元宮 莉瀬(もとみや りせ)

俺の名前は元宮 涼介。
彼女いない歴=年齢の、高校3年生だ

元宮 涼介(もとみや りょうすけ)

こんな自己紹介は少し虚しくも感じるが
事実だからしょうがない

元宮 涼介(もとみや りょうすけ)

それはそうと、俺には二人の妹がいる

元宮 莉瀬(もとみや りせ)

…………

元宮 涼介(もとみや りょうすけ)

こいつは俺より一つ年下の妹、元宮 莉瀬。
高校2年生だ

元宮 涼介(もとみや りょうすけ)

兄の俺でもクラッとするくらい可愛くて、
おっぱいも結構デカイ

元宮 涼介(もとみや りょうすけ)

そして、スカートから伸びる綺麗な脚に、
細くて華奢な腰、キュッとしまった尻と、
スタイルも申し分無いんだが……

元宮 莉瀬(もとみや りせ)

ちょっと、バカ兄!

元宮 涼介(もとみや りょうすけ)

兄を兄とも思わぬこの呼び方。
これで性格が良ければ完璧なんだが……

元宮 莉瀬(もとみや りせ)

ねえ、聞いてんの?
邪魔って言ってんの!

元宮 涼介(もとみや りょうすけ)

えー、どけるのめんどくせえ……

元宮 莉瀬(もとみや りせ)

ったく、早くどいてよ!

元宮 涼介(もとみや りょうすけ)

キーキーうるせえなぁ

元宮 莉瀬(もとみや りせ)

は?
なんか言った?

元宮 涼介(もとみや りょうすけ)

何も言ってませーん

元宮 莉瀬(もとみや りせ)

ウザ……

元宮 涼介(もとみや りょうすけ)

どっこらしょっと!
はいはい、どけましたよ……っと

元宮 莉瀬(もとみや りせ)

何その言い方、むかつく

元宮 涼介(もとみや りょうすけ)

どいたんだから早く行けよ

元宮 莉瀬(もとみや りせ)

行く気なくした。
アンタのせい

元宮 涼介(もとみや りょうすけ)

あっそ

元宮 千雪(もとみや ちゆき)

二人とも……。
またケンカですか……?

元宮 涼介(もとみや りょうすけ)

こっちは二人目の妹、元宮 千雪。
末っ子で小学3年生だ

元宮 涼介(もとみや りょうすけ)

莉瀬とは違ってとても大人しく、
しかも頭が良くて素直で可愛い妹だ

元宮 涼介(もとみや りょうすけ)

千雪はつるぺたの美少女なので、
変な男に誘拐されないか
いつもヒヤヒヤしている

元宮 千雪(もとみや ちゆき)

おにぃ……?
ボクをじーっと見つめて、
どうかしましたか……?

元宮 涼介(もとみや りょうすけ)

いやいや。
お前は莉瀬に比べて、
いい子に育ったなと思ってさ

元宮 莉瀬(もとみや りせ)

何よそれ!
私へのあてつけ!?

元宮 千雪(もとみや ちゆき)

おねぇ……。
落ち着いてください……

元宮 莉瀬(もとみや りせ)

千雪は危ないから下がってて。
今日こそバカ兄を
蹴り飛ばしてやるんだから!

元宮 千雪(もとみや ちゆき)

お、おねぇ……。
暴力は良くありません……

元宮 涼介(もとみや りょうすけ)

血の気が多いなあ。
……あ、わかったぞ!

元宮 莉瀬(もとみや りせ)

何よ?

元宮 涼介(もとみや りょうすけ)

今日は二日目なんだろ?
それで妙にイライラし──


莉瀬は色白で長い脚を高く上げ、
こちらの顔面へ華麗に回し蹴りを決めた。

元宮 涼介(もとみや りょうすけ)

ぐふっ……

元宮 千雪(もとみや ちゆき)

おにぃ、鼻血が出ています……

元宮 莉瀬(もとみや りせ)

フンッ!
これで思い知った?

元宮 涼介(もとみや りょうすけ)

ホワイトの生地に、
ミントブルーのしましま……

元宮 千雪(もとみや ちゆき)

…………?


何のことかわからずに首をかしげる千雪をよそに、
莉瀬のスカートを真っ直ぐに指す。

元宮 涼介(もとみや りょうすけ)

そして中央には、
サテン地のピンクのリボン!


莉瀬は顔を真っ赤にして、両手でスカートを押さえた。

元宮 莉瀬(もとみや りせ)

み……見たの……?

元宮 涼介(もとみや りょうすけ)

見たっていうか、見えた

元宮 莉瀬(もとみや りせ)

死ね変態!
このバカ兄!!


再び莉瀬に豪快な蹴りを食らった。

……2連コンボで。

 第一話 
『告白』




──学校。

元宮 涼介(もとみや りょうすけ)

いつつ……

元宮 涼介(もとみや りょうすけ)

(莉瀬に蹴られた所がまだ痛むぜ……)

魚住 洋平(うおずみ ようへい)

なんだなんだ、どうした?
顔にアザなんか作って

元宮 涼介(もとみや りょうすけ)

こいつは魚住 洋平。
中学の時からの親友だ。
うちの妹たちのこともよく知っている。

元宮 涼介(もとみや りょうすけ)

莉瀬に顔面を蹴られた……。
家庭内暴力だ……

魚住 洋平(うおずみ ようへい)

はははっ、冗談よせよ。
莉瀬ちゃんがそんなこと
するわけないだろ

元宮 涼介(もとみや りょうすけ)

お前は莉瀬の本性を知らないんだ……

魚住 洋平(うおずみ ようへい)

はあ?

柚木 紗登奈(ゆずき さとな)

おはよう。
元宮くん、魚住くん

魚住 洋平(うおずみ ようへい)

よぉーっす

元宮 涼介(もとみや りょうすけ)

お、おはよう

柚木 紗登奈(ゆずき さとな)

ふふっ

元宮 涼介(もとみや りょうすけ)

この、クラスで一番可愛い子は……。
いや、校内でもトップクラスの可愛い子は
柚木 紗登菜さんだ

元宮 涼介(もとみや りょうすけ)

うちの莉瀬とは違って優しい性格で、
女らしくておしとやかだし……

元宮 涼介(もとみや りょうすけ)

勉強も出来て、運動神経も抜群で、
非の打ち所の無いパーフェクト美少女だ。
まさに俺の女神!!

魚住 洋平(うおずみ ようへい)

急に赤い顔して、気持ち悪りぃな……

元宮 涼介(もとみや りょうすけ)

う、うるせーバカッ!
ほっとけ!



──帰宅後。
ベッドで横になり、柚木さんのことを思い出していた。

元宮 涼介(もとみや りょうすけ)

(柚木さん、今日も可愛かった……)



コンコンッ

元宮 莉瀬(もとみや りせ)

ねえ、バカ兄……。
入るわよ

元宮 涼介(もとみや りょうすけ)

ん? なんだよ

元宮 莉瀬(もとみや りせ)

あのさ……。
バカ兄の友達の、
魚住さんっているでしょ?

元宮 涼介(もとみや りょうすけ)

ああ、洋平のことか

元宮 莉瀬(もとみや りせ)

今週の土曜日に会おうって
メールがきたんだけど……。
バカ兄は誘われた?

元宮 涼介(もとみや りょうすけ)

ええっ?
俺はそんな話、聞いてねえぞ

元宮 莉瀬(もとみや りせ)

そうなの?
どうしたんだろ、急に……

元宮 涼介(もとみや りょうすけ)

つーか、
お前らがアドレスを交換してたことすら
知らなかったんだが

元宮 莉瀬(もとみや りせ)

えっ……。
私と魚住さんがメアド交換してたら
おかしい?

元宮 涼介(もとみや りょうすけ)

おかしくはないけどさ。
いつの間に交換したんだろうと思って

元宮 莉瀬(もとみや りせ)

いつの間にって言われても……。
そんなの覚えてないわよ

元宮 涼介(もとみや りょうすけ)

覚えてない?

元宮 莉瀬(もとみや りせ)

魚住さんって、
うちによく遊びに来てたでしょ?

元宮 莉瀬(もとみや りせ)

その時に、
魚住さんから言われて
なんとなく交換したんだけど……

元宮 涼介(もとみや りょうすけ)

ふーん、そうだったのか……

元宮 涼介(もとみや りょうすけ)

(しかし洋平のやつ、
俺を無視して莉瀬だけ誘うとは
どういうつもりだ?)

元宮 涼介(もとみや りょうすけ)

(明日、学校で聞いてみよう)



──翌日、学校。

元宮 涼介(もとみや りょうすけ)

ちょっと莉瀬のことで
聞きたいんだけど……

魚住 洋平(うおずみ ようへい)

莉瀬ちゃんのこと?
なんだよ

元宮 涼介(もとみや りょうすけ)

あのさ……

柚木 紗登奈(ゆずき さとな)

おはよう、二人とも

元宮 涼介(もとみや りょうすけ)

あ、おはよう

魚住 洋平(うおずみ ようへい)

うっす

柚木 紗登奈(ゆずき さとな)

二人で何の話をしてたの?

元宮 涼介(もとみや りょうすけ)

いや、その……

魚住 洋平(うおずみ ようへい)

こっちの話だから

柚木 紗登奈(ゆずき さとな)

あっ……。
ごめんね、お話の邪魔しちゃって

元宮 涼介(もとみや りょうすけ)

いやいや、こっちこそごめん

元宮 涼介(もとみや りょうすけ)

(ここでは話しづらいな……。
授業が終わってから聞くか)




──放課後。

元宮 涼介(もとみや りょうすけ)

……という話を聞いたんだけど、
なんで莉瀬を誘ったんだ?

魚住 洋平(うおずみ ようへい)

そっか……。
莉瀬ちゃんって、何でもお前に話すんだな

元宮 涼介(もとみや りょうすけ)

そりゃ、まあ……。
兄妹だからな

魚住 洋平(うおずみ ようへい)

じゃあ、
お前には言っておく必要があるな

元宮 涼介(もとみや りょうすけ)

何をだ?

魚住 洋平(うおずみ ようへい)

俺さ……。
中学の時からずっと、
莉瀬ちゃんの事が好きだったんだ

元宮 涼介(もとみや りょうすけ)

ええっ?!
マジかっ!!

魚住 洋平(うおずみ ようへい)

マジだ

元宮 涼介(もとみや りょうすけ)

全然気づかなかった……。
どうりで、
うちによく遊びに来てたわけだ

魚住 洋平(うおずみ ようへい)

ずっと秘密にしてて悪かった。
打ち明けるタイミングを逃しちまって……

元宮 涼介(もとみや りょうすけ)

まあ、別に気にしてないよ

魚住 洋平(うおずみ ようへい)

そっか!
それなら良かったぜ!

元宮 涼介(もとみや りょうすけ)

……で。
莉瀬を誘った理由は?

魚住 洋平(うおずみ ようへい)

ああ、そうそう。
それなんだけど

魚住 洋平(うおずみ ようへい)

高校に入って3年間経っても
気持ちが変わらなければ、
莉瀬ちゃんに告白しようと決めてたんだ

元宮 涼介(もとみや りょうすけ)

まさか、
告白するために土曜日に誘ったのか?

魚住 洋平(うおずみ ようへい)

ああ、そういうことだ

元宮 涼介(もとみや りょうすけ)

うーん……

魚住 洋平(うおずみ ようへい)

なんだ?
俺が莉瀬ちゃんに告白することに
不満でもあんのか?

元宮 涼介(もとみや りょうすけ)

そうだな……。
正直、兄としては複雑な気持ちだ

魚住 洋平(うおずみ ようへい)

や、やっぱそうなのか……

元宮 涼介(もとみや りょうすけ)

でも。
他の男が莉瀬の彼氏になるくらいなら、
お前の方がずっといい

魚住 洋平(うおずみ ようへい)

そっか!
サンキュー!

元宮 涼介(もとみや りょうすけ)

じゃ、俺は余計な事しないで
静かに見守ってる。
頑張れよ!

魚住 洋平(うおずみ ようへい)

おう!



──土曜日。

元宮 莉瀬(もとみや りせ)

あの……。
バカ兄は、本当について来ないの?

元宮 涼介(もとみや りょうすけ)

俺は誘われてねーもん

元宮 莉瀬(もとみや りせ)

でも、私が魚住さんと二人きりで
会うのって、初めてだし……。
ちょっと緊張するんだけど

元宮 涼介(もとみや りょうすけ)

知ってるやつなんだから、
緊張する必要ないだろ

元宮 莉瀬(もとみや りせ)

そういう問題じゃないでしょ

元宮 涼介(もとみや りょうすけ)

ほら、そろそろ家を出ないと
待ち合わせの時間に遅れるぞ

元宮 莉瀬(もとみや りせ)

うん……。
じゃあ、行ってきます……

元宮 涼介(もとみや りょうすけ)

(背中を押したはいいものの、
莉瀬と洋平が上手く行くか心配だ……)

元宮 涼介(もとみや りょうすけ)

(そうだ!
こっそりついて行こう!)



待ち合わせの時間より少し遅れたため、
莉瀬は小走りで向かった。

元宮 莉瀬(もとみや りせ)

ハアッ、ハアッ……。
魚住さんっ!

魚住 洋平(うおずみ ようへい)

莉瀬ちゃん!
良かったー、来てくれたのか!

元宮 莉瀬(もとみや りせ)

お待たせしちゃってごめんなさい……

魚住 洋平(うおずみ ようへい)

気にしないでよ。
莉瀬ちゃんが来てくれただけで
すっげー嬉しいから

元宮 莉瀬(もとみや りせ)

は、はい……

魚住 洋平(うおずみ ようへい)

二人で遊ぶのが楽しみで、
昨日の晩は全然眠れなかったんだ!

元宮 莉瀬(もとみや りせ)

そ、そうだったんですか

魚住 洋平(うおずみ ようへい)

莉瀬ちゃんとデートできるなんて
夢みたいだよ!

元宮 莉瀬(もとみや りせ)

あはは……

元宮 涼介(もとみや りょうすけ)

(洋平って、好きな女に対しては
こんなこと言うのか。
悪いけど、聞いていて寒イボが……)

元宮 莉瀬(もとみや りせ)

えっと……。
これからどうしますか?

魚住 洋平(うおずみ ようへい)

じゃあ、ちょっと食事してから
服とか見て……



──数時間後。

元宮 涼介(もとみや りょうすけ)

(ふぅ……。
他人のデートをながめる事ほど、
退屈なモンはないな)

元宮 莉瀬(もとみや りせ)

(とりあえず、
莉瀬と洋平が上手くやれそうで良かった)

元宮 涼介(もとみや りょうすけ)

(問題は……。
告白してから、どうなるかだな)

元宮 莉瀬(もとみや りせ)

今日はありがとうございました

魚住 洋平(うおずみ ようへい)

こっちこそ!
付き合ってくれて、どうもありがとう!

元宮 莉瀬(もとみや りせ)

それじゃあ、夕飯の準備もあるし
もう帰りますね

魚住 洋平(うおずみ ようへい)

待って!


洋平が莉瀬の腕をつかんだ。

元宮 莉瀬(もとみや りせ)

えっ……。
な、なんですか?

魚住 洋平(うおずみ ようへい)

実は、莉瀬ちゃんに聞いて
欲しいことがあるんだ


莉瀬が瞳をキョトンとさせる。

元宮 莉瀬(もとみや りせ)

何か悩み事でもあるんですか?

元宮 涼介(もとみや りょうすけ)

(我が妹ながら、鈍感すぎる……)

魚住 洋平(うおずみ ようへい)

違うよ。
俺……中学の時から、
ずっと莉瀬ちゃんが好きだったんだ!

元宮 涼介(もとみや りょうすけ)

(よし、言った!)

元宮 莉瀬(もとみや りせ)

えっ……?

魚住 洋平(うおずみ ようへい)

だっ、だから俺と……。
付き合って欲しいんだ!

元宮 涼介(もとみや りょうすけ)

(莉瀬のやつ、
きっと顔を真っ赤にしてるだろうな。
どれどれ……)

元宮 莉瀬(もとみや りせ)

え、えーと……

元宮 涼介(もとみや りょうすけ)

(なんだ?
困った顔をしてるぞ?)

元宮 莉瀬(もとみや りせ)

実は私、好きな人がいて……

魚住 洋平(うおずみ ようへい)

…………!!!

元宮 涼介(もとみや りょうすけ)

(俺が知らない間に、
莉瀬に好きな男が出来ていただと!?)

元宮 涼介(もとみや りょうすけ)

(その男……絶対に許さん。
見つけ次第八つ裂きにしてくれる)

元宮 莉瀬(もとみや りせ)

だから、その……。
魚住さんとは、お付き合いできません。
ごめんなさい……

魚住 洋平(うおずみ ようへい)

…………

元宮 涼介(もとみや りょうすけ)

(うわあ……。
こんな結果になると知っていたら、
背中を押さなかったのに……)

元宮 涼介(もとみや りょうすけ)

(本当にスマン、洋平……)

魚住 洋平(うおずみ ようへい)

じゃ、じゃあさ……っ

元宮 莉瀬(もとみや りせ)

えっ……?



──帰宅後。


莉瀬は、ぬいぐるみを抱いたままベッドに寝転がった。

元宮 莉瀬(もとみや りせ)

(『気持ちが変わるまで、
ずっと待ってる』って言われても……。
そんなの困る)

元宮 莉瀬(もとみや りせ)

(私はバカ兄が好きって……。
ううん、お兄ちゃんが好きって伝えれば
諦めてくれるかもしれないけど……)

元宮 莉瀬(もとみや りせ)

(そんなこと言ったら、
絶対お兄ちゃんと魚住さんの
仲が悪くなるに決まってるよ)

元宮 莉瀬(もとみや りせ)

(私のせいで、
お兄ちゃんが親友を失くすなんてヤダ)

元宮 莉瀬(もとみや りせ)

ヤダよぅ……


ぬいぐるみをギュッと抱きしめて、
ベッドの上をゴロゴロと転がる。

元宮 千雪(もとみや ちゆき)

そのぬいぐるみ……。
いつの間に買ったんですか……

元宮 莉瀬(もとみや りせ)

あ、あんたこそ
いつの間に入って来たの?

元宮 千雪(もとみや ちゆき)

だから、そのぬいぐるみ……

元宮 莉瀬(もとみや りせ)

これ?
今日買ったのよ

元宮 莉瀬(もとみや りせ)

(本当は、
魚住さんが買ってくれたんだけど……)

元宮 千雪(もとみや ちゆき)

ズルイです……。
ボクも欲しいです……

元宮 莉瀬(もとみや りせ)

…………

元宮 莉瀬(もとみや りせ)

いいよ、千雪にあげる

元宮 千雪(もとみや ちゆき)

えっ……。
本当にくれるんですか…?

元宮 莉瀬(もとみや りせ)

うん……

元宮 千雪(もとみや ちゆき)

嬉しいです……。
ありがとうございます、おねぇ……!

元宮 莉瀬(もとみや りせ)

(魚住さんとの思い出が詰まってる物なんて
持ってられないよ……)


──翌朝。

元宮 涼介(もとみや りょうすけ)

(洋平、すげえ落ち込んでるだろうなあ。
洋平の気持ちを考えると、
朝飯が喉に通らないぜ……)

元宮 涼介(もとみや りょうすけ)

おかわり

元宮 莉瀬(もとみや りせ)

ちょっ……!
朝から3杯も食べるの?
いい加減にしなさいよっ

元宮 涼介(もとみや りょうすけ)

うるせえ!
ヤケ食いしてるのは
誰のせいだと思ってるんだ

元宮 莉瀬(もとみや りせ)

はぁ?


千雪が、スッと右手を挙げた。

元宮 千雪(もとみや ちゆき)

あの……。
ちょっといいですか…?

元宮 莉瀬(もとみや りせ)

何よ?

元宮 千雪(もとみや ちゆき)

今日は予告していた通り、
お友達の家に泊まりますが……

元宮 莉瀬(もとみや りせ)

あっ、そういえば
私も泊まりの予定だったんだ

元宮 涼介(もとみや りょうすけ)

そうか、今夜は俺一人か

元宮 千雪(もとみや ちゆき)

一人でお留守番できますか……?

元宮 涼介(もとみや りょうすけ)

ガキのお前に心配されたかねーよ!

元宮 千雪(もとみや ちゆき)

むぅ……。
ボクは子供じゃありません……

元宮 莉瀬(もとみや りせ)

バカ兄なんかより、
千雪の方がずっと
しっかりしてるわよね?

元宮 涼介(もとみや りょうすけ)

おい、俺は小学生に劣るっていうのか

元宮 莉瀬(もとみや りせ)

そうね

元宮 涼介(もとみや りょうすけ)

テメェ……

元宮 涼介(もとみや りょうすけ)

(そうだ。
今夜は莉瀬が家にいないなら、
洋平を泊めてなぐさめてやるか)







ドンヨリ……

魚住 洋平(うおずみ ようへい)

はあ……

元宮 涼介(もとみや りょうすけ)

(うわあ……。
予想した通り、
メチャクチャ落ち込んでるな)

元宮 涼介(もとみや りょうすけ)

よ、よう。
おはよう洋平!

魚住 洋平(うおずみ ようへい)

うーっす……

元宮 涼介(もとみや りょうすけ)

あー……。
い、いい天気だなあ

魚住 洋平(うおずみ ようへい)

そうだな……

元宮 涼介(もとみや りょうすけ)

そ、そういえばっ。
今日は家族がみんな泊まりに行くから、
家に俺一人なんだよ

魚住 洋平(うおずみ ようへい)

……それが?

元宮 涼介(もとみや りょうすけ)

良かったら泊まりに来ないか?

魚住 洋平(うおずみ ようへい)

いや、いい……

魚住 洋平(うおずみ ようへい)

それよりも、悪いけど今日は
俺に話しかけないでくれ……

元宮 涼介(もとみや りょうすけ)

あ、ああ

元宮 涼介(もとみや りょうすけ)

(重症だな……)



──昼休み。

元宮 涼介(もとみや りょうすけ)

昼だぞー。
飯、食わなくていいのか?

魚住 洋平(うおずみ ようへい)

食欲が無い……。
ほっといてくれ……

元宮 涼介(もとみや りょうすけ)

(やれやれ、仕方ない。
屋上に行って一人で食べるか)

元宮 涼介(もとみや りょうすけ)

モグモグ……

柚木 紗登奈(ゆずき さとな)

今日は一人だよね?

元宮 涼介(もとみや りょうすけ)

えっ……。
柚木さん!?

柚木 紗登奈(ゆずき さとな)

一緒に食べてもいいかな?

元宮 涼介(もとみや りょうすけ)

も、もちろんっ。
でも……急になんで?

柚木 紗登奈(ゆずき さとな)

だって……。
元宮くんって、
いつも魚住くんと一緒にいるでしょ?

柚木 紗登奈(ゆずき さとな)

話しかけたくても、
全然入る隙が無かったから
今日がチャンスかなって思ったの

元宮 涼介(もとみや りょうすけ)

(うわああああ!
笑顔がメチャかわいいっ)

元宮 涼介(もとみや りょうすけ)

(俺の身に、
今まさに奇跡が起こっている!)




その後、柚木さんと談笑する内に、
将来の夢の話になった。

柚木 紗登奈(ゆずき さとな)

私ね、保育士さんになりたいんだ

元宮 涼介(もとみや りょうすけ)

へえー。
優しい柚木さんにぴったりだな

柚木 紗登奈(ゆずき さとな)

そ、そうかな?
ありがとう

元宮 涼介(もとみや りょうすけ)

でも、なんで保育士さんになりたいと
思ったんだ?

柚木 紗登奈(ゆずき さとな)

私、子供が大好きなんだ

柚木 紗登奈(ゆずき さとな)

毎日小さい子のお世話が出来るなんて、
とっても幸せだと思うの

元宮 涼介(もとみや りょうすけ)

(子供好きの世話焼きタイプなのか。
柚木さんらしいな……)

元宮 涼介(もとみや りょうすけ)

(優しい性格で、頭が良くて、
運動も出来て、しかも可愛くて。
好きにならない方が無理だよな)


柚木さんの胸をチラッと見る。

元宮 涼介(もとみや りょうすけ)

(その上、おっぱいも
柔らかそうだし……)

柚木 紗登奈(ゆずき さとな)

元宮くん?
どこ見てるの?


柚木さんが顔を赤くして、
恥ずかしそうに胸を隠している。

元宮 涼介(もとみや りょうすけ)

(しまった!
おっぱいを見てることに気づかれた!)

元宮 涼介(もとみや りょうすけ)

え、えーと……。
襟にゴミが付いてるのを、
教えてあげようと思って……

柚木 紗登奈(ゆずき さとな)

あっ……


柚木さんが制服の襟を手で払った。

柚木 紗登奈(ゆずき さとな)

勘違いしちゃって、ごめんね?

元宮 涼介(もとみや りょうすけ)

ははっ、別にいいよ

元宮 涼介(もとみや りょうすけ)

(危なかった……)

──あれから数週間。

昼休みを一緒に過ごしたことがきっかけとなり、
以前に比べて柚木さんととても仲良くなっていた。

元宮 涼介(もとみや りょうすけ)

……って、
莉瀬が食事中に言い出してさ

柚木 紗登奈(ゆずき さとな)

あははっ!
何それ、おもしろーい

元宮 涼介(もとみや りょうすけ)

本当、バカな妹で困るよ。
小学生の千雪の方が
よっぽど頭いいんだよな

柚木 紗登奈(ゆずき さとな)

元宮くんって、よく妹さんの話するよね

元宮 涼介(もとみや りょうすけ)

え、そうかな?
そんなつもりは無いけど……

柚木 紗登奈(ゆずき さとな)

妹さんと仲良しなんだね

元宮 涼介(もとみや りょうすけ)

はあ?
それは無い無い!
莉瀬とはケンカしてばっかだから

柚木 紗登奈(ゆずき さとな)

ふうーん……

元宮 涼介(もとみや りょうすけ)

な、なんで笑ってるんだよ

柚木 紗登奈(ゆずき さとな)

ん?

柚木 紗登奈(ゆずき さとな)

元宮くんと、
こんな風に話せるようになるなんて
嬉しいなって思ってたの

元宮 涼介(もとみや りょうすけ)

えっ……。
嬉しい?

柚木 紗登奈(ゆずき さとな)

前は、元宮くんって……。
私に対して何か緊張してる感じ
だったじゃない?

元宮 涼介(もとみや りょうすけ)

(そりゃあ、憧れの女の子だから……)

柚木 紗登奈(ゆずき さとな)

今は友達みたいに接してくれるから、
すっごく嬉しい!

元宮 涼介(もとみや りょうすけ)

はは……友達か

柚木 紗登奈(ゆずき さとな)

どうして苦笑いするの?

元宮 涼介(もとみや りょうすけ)

男としては見てくれないのかな……と、
思ってさ

柚木 紗登奈(ゆずき さとな)

…………


柚木さんは瞳を大きく見開き、驚いたような顔をした。

元宮 涼介(もとみや りょうすけ)

(何を言ってんだ俺!
柚木さんがビックリしてるだろ!!)

元宮 涼介(もとみや りょうすけ)

いっ、今のは聞かなかったことに……

柚木 紗登奈(ゆずき さとな)

……ちゃんと見てるよ。
男の子として

元宮 涼介(もとみや りょうすけ)

へっ?

柚木 紗登奈(ゆずき さとな)

好きじゃない男の子に、
わざわざ話しかけたりすると思う?

元宮 涼介(もとみや りょうすけ)

そ、それってどういう意味?

柚木 紗登奈(ゆずき さとな)

私の彼氏になって欲しい……
なんて言ったら、迷惑かな?

元宮 涼介(もとみや りょうすけ)

なんだよ、それ……。
罰ゲームか?

柚木 紗登奈(ゆずき さとな)

元宮くんの優しいところ、
いいなって思ってたのに……。
本気にしてくれないんだ?

元宮 涼介(もとみや りょうすけ)

じ、冗談ばっか言ってたら、
本気にしちゃうけどいいのか?

柚木 紗登奈(ゆずき さとな)

冗談じゃないよ

柚木 紗登奈(ゆずき さとな)

それとも元宮くんは、
好きな人がいるの……?

 

一瞬だけ、莉瀬の顔が頭に浮かんだ。

元宮 涼介(もとみや りょうすけ)

(なんで今、莉瀬を思い出したんだ?
アイツは関係ないだろ)

元宮 涼介(もとみや りょうすけ)

柚木さん以外に、好きな人なんかいない

柚木 紗登奈(ゆずき さとな)

えっ……

元宮 涼介(もとみや りょうすけ)

俺……。
柚木さんのこと、ずっと好きだったんだ

柚木 紗登奈(ゆずき さとな)

本当?
……嬉しい


柚木さんの瞳から涙が零れた。

元宮 涼介(もとみや りょうすけ)

なんで泣くんだ!?

柚木 紗登奈(ゆずき さとな)

好きな男の子が、
私の事を好きだって言ってくれたのが、
すごく嬉しくて……

元宮 涼介(もとみや りょうすけ)

(柚木さん……。
健気で可愛いな……)


柚木さんをそっと抱きしめる。

元宮 涼介(もとみや りょうすけ)

俺で良かったら、
彼氏にしてくれないか?

柚木 紗登奈(ゆずき さとな)

ありがとう……。
ずっと一緒にいようね…

元宮 涼介(もとみや りょうすけ)

ああ……

こうして柚木さんは、俺の彼女になったのだった。




■第二話につづく■

第一話 『告白』

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