幽霊密室殺人事件!2
幽霊密室殺人事件!2
さて、ということで、さっそく事件現場に来たわけだけど……すごいたくさんの人だね?
死んだ幽霊を見ようってこったろう……しかし、すごいな、入場料をとってやがらぁ
入り口には、相談料一人1時間10銭と書いてある看板の「相」に×がつけられ「入」と書き換えられていた。
ここはもともとなにかのお店なのかな?
ここは「よく当たると評判の占い師の館」です
なるほど、だから相談料か
ええ、守護霊占い、っていって若い子中心に流行ってる占い師でしたよ……まぁ、ここ最近はそれも少し下火でしたが
なるほど……で、ここで幽霊が殺されたんだって?
そう言いながら一行は入場料を支払うと、屋敷の中へと入っていった。
はい、そうです。
被害霊は、この家の地縛霊のドンベエさんだそうです。
部屋の真ん中で、半透明の幽霊と思われる男が胸にナイフを突き刺されて倒れていた。
その周りには手を触れないよう、立ち入り禁止のテープが貼られている。
見たら分かるように、被害者はこの方です。
そもそもだけどよ。幽霊が死ぬのか?
それが僕も疑問だよ。そもそも幽霊って言うのは、死んでいるわけだから、それが死ぬって言うのは可能なのかな?
成仏するなら分かるけど……
そう言われましても、こうして現に、ドンベエさんは胸にナイフを突き立てられて死んでるわけですから、そうとしか言えないじゃないですか
そもそも、幽霊が存在するって言うのもオレ様は未だに信じられねぇ
しゃべるウサギの方が信じられないけど……
異世界へと開国してからというもの、それまででは考えられないような生き物がこの国にはたくさん存在していました。
しゃべるウサギや幽霊もそれらの一種です。
幽霊が死ぬとか死なないとか、そんなことをいつまでもぐだぐだぐだぐだぐだぐだぐだぐだ話していてもらちがあきませんし、そろそろ話進めていいですか?
大事なことだと思うけどなぁ
オレ様も気になるぜ
よし、多数決の結果、二対一なのでまずは幽霊が死ぬかどうかについて議論を深めよう——
この世界では幽霊は死にます。そういうことで、話進めて良いですか?
壁に拳をめり込ませたスミレに、醒めた目で見据えられた二人は、ブンブンと首を縦に振りました。
ありがとうございます! では、話を戻して、被害者発見時の状況について確認していきたいと思います
そういうとスミレは、隣室から人を呼んできて話を始めました。
死体の第一発見者は、この家の家主、占い師のスピルバーグさんです
あなたたちが探偵? 仕事の邪魔だから、お客じゃないなら帰ってくれない?
まぁまぁ、スピルバーグさん。そんなこと言わないで、お手数ですがもう一度、ドンベエさんを見つけたときの状況を話して頂けますか?
ったく、面倒ね。話したらさっさと帰ってちょうだい
はい、それはもう、もちろんです
朝、私が起きてここに来たら、彼が死んでいたの……驚いたわ。まさか、幽霊が死ぬなんて
やっぱり、そうですよね! そこ驚きますよね!
それはもういいですって
ところで、密室殺人だって聞いたんですが、ここは密室だったんですか?
ええ、そうよ。この部屋の入り口は表の玄関と、隣室へ向かう扉、それと裏口の三カ所だけれど、全ての部屋の鍵はかけてあったし、窓の鍵も全てかけられていたわ
今ちょいと見てきたが、どこの部屋や窓の鍵にも細工はされてないみたいだぜ
いつの間にか姿の見えなくなっていたジョンは、トテトテと戻ってきてそう言いました。
密室、っていうのは本当だと思うぜ。その姉ちゃんが嘘言ってなきゃな
勝手に人の家をあさるなんて、無礼なウサギね。鍋にして食べるわよ
ちょっと聞きたいんですけど、この幽霊……ええと、ドンベエさん、でしたっけ? この人はいつからいたんですか?
知らないわ。私がこの家を借りたときにはもういたもの
え、じゃあ、地縛霊がいるって知っててここ借りたんですか!?
そうよ
もの好きな姉ちゃんだな
私の仕事、占い師だからね。地縛霊が住んでるくらいのほうが、箔が付いて客が来るのよ……ワケありってことで家賃も安いしね
でも、それでも、あんなおっさんだろう? それと一緒に住むってのはなかなかだぜ
バカね、ここはあくまで仕事場。住んでる家は別にあるわよ
なるほど
あんたたち、本当に、彼が死んだ理由わかるんでしょうね?
も、もちろんですよ! ご主人様、他に質問はありませんか?
ドンベエさんとは、どういうご関係だったんですか? 幽霊と同居、ってなかなか出来ない体験で想像できないんですが……
彼は……そう、ビジネスパートナー、といったところかしら
ビジネスパートナー?
私はここで「守護霊占い」っていうのをやっていてね
守護霊って本当にいるんですか!?
バカね、そんなものいるわけないじゃない。いたら見えるでしょ?
そ、そうなんですか……じゃあ、その守護霊占いっていうのは……?
ま、ドンベエが守護霊のフリして言ったてきとーなことを、私がそれっぽくまとめる、っていうだけのことよ
インチキじゃねえか
占いなんて、どれもそんなものよ。それでも、当たるって喜ぶ人間がいるんだから別にいいじゃない
確かに
もう一つお尋ねしたいのですが、彼の胸に刺さっている包丁、あれはこの家にあったものですか?
ええ、あれはこの家の台所にあったものよ
なるほど……わかりました、ありがとうございます
で、こんなこと聞いてなんになるっていうの? 彼が死んだ理由がわかるわけ?
そうですね……残念ながら
ご、ご主人様!? わからないんですか!? お願いします、わかってくださいよ! でっちあげでもなんでもいいから、この謎を解いてください!
でっちあげはまずいだろ、嬢ちゃん
で、どうなんだ相棒? 謎は解けたんだろ?
うん。謎は解けたよ、残念ながらね
!?
どういうことですか、説明してください!?
この謎の真実、それは——
その3へつづく!