に転入した時から、あなたには四六時中、政府が監視の目を光らせてるのよ。それじゃ
ええ!? それってどういう……
さりげなく重大な情報を漏らしつつ、先生は詳細を問い質そうとする俺を振り切る形で、すたこらと逃げるように職員室を出ていってしまった。
去り際にしっかりとデータ入りのファイルとやらも押しつけられている。
……はあ
ああも強引に捲し立てられては返す言葉も見当たらない。
職員室に取り残された俺は、ファイル片手に重い、重い溜息を吐いた。
──犯罪者予備軍が集まった学校。
──そして俺のクラスの連中はその中でも選り抜きの精鋭達。
──加えて、政府の力とやらでここからの逃亡も不可能。
……正直三日ともつ自信がない。
奨学金も含めた、過剰な待遇の良さも頷ける。
俺はこれからの二年間を、怪物に囲まれながら過ごしていかなければならないのだから、命の値段としては安いくらいだ。
そもそも通っていた学校から強制的に転校させるやり口からして横暴極まりない。
巨大な権力とは、行使される側にしたら理不尽以外の何物でもないと痛感させられた。
やるせない気分を抱え廊下に出ると、そこに二人の見知った男女がいた。