あの日…
思わず私が家を飛び出した日の話に戻ります。
ホテルにひとりチェックインした私の携帯が鳴りました。
夫からです。
不在着信はすでに3回入っていました。
「もしもし…」
「どこにいるの?探したよ。今、どこ?」
夫は困惑したような、疲れきった声でした。
「場所を行ったら、迎えに来てくれるの?」
「それは……うん……う、うーん…」
歯切れが悪いです。
その時すでに深夜1時を回っていました。
夫は迷っているようでした。
「○○ホテルにさっきチェックインした。
来てくれる?」
少し渋ったものの、夫は迷った末に来る事に決めたようです。
「わかった。行く。駐車場に着いたら、降りてきて。帰ろう」
「嫌だ。ちゃんと話がしたい。
一方的な話じゃなくて。ちゃんとした理由が知りたい。上がってきて」
「とりあえず、行くから。着いたら電話する。
それから、子供達には無事だと連絡して」
そう言って電話は切れました。
子供達には、既に連絡してあります。
私はベッドから起き上がりました。
鏡に映るその顔は疲れきり、目の下には隠しきれないクマができていました。
とりあえず、何とかしなくては…
あまりに酷い顔で会いたくない。
私は、鏡に向かい化粧を直し始めました。
夫が来る…夫がここに来るんだ
ただそれだけで、涙がぽろぽろこぼれました。