──前回のあらすじ。
親友の洋平は、俺の妹である莉瀬に告白をした。
だけど、莉瀬は『好きな人がいる』と言って、
洋平を振ってしまった。
莉瀬の好きな奴って、一体誰なんだ?
そんな時に俺は、憧れのクラスメイトである
柚木さんからなんと告白をされてしまった。
俺の女神だった柚木さんからの告白を、
断る理由なんて無い。
柚木さんと付き合うことになった俺は、
幸せの絶頂にいた──。
──前回のあらすじ。
親友の洋平は、俺の妹である莉瀬に告白をした。
だけど、莉瀬は『好きな人がいる』と言って、
洋平を振ってしまった。
莉瀬の好きな奴って、一体誰なんだ?
そんな時に俺は、憧れのクラスメイトである
柚木さんからなんと告白をされてしまった。
俺の女神だった柚木さんからの告白を、
断る理由なんて無い。
柚木さんと付き合うことになった俺は、
幸せの絶頂にいた──。
第二話
『彼女』
家に帰ってからも、スマホで柚木さんと話していた。
……それじゃ、また明日学校でね。
おやすみ
ああ、おやすみ
通話を切る。
(うはーっ!
幸せすぎて、
大声で叫びながら近所を駆け回りたい!)
(こんなに上手く行きすぎていいのか?)
コンコンッ
バカ兄ー、入っていい?
おうっ、いーぞ
莉瀬がドアを開けて、部屋に入って来た。
電話……。
誰と話してたの?
は?
で、電話なんかしてないって
じゃあ、ずっと独り言つぶやいてた
って言うの?
そうだよ、独り言だよ
何それ……。
本当だったらキモイでしょ
ほっとけ!
それで、何の用なんだよ
……別に、なんでもない
莉瀬がドアを開けて出て行こうとする。
はぁ?
何しに来たんだお前?
バカ兄が誰と話してたのか、
気になっただけ
じゃあね、おやすみ
(変な奴だな……)
──数週間後。
お前はいいよな……。
柚木と順調みたいで……
はははっ!
はあ……。
お前らを見てると、
自分がみじめに思えてくる……
お、おいおい……。
まだ莉瀬のことを引きずってんのか?
いい加減に忘れろよ
簡単に忘れられるわけないだろ……。
6年間、ずっと好きだったんだから……
そうだな……。
すまん
(莉瀬も、洋平を好きになってくれれば
丸く収まるんだが……)
(でも、何だろう?)
(莉瀬と洋平が付き合ってるのを
想像すると、何かむかつく……)
(やめよう。
こんなんじゃ、
莉瀬を嫁に出してやれなくなる)
──放課後。
そろそろテニス部に行くね。
じゃあね、涼介くん
ああ、頑張れよ
(テニス部に行って
スコートを覗きに行くのもいいが……)
(よく考えれば、
紗登奈は俺の彼女なんだ)
(わざわざそんな事をしなくても、
頼めばもっとすごいモノを
見せてくれるかも……)
(……とは言うものの。
まだキスもしてないんだよなあ)
あ、それから。
明日のことなんだけど……
どっか遊びに行くか?
うんっ
どこがいい?
たまには映画を観に行くのもいいかもな。
それとも……
えーとね……。
涼介くんの家に行きたいな……
俺の家!?
いつも妹さんの話を聞いて、
楽しそうだなって思ってたし……
涼介くんの部屋も見たいな……
と、思って
(俺の部屋で、紗登奈と二人きり……。
ゴクッ)
わ、わかった。
妹たちに、明日は出かけないように
言っておくから
ありがとう!
それじゃ、また明日ね!
またな!
──帰宅後。
えーとな……。
お前ら、明日は暇か?
特に予定は無いけど
ボクもです……
あ、明日っ。
俺の友達が来るんだけどっ!
お前らに会いたいって
言ってるんだ……
えっ……。
魚住さんが来るの?
違うって。
女の友達だよ
女の…子…?
おにぃに女の子の友達ができたなんて、
信じ難いです……
オイッ
えっ、あの…。
それって友達じゃなくて……。
えっと……
なんだよ
か、彼女なんじゃないの?
うっ……
違うの?
ただの友達?
い、一応……彼女だけど
…………
おねぇが石像に
なってしまいました……
オイッ!
お前ら、俺に彼女ができるのが
そんなに意外なのか!?
和田○キコが実は女性だった
というのと同じくらい、意外です……
尺度がわかりづらい!
……明日、
私も彼女に会わなくちゃいけないの?
できればな
そう……
まあ、ずっと一緒にいる必要はねぇよ。
ちょっと顔見せるだけでいいから
わかった……
莉瀬は顔色を悪くして、自分の部屋に行ってしまった。
(いくらなんでも驚きすぎだろ)
──翌日。
はじめまして。
柚木 紗登奈です
…………
はじめまして。
元宮 千雪、小学3年生です……。
いつも愚兄がお世話になっています……
もう少し小学生らしい挨拶をしてくれ
あははっ。
涼介くんから聞いたとおり、
妹さんと仲良しなんだね
ふふんっ。
俺が妹に合わせてやってるからな
おにぃの本やDVDの隠し場所を
知っているほど、
仲良しです……
お前いつの間に!
本やDVDの隠し場所って?
わーわーっ!
何でも無いんだ!
そ、それよりっ。
莉瀬も挨拶しろよ!
あ……うん
莉瀬です……。
はじめまして
顔色悪いけど、大丈夫?
大丈夫……です。
風邪気味なだけですから……
お前、風邪ひいてたのか?!
そんなに大げさに
驚かなくてもいいわよ……
大変な時に遊びに来てごめんね。
ご飯、ちゃんと食べた?
いえ、まだ……
じゃあ、キッチン借りてもいい?
おかゆ作るから!
えっ……
お客さんにそこまでさせるのは悪いよ
お客さんなんて、
他人みたいな言い方しないでよ
あ、すまん
何か作るなら、ボクも手伝います……
ありがとっ。
じゃあ、莉瀬ちゃんのおかゆの他に
みんなの晩ご飯も作っちゃおうか?
はい……
晩ご飯は何がいい?
前衛的な形のハンバーグを
作りたいです……
やめろ。
様式美を守ってくれ
ふふっ。
じゃあ、食材買いに行こうか?
ああ。
重い物は全部俺が持つよ
ボクもついて行きます……
それじゃあ莉瀬ちゃん。
ちょっと行ってくるからね
大人しく寝てろよ
うん……
…………
(みんな、行っちゃった……。
私の居場所、無いな……)
──夕食後。
こんな時間まで
お邪魔しちゃってごめんね
そんなことないさ。
また来てくれよ
(結局、千雪のせいで
紗登奈と二人きりになれなかったな)
紗登奈お姉さん、
また遊びましょう……
うんっ。
今度はうちにも遊びに来てね?
はいっ……!
家まで送ってくよ
ふふ、ありがと
──帰り道。
千雪ちゃん、すごく可愛いかったなぁ
妹の相手してもらって悪かったな
そんなことないよっ。
会わせてくれたことに、
お礼を言いたいくらい!
良かったらまた来てくれよ。
妹も喜ぶだろうし
…………
どうした?
涼介くんって、やっぱり優しいね
優しい?
普通のことしか言ってないだろ
うん……。
でも、優しいと思う
そ、そうか?
でもね……。
その優しさが、
妹さんを傷つけてるのかも…
……え?
ごめん、なんでもないっ。
それじゃ、また明日……学校で!
あ、ああ。
またな
──帰宅後。
(傷つけてるって、どういう意味だよ。
気になるな……)
(そうだ。
莉瀬の様子を見に行ってやるか)
コンコンッ
入ってもいいか?
……勝手に入れば?
いちいち聞かないでよ、ウザイ
(なんだよ。
心配してんのに、むかつく言い方だな)
ドアを開けると、
莉瀬がこちらに背を向けてベッドに横たわっていた。
おいおい……。
風邪ひいてんだから、布団くらい掛けろよ
…………
まだ具合悪いのか?
最初っから具合なんて悪くない……
は?
風邪なんて、
ひいてないって言ったの……
はあぁ?
お前な……ワガママもいい加減にしろよ
誰がワガママよ……
お前だよ!
紗登奈はお前のこと心配して、
おかゆを作ってくれたんだぞ?
それに、スポーツドリンクとか、
消化に良さそうなゼリーやプリンまで
買ってくれて……
莉瀬が怒った顔で振り向く。
そんなの、アンタにいいところ
見せたかっただけでしょ!?
私が風邪をひいてるなんて
言っちゃったから、
格好の餌食になったのよ!
怒りで腹の底が熱くなった。
お前……最低だな……
……っ!(ビクッ)
お前みたいなの、
うるせえ小姑って言うんだよ
…………
莉瀬の瞳から、大粒の涙が零れ落ちた。
(しまった!
言い過ぎた!)
わ、悪い!
今のは言い方が悪かった!
お兄ちゃんが好きだけど……。
どうしようもなくて……
(今、お兄ちゃんって
言わなかったか……?)
(い、いや!
それよりも好きって???)
お兄ちゃんは私の気持ちも知らないで、
彼女なんか連れて来るし……。
でも、彼女に会いたくない
なんて言える訳ない……
だって、
兄妹で気持ち悪いって思われたら
耐えられないから……
莉瀬が目元を拭っても拭っても、涙があふれてくる。
ま、待てよ。
さっきからなに言ってるんだ?
もういい!
最低なのは私なの!
全部、私が悪いの!
ちょっ……落ち着けよ
出て行ってよ、バカ兄!
莉瀬にクッションを投げつけられた。
…………
(何が起こってるかわからんが、
とりあえず部屋を出た方が
良さそうだな……)
莉瀬の部屋を出て、静かにドアを閉めた。
──翌日。
一人で考え事をしたくて屋上に来ると、
はしごをつたって出入り口の上に登った。
(莉瀬が俺の事を好きだって……?
冗談だよな?)
(もしアレが冗談じゃないなら……。
俺の本当の気持ちを言った方が
良かったのか?)
(『莉瀬なら兄妹でも気持ち悪くない』
っていう、本当の気持ちを……)
(いや、そんなの駄目だ。
俺は紗登奈が好きなんだから)
ギイィ…
屋上のドアが開く音がした後、誰かの声がした。
うーん……。
涼介くん、ここにもいないか……
(この声は紗登奈?
俺を探してるのか……)
(でも、すまん。
今は一人にさせてくれ……)
ギイィ…
再びドアが開く音がした。
あ、魚住くん。
涼介くん見なかった?
(今度は洋平が来たのか)
俺も探してるんだよ。
どこ行っちまったのかなあ、アイツ
(コイツらの嗅覚は恐ろしい。
俺はお前らのすぐ近くにいるぞ)
そういえばお前、
涼介と上手くいってるみたいじゃん
うん……。
でもね、私って出しゃばりみたいで……
何かあったのか?
昨日ね、
涼介くんの家に行ったんだけど……
ふんふん
……あっ。
涼介くんの妹さんに会ったことある?
あるけど……それが?
私、莉瀬ちゃんを怒らせちゃったの
かもしれないの
へっ?
莉瀬ちゃんと何かあったのか?
そういう訳じゃないんだけど……
キッチンを借りたり、
涼介くんや千雪ちゃんと一緒に
出かけたりしたせいなのか、
莉瀬ちゃんが
私の顔を一度も見てくれなかったの……
そんなことで怒らねえだろ。
気のせいじゃねえのか?
気のせいなら、いいんだけどね
莉瀬ちゃんって、
もしかして涼介くんのことが
好きなのかな……?
(えっ……。
気づいてたのか?)
ああ、そうかもな。
あの兄妹って
ケンカばっかしてる割には仲いいし
そういう事じゃなくて……
紗登奈がうつむき、黙り込んでしまった。
どしたん?
なんでもない。
とにかくね、別れた方がいいかなって
思ったの
へっ?
(へっ?)
ケンカでもしたのか?
する訳ないよ……。
涼介くん、私に優しすぎるから
そりゃお前、
アイツはずっと柚木に憧れてたから
でも、私達って彼氏と彼女なんだよ?
付き合う前に憧れてたとか、
もう関係ないよ
ケンカしてもいいから、
本当の涼介くんを見せて欲しい……
そっか……
…………
お前の気持ちはわからんでもないけど。
でもな、涼介は本当に
柚木のことが好きなんだぞ
涼介くんは好きになる人、
間違っちゃったんじゃないかな?
(どういう意味だ?)
それとも、
私が告白なんかしちゃったから
断れなくて我慢してるとか……
ちょっとストップ!
えっ?
なんでそんなにネガティブになってるか
わかんねーけど……
俺にそんな話をされても困る。
アイツとお前が別れる原因になったら
嫌だし
そ、そうだね。
愚痴ばっかり言ってごめんね
莉瀬ちゃんは可愛いけど、
ライバル意識を持つ必要は
無いんじゃねーのか?
そんな、ライバル意識なんて……
ま、どっちでもいーけどさ
落ち着いて考えよーぜ。
莉瀬ちゃんと涼介は兄妹なんだから、
間違っても付き合うことなんかねえよ
…………
うん、そうだよね……
変な話ばっかりして、本当にごめん。
もう行くね?
ああ……
紗登奈は屋上の階段を下りて行く。
あーあ……。
俺も彼女欲しいなー
洋平も階段を下りて行った。
(紗登奈が、
あんなことを考えていたなんて……)
(これから俺は、どうすればいいんだ?)
■最終話につづく■
待ってました! そう来ましたか!!
定番の要素を押さえつつも、
(今んとこ)誰かが下衆い訳でも無く、みんな優しいのに不穏になってく流れが凄い!
各キャラも個性が立ちつつ魅力的で素敵です!
此処からラストどうなるのか?
どう転ぼうと楽しみです! 御待ちしてます!!
>バブリシャスさん
読んでくれてありがとう。そして色々褒めてくれてありがとう(ノ∀`*)
そう、今んとこは下衆い人はいないけど…。次回「こいつ下衆くねえ?」と思う奴が出てくるかもしれないので先に謝ったおきます!
>さらすさん。サブキャラを好きになってもらえると、すごく嬉しい!魚住くんもきっとさらすさんが好きだよ!(なんだこの返信は)最終話までどうかお付き合いお願いしますっ