最初の結婚の話をしようと思う。

もう随分と前の話だけど、今も時々あの頃の事を思い出す。



私の生まれ育った家庭は超貧乏だった。

親同士は喧嘩ばかりだったし、とにかく貧しかった。

いつも母は苦労していた。

友達はクリスマスにサンタが来るのに、私にはサンタが来た事なんてなかったから、サンタクロースを信じた事はなかった。

習い事もした事はなかったし、自転車も買ってもらえなかった。

なぜ自分の家は他所の家と違うんだろうといつも思っていた。

自分の家が恥ずかしかった。

次第に「普通の家庭」というものに強く憧れるようになっていった。



20代の終わりに交際していた男性と結婚した。

私から見るとその人の家庭は「普通」に見えた。

その人も「普通」の人に見えた。

私は結婚する事で「普通」の家庭を手に入れる事ができるとすごく嬉しかった。

一応言っておくと、「普通」にこだわって結婚したわけじゃなく、心からその人の事を愛していたから結婚した。

でも、その結婚がきっかけで、自分が抱えていた大きな「普通ではない」というコンプレックスから逃れられると思ったのも事実だった。



前夫は「こうあるべき」という思いが強い人だった。

女はこうあるべき、男はこうあるべき、親はこうあるべき、母親はこうあるべきが強かった。

その頃の私にとって、前夫の思うこうあるべきは「普通」の道しるべに見えた。



私は度々、前夫の「女はこうあるべき」形から逸脱した事で酷く罵られたり暴力を振るわれた。

「お前は頭がおかしい、普通じゃない」と何度も言われた。

そう言われると、確かに私は普通ではないのだから、そんな風に言われても仕方がないと思った。



そんな前夫と過ごしながら、自分にものすごく厳しくなっていった。

常識的な振る舞いをしないといけない、良妻賢母のようにならないといけない。

じゃないと子供の教育にも悪いかも。

私は普通の家庭に育っていないから、モデルとなる人がいない。

テレビや本で見る素敵な妻やお母さんのようになりたいと思った。

本を読んだり、料理を頑張ったり、いつも穏やかでニコニコ、夫の不満はなるべく言わず、服装は質素でもなるべく上品に。



っていつの時代の女じゃい!

と突っ込みたくなるくらいの成り切りよう。



でも頑張った所でなれかった。

そんな柄でもなければ性格でもないのだから、無理なのに。



頻回に起こる前夫の浮気疑惑。

慣れない育児。ワンオペの2人の子育て。

前夫との夫婦喧嘩、そしてDV。



そして、浮気疑惑から浮気が判明。



相手の人は若くて派手な女性だった。



りょ、りょ、良妻賢母は?

地味で普通の女が良かったんじゃなかったのかーい!



浮気もショックだったけど、浮気相手が自分と全然違うタイプでびっくりした。

「女なんてそもそも興味ない。俺は教育とか経済や政治に興味がある」んじゃなかったのかーい!!!この馬鹿夫!



そしてそこから、いろいろな事があり、離婚に至った。



私は専業主婦で、子供を幼稚園に入れていた。

そこで頑張ってママ友を作り、なんだか上品そうなママさんと仲良くしていた。



離婚をきっかけに、上辺で付き合っていたママ友とは連絡をとらなくなった。

いつも話題になっていた子供の教育とか習い事は、もはやそれどころじゃなくなっていた。



子供も幼稚園は辞めて保育園に変わった。



離婚した事で、私の思っていた「普通」の人生ではなくなったし、「普通」の家庭でもなくなった。



シングルマザーになった私はとにかく必死だった。

普通とか理想とか言ってられない。

ってか、そんな事どうでもいい。

とにかく無理せず元気に、そして子供達を幸せにする!



離婚を経験して、普通とか理想とか、そんなものは本当にどうでも良くなった。

普通を手放す事で「普通の呪い」が解けたのかもしれない。



私は良妻賢母でなくてもいいし、好きな服を着たらいいし、不満も言えばいいし、イライラしたっていい。

誰かの理想通りに生きなくていい。



今もそれは変わらない。

再婚したけど、やっぱり普通の家庭とは違う。

今も普通に憧れる事はある。

今の夫と最初から夫婦で継子が自分の本当の子供だったらどんなに良かっただろうって思う。

でもそんな深刻にならない。

自分は自分でいい。

自分でしかいられないんだもん。

継母、昔の自分を振り返る

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