タキ

うわっ
もう予鈴鳴っちゃった!
誰もいないし……急がなくちゃ

ミヤ

……

タキ

あっ

タキ

ミヤちゃん!

ミヤ

タキ

おはよ、ミヤちゃんも遅刻?

ミヤ

……ええと、

タキ

ああ、ごめんね。
私は 滝沢 多岐(たきざわ たき)。
ミヤちゃんと同じクラスだよ。

タキ

ミヤちゃんは休みがちだから、
わからなくても平気だよ。
今日は授業出られそう?

ミヤ

……今日は図書室に寄りに

ミヤ

授業は……

タキ

そっか。
もしよかったら、途中まで一緒に
行ってもいい?

タキ

カンペキに遅刻だから……
心の準備が足りなくて。

ミヤ

……いいわよ。

タキ

へへ。
ありがとう!

タキ

……

ミヤ

……

タキ

……なんか、
やけに静かだね。
授業中だからかな?

タキ

まるで誰もいないみたいな……
なんだっけ、アリス・クリス!

ミヤ

……『そして誰もいなくなった』は
アガサ・クリスティーよ。
アリスがつく作家は有栖川有栖。

タキ

あはは、そうだった。
すごいねミヤちゃん、
物知りなんだ。

タキ

図書室には読書をしに行くの?
それとも調べ物?

ミヤ

少し……
用事があって。

タキ

そっか。

タキ

じゃ、私はこっちだから。
またね、ミヤちゃん。

ミヤ

ええ……
またね。

タキ

ミヤちゃん!

ミヤ

……?

タキ

よかった……
ミヤちゃんはちゃんといた。

ミヤ

なにか……
あったのかしら。

タキ

あのねミヤちゃん、変なんだよ。
どこにも誰もいないの。
教室にも、理科室や音楽室にも、
校庭にも。

タキ

変だと思って……
ミヤちゃんも一緒に見回ってほしいの。

タキ

お願い。
こんなの絶対変だよ。

ミヤ

……

ミヤ

……滝沢多岐。
落ち着いて聞いてほしいの。

ミヤ

今日は日曜日なのよ。

タキ

えっ!

タキ

で、でも
ちゃんと予鈴は鳴ったし
正門も開いてて……

ミヤ

タイマーがセットされているから
休みの日でもチャイムは鳴るわ。
正門は私が来るので開けてもらったの。

タキ

……

ミヤ

……

タキ

な、なあんだ!そっかあ!
びっくりして慌てちゃったよ!

タキ

授業がないんだったら
私は帰るね!
あ、あはは……!

ミヤ

ええ。
お気をつけて。

タキ

うん!
ありがとう、またね!

タキ

いやーまさか今日が
日曜日だとはなあ……

タキ

あ、家出てきた時から焦ってたから
携帯ほとんど充電してないや。
まだ10時回ってないかなあ……

2022年
6月10日(金)
09:38

タキ

……あれ?
やっぱり今日は平日なんじゃ……

タキ

日付表示は合ってるし……
どういうことなんだろう。

タキ

ミヤちゃんの言葉も――……

つづく

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