かなり飛び抜けた方針で最後の一言にも身震いしたが、話をまとめるとこの学校の理念はこんな感じらしい。

──ここ昏忌高校は、日本中から犯罪者の素質を持つ人材を集め、その特性を上手い具合に修正、発展させていく政府の施設であり、そしてあくまでそれは高校生活という営みの中で行われる。


よし。
受け入れるかどうかは別として、そこまでは把握できたぞ。




だが問題はそこからだ。

平桔平

じゃあ、どうしてそんな学校に、俺が転校させられることになったんですか? それもその中で最も危険な連中が集められた教室に

もしかすると……俺にも隠された犯罪的特性とやらがあるのだろうか。

こちらのそんな懸念を読み取ったのか、それをかき消すように先生は述べる。

柊瑞穂

それはね、平君がごく普通の高校生だったからよ

平桔平

……ごく普通の?

柊瑞穂

ええ、ごくごく普通。あなたには特殊な犯罪的特性はないと私達は判断した。だからそういう意味では安心していいわ

平桔平

はあ、ありがとうございます

不安を一つ払拭できたのは喜ばしいが、それならここに来させられる理由はないだろう。


疑問が深まるなか、先生が淡々と話を続けていく。

柊瑞穂

以前あなたが過ごしていた学校での成績や授業態度、人間関係についてこちらで調査させてもらったわ。その結果、あなたは“普通すぎるくらいに普通”だということが判明したの

平桔平

普通すぎる、ですか

なんだか馬鹿にされているようにも感じたが、柊先生は真剣そのものだ。

柊瑞穂

テストの成績は平均点からプラスマイナス五点以内。運動は得意でも不得意でもなく、人間関係においてはほぼ全員があなたについて『普通に良い人』と答え、知人はそれなりにいたけど深い付き合いの友人は一人もいない。そんな少々異常な結果が判明したの

俺は自分でも把握していなかった自らの希薄な人間関係に絶句した。

柊瑞穂

ここまで平凡な人物には今まで出会ったことがないわ。もしかしてこの結果自体あなたが何らかの意図を持っていたりしたの? だとしたらあなたスパイの才能があるわよ

平桔平

…………

これほどの事態になるとは予想もしていなかったが、実を言えば、心当たりがないわけでもなかった。

平桔平

モットーっていうか心がけみたいなもんなんすけど……俺、あんまり目立ったりしたくないんですよね

柊瑞穂

……へえ

先生が興味を引かれたように、レンズの向こうの目を細める。

平桔平

別に勉強とかも手を抜いてたってわけじゃないんすけど……あんまりできすぎたりできなさすぎたりすると変に注目されるじゃないですか。なんか俺、そういうのが嫌だなって思ってて、それが影響したのかもしれません

俺の言い訳めいた独白を聞くと、柊先生は

柊瑞穂

ふむ

と顎に指を添えた。

柊瑞穂

なるほど。『没個性』ね。それもちょっと不気味なまでの

平桔平

……不気味ってのは言いすぎじゃないすか? それに友達がいないってのも今時珍しくはないでしょ

柊瑞穂

でも狙ったのでなければ、特に成績関連では全員の協力でも仰がない限りはこのような結果にはならないわ。……ま、本音を言うとそこはさして重要ではないの。大事なのはつまり、“あなたは世間の一般人の理想的なモデルである”ということよ

平桔平

はあ……

未だによく分からない。
それがなぜここに招かれる理由になるというのか?

柊瑞穂

つまりあなたは、この学校の生徒──その中でも群を抜いた問題児揃いのDクラスの生徒達が一般社会に不自由なく溶け込めるよう、まずは普通の生徒と一緒に学生生活を過ごさせてみようという斬新かつ画期的な教育計画(プラン)に基づき、ここに招待されたのよ

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9|一日目 犯罪学級―はんざいがっきゅう―

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