五人の盗賊たちは互いに顔を見合し、やがて一人がおずおずと手を上げた。
ルーガル! 怪我は治ったのか。
う・・・
タイヘン、トウゾクがメをサましマシタ!
おい、何しやがる! おまえのカミナリで意識を取り戻しちまったぞ!
そのためにやったことだ。意識がなければ話もできないだろう?
話って?
答えろ。通路に矢の罠を仕掛けたのは誰だ?
五人の盗賊たちは互いに顔を見合し、やがて一人がおずおずと手を上げた。
わ、私・・・だけど。
そうか。痛かった。
えっと・・・それだけ?
ああ。言いたいことは、相手が正気を保ってる内に伝えなければ意味がないだろう?
正気を、って・・・?
五人か。面倒だ、全員まとめてかけてしまおう。
荒らかなる者、くるめく者よ、
勇気と力もたらす者よ、
意思は不要と我が敵は言う。
四肢が供物と我が手に入る。
——操心幻〈ミライユ〉
っ、う――
山を下り、商人ギルドの宿まで行け。アジトの場所を教えて、盗品はすべて返すと言え。さあ、さっさと歩けよ。すべて済んだら魔法は解ける。
はい・・・
わかりました・・・
ルーガルに命じられた盗賊たちは、五人一列に並んで歩き出した。
よろよろと不安定な足取りで、洞窟の出口へと消えていく。
・・・今のは?
あー、人の心を操って思い通りに動かす魔法だな。
そんなことまでできるのか。魔法って、何が飛び出るかわからないな。
ちなみに精神に干渉する魔法は、この辺りじゃ法で禁止されてる。
・・・・・・。
さてと、盗賊騒ぎはこれで解決だな。
たった今別の事件が起こったけどな。
宿に戻ってはタイムロスだ。このまま山の反対側に下りてしまおう。ジャハへ行くのに、その方が早い。
ジャハ! ですって??
おまえら、そんなとこ目指してんのか? 今ジャハは、魔女だか何だかに占領されて、町には入れねえってうわさだぞ。
ヤムカ、何か知ってるの? その話詳しく――
う、痛っ!
突然足首に痛みが走った。かがんで触ってみると、はれている。どこかでひねったらしい。
うわ、やっちゃった。氷で滑ったときか? それとも剣を投げた体勢が悪かったかな。
怪我をしたのか? 痛そうだ。
おいおい、大丈夫かよ。
うん、大丈夫・・・あっでも。
あのさ、二人って、回復魔法は使える? もし使えるなら、助けてほしいんだけど・・・
何本もの矢に射抜かれたルーガルが、こうしてピンピンしてるのだ。
軽い怪我くらい、すぐに治せちゃうんじゃないだろうか。期待の目を二人に向けてみるが・・・。
・・・・・・。
あー、そうだなあ・・・
あれ? 反応がイマイチ。
回復魔法なんて、魔力めちゃくちゃ食うんだぜ? オレは自分の人形動かす以外は、日常的な魔法しかできねえっての。そこの病み上がり契約魔法師に頼めよ。
いつも精霊が勝手にやるから、自分でやったことはないんだ。呪文はわかるが加減がわからず、サービスしてしまうかもしれない。足が一本増えてもいいか?
よくない。
・・・さっきの盗賊に、回復魔法使う奴が!
いたけど、もうとっくに洞窟から出ちまってるな。
そんなあ!
ヤムカの言葉に、僕はがっくり肩を落とした。
どうやら、このまま足を引きずって、ジャハまで行くことになりそうだ。
アナタもヤムカのカタにノりマス?
乗せねえよ。