平桔平

犯罪者……予備軍?

俺はその非日常的な単語を無意識のうちに復唱していた。

柊瑞穂

そしてあなたが入れられたあのDクラス、通称Danger(危険)クラスは、ここでもとりわけ犯罪的特性が濃厚な人間が集められた教室よ

平桔平

はあ

こともなげに告げられた内容に、俺の凡庸な思考はひたすらに置いてけぼりを食らっているが、簡潔にまとめるとこういうことになる。

平桔平

つまり、ここの生徒は全員が未来の犯罪者候補ってことすか?

柊瑞穂

そうね

彼女はあっさりと首肯した。

平桔平

いやいや、『そうね』って……。そんな普通の返しをされても

それで「はいそうですか」と素直に了解する阿呆がいるだろうか。

だが柊先生はおかまいなしに説明を続ける。

柊瑞穂

だって事実だもの。この学校には、犯罪を起こす可能性が格段に高い子達を日本中から集めて通わせているの

平桔平

いや~、えっと……

事実だとしても、それはこちらが頷く理由にはならないだろう。

俺が反応に困っている間も、先生は言葉を紡いでいく。

柊瑞穂

つまり、この学校は彼らが犯罪者としての特性と向き合って、社会に貢献できる人材となるよう更生させるという一部の政府関係者の発案の下、表向きには一般の高校と変わらない形で運営を始めたのよ

平桔平

んな滅茶苦茶な……

あまりにも破天荒な理屈にひたすら唖然とさせられるが、まだその在り方に納得がいかない。


俺はさらなる疑問をぶつけてみた。

平桔平

でも、どうして普通の学校みたいにして、ごく普通に高校生活なんてさせてるんです? 他にもやり方はあると思うんですけど……

そこで先生は、聞き分けの悪い子を諭すような口調に変わった。

柊瑞穂

いい、平君? ここの生徒達は確かに一般社会には受け入れがたい特性を有しているけど、彼ら自身はまだ何の罪も犯してはいないの。逮捕されて収容されたわけではない。あくまでそういった犯罪を起こす、もしくは関わる可能性を持っていると診断されただけ。そしてそれだけの理由で彼らの存在を拒絶することを、ここを運営する者達は好ましく思ってはいない。勿論私自身もね

平桔平

でも、それを治すための学校なんですよね?

柊瑞穂

厳密に言えば、彼らが自分の特性を制御できるようにするの。犯罪的特性は、上手く扱えれば唯一無二の個性にもなる。ここはその特異な個性を活かしつつ、健全な日常を送ることが可能となるようサポートすると同時に、異端者である彼らに高校生らしい生活を提供しようという配慮も兼ねた教育施設として存在しているの。……ただ、暴走してしまいがちな子には相応の処置も施すけど

話を結んだ先生の眼鏡が意味深にキラリと光る。

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8|一日目 犯罪学級―はんざいがっきゅう―

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