幽霊密室殺人事件!2

タツ

さて、ということで、さっそく事件現場に来たわけだけど……すごいたくさんの人だね?

ジョン

死んだ幽霊を見ようってこったろう……しかし、すごいな、入場料をとってやがらぁ

入り口には、相談料一人1時間10銭と書いてある看板の「相」に×がつけられ「入」と書き換えられていた。

タツ

ここはもともとなにかのお店なのかな?

スミレ

ここは「よく当たると評判の占い師の館」です

ジョン

なるほど、だから相談料か

スミレ

ええ、守護霊占い、っていって若い子中心に流行ってる占い師でしたよ……まぁ、ここ最近はそれも少し下火でしたが

タツ

なるほど……で、ここで幽霊が殺されたんだって?

そう言いながら一行は入場料を支払うと、屋敷の中へと入っていった。

スミレ

はい、そうです。
被害霊は、この家の地縛霊のドンベエさんだそうです。

ドンベエ

部屋の真ん中で、半透明の幽霊と思われる男が胸にナイフを突き刺されて倒れていた。
その周りには手を触れないよう、立ち入り禁止のテープが貼られている。

スミレ

見たら分かるように、被害者はこの方です。

ジョン

そもそもだけどよ。幽霊が死ぬのか?

タツ

それが僕も疑問だよ。そもそも幽霊って言うのは、死んでいるわけだから、それが死ぬって言うのは可能なのかな?
成仏するなら分かるけど……

スミレ

そう言われましても、こうして現に、ドンベエさんは胸にナイフを突き立てられて死んでるわけですから、そうとしか言えないじゃないですか

ジョン

そもそも、幽霊が存在するって言うのもオレ様は未だに信じられねぇ

スミレ

しゃべるウサギの方が信じられないけど……

異世界へと開国してからというもの、それまででは考えられないような生き物がこの国にはたくさん存在していました。
しゃべるウサギや幽霊もそれらの一種です。

スミレ

幽霊が死ぬとか死なないとか、そんなことをいつまでもぐだぐだぐだぐだぐだぐだぐだぐだ話していてもらちがあきませんし、そろそろ話進めていいですか?

タツ

大事なことだと思うけどなぁ

ジョン

オレ様も気になるぜ

タツ

よし、多数決の結果、二対一なのでまずは幽霊が死ぬかどうかについて議論を深めよう——

スミレ

この世界では幽霊は死にます。そういうことで、話進めて良いですか?

壁に拳をめり込ませたスミレに、醒めた目で見据えられた二人は、ブンブンと首を縦に振りました。

スミレ

ありがとうございます! では、話を戻して、被害者発見時の状況について確認していきたいと思います

そういうとスミレは、隣室から人を呼んできて話を始めました。

スミレ

死体の第一発見者は、この家の家主、占い師のスピルバーグさんです

スピルバーグ

あなたたちが探偵? 仕事の邪魔だから、お客じゃないなら帰ってくれない?

スミレ

まぁまぁ、スピルバーグさん。そんなこと言わないで、お手数ですがもう一度、ドンベエさんを見つけたときの状況を話して頂けますか?

スピルバーグ

ったく、面倒ね。話したらさっさと帰ってちょうだい

スミレ

はい、それはもう、もちろんです

スピルバーグ

朝、私が起きてここに来たら、彼が死んでいたの……驚いたわ。まさか、幽霊が死ぬなんて

タツ

やっぱり、そうですよね! そこ驚きますよね!

スミレ

それはもういいですって

タツ

ところで、密室殺人だって聞いたんですが、ここは密室だったんですか?

スピルバーグ

ええ、そうよ。この部屋の入り口は表の玄関と、隣室へ向かう扉、それと裏口の三カ所だけれど、全ての部屋の鍵はかけてあったし、窓の鍵も全てかけられていたわ

ジョン

今ちょいと見てきたが、どこの部屋や窓の鍵にも細工はされてないみたいだぜ

いつの間にか姿の見えなくなっていたジョンは、トテトテと戻ってきてそう言いました。

ジョン

密室、っていうのは本当だと思うぜ。その姉ちゃんが嘘言ってなきゃな

スピルバーグ

勝手に人の家をあさるなんて、無礼なウサギね。鍋にして食べるわよ

タツ

ちょっと聞きたいんですけど、この幽霊……ええと、ドンベエさん、でしたっけ? この人はいつからいたんですか?

スピルバーグ

知らないわ。私がこの家を借りたときにはもういたもの

スミレ

え、じゃあ、地縛霊がいるって知っててここ借りたんですか!?

スピルバーグ

そうよ

ジョン

もの好きな姉ちゃんだな

スピルバーグ

私の仕事、占い師だからね。地縛霊が住んでるくらいのほうが、箔が付いて客が来るのよ……ワケありってことで家賃も安いしね

ジョン

でも、それでも、あんなおっさんだろう? それと一緒に住むってのはなかなかだぜ

スピルバーグ

バカね、ここはあくまで仕事場。住んでる家は別にあるわよ

タツ

なるほど

スピルバーグ

あんたたち、本当に、彼が死んだ理由わかるんでしょうね?

スミレ

も、もちろんですよ! ご主人様、他に質問はありませんか?

タツ

ドンベエさんとは、どういうご関係だったんですか? 幽霊と同居、ってなかなか出来ない体験で想像できないんですが……

スピルバーグ

彼は……そう、ビジネスパートナー、といったところかしら

ジョン

ビジネスパートナー?

スピルバーグ

私はここで「守護霊占い」っていうのをやっていてね

スミレ

守護霊って本当にいるんですか!?

スピルバーグ

バカね、そんなものいるわけないじゃない。いたら見えるでしょ?

スミレ

そ、そうなんですか……じゃあ、その守護霊占いっていうのは……?

スピルバーグ

ま、ドンベエが守護霊のフリして言ったてきとーなことを、私がそれっぽくまとめる、っていうだけのことよ

ジョン

インチキじゃねえか

スピルバーグ

占いなんて、どれもそんなものよ。それでも、当たるって喜ぶ人間がいるんだから別にいいじゃない

タツ

確かに

タツ

もう一つお尋ねしたいのですが、彼の胸に刺さっている包丁、あれはこの家にあったものですか?

スピルバーグ

ええ、あれはこの家の台所にあったものよ

タツ

なるほど……わかりました、ありがとうございます

スピルバーグ

で、こんなこと聞いてなんになるっていうの? 彼が死んだ理由がわかるわけ?

タツ

そうですね……残念ながら

スミレ

ご、ご主人様!? わからないんですか!? お願いします、わかってくださいよ! でっちあげでもなんでもいいから、この謎を解いてください!

ジョン

でっちあげはまずいだろ、嬢ちゃん

ジョン

で、どうなんだ相棒? 謎は解けたんだろ?

タツ

うん。謎は解けたよ、残念ながらね

スピルバーグ

!?

スミレ

どういうことですか、説明してください!?

タツ

この謎の真実、それは——

その3へつづく!

幽霊密室殺人事件、その2

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