昼食後、いよいよ『学園バーサス生徒対抗競技』が始まった。





『学園バーサス生徒対抗競技』



生徒代表と、学長、PTA代表の黒川、教師代表の白石、職員代表の青田で三種目を競う。



種目は早押しクイズと障害物競争と騎馬戦。



三種目のうち二種目を獲れば、

こちらの勝利になる。



「でも……。

 赤井と桃と私で、

 あと一人足りませんよね?」



「お嬢。

 ここに
 もう一人いるじゃないか」


「ん……?」





目の前に山田が笑顔で突っ立っていた。





「赤井、桃。
 山田は戦力外ですよ?

 言ってはいけないと知りつつ
 言ってしまいますが、
 山田は私より馬鹿なのです」



「そんなの知っている。

 山田は、
 お嬢と同じ体力要員だ」





え?

私と山田が同じ?

……酷い。





一回戦の早押しクイズは、

答えがさっぱり分からない。

回答は頭脳派の桃と赤井に任せて、私は早押しボタンを連弾しよう。





『ピンポンピンポンピンポンピンポン!』





「うわー。

 お嬢、問題の途中で
 ボタンを押すなよ」





「は?
 赤井も桃も頭脳派なんだから、

 このくらい分かるでしょう?

 私は一ミリも分かりませんが」





「あー、

 お手つきで回答権が黒川君達に
 移った」





「大丈夫ですよ。

 こんな問題、黒川達でも
 答えられませんって」



「ポンポコピー」





黒川の低音ボイスがグラウンドに響き渡る。



その、あまりのイケメンボイスにグラウンド中が静まりかえり、女子達が皆うっとりとしている。



エビちゃんも……。



あ、山田まで!





皆さーん、目を覚ましてー!



いくらイケメンボイスでも、言っている事は非常に残念なセリフですからねー!





「せ……、正解です」


クイズの出題者も黒川の美声に戸惑っているようだ。





早押しクイズはいつの間にか、イケメンボイスで言ってもらいたいセリフを黒川に言わせるコーナーになってしまった。





「ちょっと赤井。

 赤井もイケメンボイスで
 応戦してよ」





「無理だ。

 俺、あんな恥ずかしいセリフを

 真顔で言えない」



「ならば山田、お前の出番だ」





「え……。
『お……、俺の傍にいろ』」





山田がセリフを放った瞬間、グラウンドが静まり返った。



「残念。不正解です。
 マイナス五点」





「えー?
 得点がマイナスになるの?

 山田、二度と口を開くな!」





「回答権は学園チームに
 移りました」





「俺の傍にいろ」



キャー!

 

黒川が、先程の山田と同じセリフを言うだけで、グラウンド中に黄色い声援があがる。





「学園チーム、大正解!」



何だ? この競技。

早押しクイズでも何でもない。





一回戦は我々生徒チームが大敗し、終了した。





「赤井、桃、山田。

 次の障害物競争で
 必ず勝たなければ
 後がないですよ」





「お嬢、
 落ち着け。次は絶対勝てる」


「赤井、
 適当な事を言わないでください。

 この試合には命が
 掛かっているのですから。

 負けたら死を意味しますよ」





「大丈夫だ。

 学園チームには弱点があるからな」





赤井の自信が何処からきているのかは分からないが、とっておきの秘策があるのだろう。



とにかく二回戦は絶対勝たなければ。



二回戦の障害物競争は、

二人一組のペアで出場する。



我々生徒チームは赤井と私。

学園チームは白石と青田が出場するようだ。

スタート地点に人力車が置いてある。

先日、青田が学長に借りていたやつだな。



……あれ?

生徒チームのコースに置いてあるのは、人力車ではなく、手押し車だ。



「赤井。

 学園チームは人力車なのに、
 生徒チームはボロボロの
 手押し車ですよ?」



「ああ。
 青田君が、学長に借りていた
 人力車を持ってくるのを
 忘れたんだってさ」



「ちょっと。
 おかしくないですか?

 青田が忘れたのだから、
 青田のチームが手押し車を
 使えば良いではないですか。

 何故、私たちがボロボロの
 手押し車を使わなければ
 ならないのですか?」

「まあ、堅い事言うなって。

 お嬢。俺が押すから、
 手押し車に早く乗れ」



渋々私はボロボロで窮屈な手押し車に乗り、体育座りをした。



白石は青田の牽く人力車に優雅に乗り込む。


白石、
人力車を除菌ペーパーでしっかり除菌。

それだけで女生徒達から歓声が湧いた。





この競技、
本当に勝てるのだろうか……。

pagetop