○1944年・北海道札幌市(夜)
 雨が周りの音を掻き消すくらい降っている、そして雨音に負けないほどに警備隊の人間たちの声が響き渡る。

母親
「蓮夜……人の為に行動しなさい………」

蓮夜
「お母さん!! ダメだよ………死んじゃうよ!!」

母親
「お母さんは大丈夫だから………蓮夜。自分の正義を貫いて生きなさい!!」

 1人の女性が口や頭から血を流して倒れている、そんな女性の子供であろう10歳の子供が泣き崩れている。
 母親は自分の体が既に限界を迎えている事に気がついており、子供を近くに呼んで自分の正義を貫き人の為に行動して生きていくんだと笑顔で伝えて生き絶えた。


○1950年・北海道札幌市・ススキノ
 第二次世界大戦が終戦してから5年が経ち、日本国民はそれなりの生活を取り戻し始めていた。
 この地〈北海道〉を除いては、北海道は政府の管理が追いついておらず、愚連隊や半グレ集団で溢れている。

不良A
「こ、こんな事しても良いのか!!」

不良B
「そうだ、そうだ!! 俺たちに手を出すって事は、百鬼會の人間に喧嘩を売るって事なんだぞ!!」

蓮夜
「百鬼會だって? 組織の名前で喧嘩すんじゃねぇよ!!」

テロップ:白泉 蓮夜(16歳)

 2人組の不良が顔面をボコボコに腫らし、1人の少年に向かって負け台詞のような事を叫んでいるのである。
 その2人の男に対して喧嘩をするのならば、組織の名前じゃ無くて個人で喧嘩をしろと怒鳴って2人を蹴散らす。

智也
「本当に良いのか? 百鬼會って言ったら、東北海道でも有数の愚連隊チームだぞ?」

テロップ:蓮夜の幼馴染・黄島 智也(16歳)

蓮夜
「あのレベルの輩なんて、何人居ても意味ねぇよ。それに困った時は、智也も手を貸してくれるんだろ?」

智也
「たくっ。昔からの付き合いだから手伝うが、普通の知人なら縁を切るところだ………マジでな」

蓮夜
「そう言うところ嫌いじゃないぞ」

 蓮夜が喧嘩を終えたところで、小さい時からの幼馴染である〈黄島 智也〉が近寄って来て、今のチンピラたちが危険な愚連隊の人間たちだと忠告するのである。
 しかし蓮夜はチンピラレベルの人間が多くいても問題なく勝てると笑っており、もしも困った時が来たのなら智也も力を貸してくれるのだろうと笑いながら話す。

蓮夜
「今日は帰りたくねぇな………」

智也
「何言ってんだよ。婆ちゃんが心配するだろうがよ………小さい時から1人で育ててもらってんだから」

蓮夜
「今日は土日だからな。キャバレーに来る客が多くなってんだよ………だから手伝わせられるんだよ」

智也
「良いじゃん。可愛い姉ちゃんと働けるんだからさ」

 蓮夜は小さい時に両親を亡くしており、祖母1人の手で育てられていた、その祖母は生活費を賄う為に実家でキャバレーを開いているのである。

蓮夜
「うち寄ってくか? テレビ買ったんだよ」

智也
「な、なんだと!? 行くに決まってんだろ!!」

 蓮夜の家はキャバレーでそれなりに稼いでいるので、自分の家に白黒テレビを買ったと智也にいう。
 それを聞いて見た事のない智也は、見て見たいと言って蓮夜の家に寄る事にしたのである。


「アンタら。また喧嘩でもして来たの?」

テロップ:ホステス・李 宇轩(26歳)

蓮夜
「うっさいな!! そんな格好で、表に出てくんなよ!!」


「なに? 生意気に、私に興奮してんの?」

蓮夜
「するかよ!!」

 祖母のキャバレーは難民も受け入れており、蓮夜と1番仲良いのは中国人の〈李 宇轩〉である。
 李は上半身裸で、蓮夜から表に出てくるなと注意を受けるが子供である事も加味してイジられる。

智也
「実際、どうするんだ? 本当に百鬼會の人間が復讐しに来たら?」

蓮夜
「あぁん? さっきから言ってんだろ、向かってくるなら真っ向からブチ倒す………ススキノは、俺が守んだよ」

 智也は百鬼會の復讐を本気で警戒しているが、蓮夜は復讐しに来るのならば真っ向から叩きのめすと同じ回答をした。

チンピラ
「蓮夜くん!! 智也くん!!」

蓮夜
「なんだ? 俺の家で約束でもしたか?」

智也
「そんな事してないが。お前の子分になった人間じゃないのか?」

 外から蓮夜と智也を呼ぶ声がして、なんなのかと2人は顔を見合わせて窓まで行って外を見る。

チンピラ
「権田兄弟が、ススキノで暴れ回ってるんですよ!!」

蓮夜
「権田兄弟だって? 誰だよ、それ………」

智也
「権田兄弟の弟は、札幌でも有数のチームに入っていて兄はソロで、数々の喧嘩師を倒して回っている」

 ススキノの飲み屋街で、権田兄弟という札幌指折りの喧嘩師が暴れ回っているから助けて欲しいとやって来ていた。
 蓮夜はススキノが関わっているのならばと、直ぐに智也を連れて例の飲み屋街に向かっていくのである。

権田兄
「おいおい!! 俺たちがケツ持ちやってるのに、みかじめ料を払わないバカは何処だ!!」

テロップ:権田 武(20歳)

 権田兄は5人の下っ端を連れて、桁違いの請求書を持ってブラブラ飲み屋街を歩いている。

蓮夜
「テメェが、権田兄って奴か? 俺のススキノで、大きな顔をしながら歩いてるみたいだな!!」

権田兄
「誰だ、テメェは?」

手下A
「コイツが、ここら辺を仕切ってる奴です………〈ススキノの鬼〉って言われてる奴ですよ!!」

権田兄
「コイツが例のか? うちの部下も数人やられたみたいだったな………ケジメを取ってやろうじゃねぇか」

 権田兄はガタイが凄く大きく、容易に180センチは超えている巨体でオーラもかなりある。
 しかし蓮夜はビビるどころか前に出て、権田兄を睨み返して今にも一触即発になってもおかしくは無い。

蓮夜
「智也。お前に下っ端5人を任せられるか? ちっと人数は多いが、お前なら問題ないだろ?」

智也
「俺を誰だと思ってんだよ。言っておくが喧嘩の腕なら負けちゃいないぞ………お前にな」

権田兄
「なんだぁ? お前1人で敵うって思ってんのか? 舐められたもんだなぁ………2人がかりでも止められねぇぞ!!」

 自分を1人で、しかも自分より4つも年下の子供に舐められていると感じ、怒りを覚えて権田兄は顔を真っ赤にする。
 蓮夜は手下5人を智也に任せて、自分は強いと言われている権田兄をタイマンでぶっ倒すとやる気になっている。

権田兄
「お前に、俺の強さを見せてやるよ!! 今日から俺がススキノの王様になるんだよ!!」

蓮夜
「………この程度でか? こんなパンチやら蹴りやらを繰り出されても退屈凌ぎにもならねぇよ?」

権田兄
「避けてばっかりで勝てると思っ………」

蓮夜
「あぁ〜あ。ちょっと強く殴ったら、このザマだよ」

 権田兄のパンチ力やキック力は桁外れではあるが、蓮夜は目を瞑りながらでもキックとパンチを避けており、退屈凌ぎにもならないようなもんだと馬鹿にしている。
 その挑発に乗った権田兄が前に出た瞬間に、蓮夜が鋭く懐に入って腹を殴ってから真上にある顎をアッパーで、一撃ノックアウトをかましたのである。

蓮夜
「そっちの方は………なんでもないか」

智也
「だから舐めんなって。こんなのに負けてたら、お前の相方なんて務められないってもんだ」

 蓮夜は智也の心配をしようとしたが、既に決着がついており智也はタバコに火をつけて吸って休憩をしていた。

???
「テメェら強いな!! 権田兄を見に来て見たら、こんな怪物に会うとはな………しかも2人と来たもんだ」

蓮夜
「誰だ、アンタは?」

 蓮夜たちに拍手を送る人間がいた、その人間は金髪ロン毛と50年代では見かけないような風貌をしている。

001:ススキノの鬼

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