ベシワク

ルーガル! 怪我は治ったのか。

カラス

う・・・

グージィ

タイヘン、トウゾクがメをサましマシタ!

ヤムカ

おい、何しやがる! おまえのカミナリで意識を取り戻しちまったぞ!

ルーガル

そのためにやったことだ。意識がなければ話もできないだろう?

ベシワク

話って?

ルーガル

答えろ。通路に矢の罠を仕掛けたのは誰だ?

五人の盗賊たちは互いに顔を見合し、やがて一人がおずおずと手を上げた。

わ、私・・・だけど。

ルーガル

そうか。痛かった。

えっと・・・それだけ?

ルーガル

ああ。言いたいことは、相手が正気を保ってる内に伝えなければ意味がないだろう?

正気を、って・・・?

ルーガル

五人か。面倒だ、全員まとめてかけてしまおう。

ルーガル

荒らかなる者、くるめく者よ、
勇気と力もたらす者よ、
意思は不要と我が敵は言う。
四肢が供物と我が手に入る。
——操心幻〈ミライユ〉

っ、う――

ルーガル

山を下り、商人ギルドの宿まで行け。アジトの場所を教えて、盗品はすべて返すと言え。さあ、さっさと歩けよ。すべて済んだら魔法は解ける。

カラス

はい・・・

わかりました・・・

ルーガルに命じられた盗賊たちは、五人一列に並んで歩き出した。
よろよろと不安定な足取りで、洞窟の出口へと消えていく。

ベシワク

・・・今のは?

ヤムカ

あー、人の心を操って思い通りに動かす魔法だな。

ベシワク

そんなことまでできるのか。魔法って、何が飛び出るかわからないな。

ヤムカ

ちなみに精神に干渉する魔法は、この辺りじゃ法で禁止されてる。

ベシワク

・・・・・・。

ルーガル

さてと、盗賊騒ぎはこれで解決だな。

ヤムカ

たった今別の事件が起こったけどな。

ルーガル

宿に戻ってはタイムロスだ。このまま山の反対側に下りてしまおう。ジャハへ行くのに、その方が早い。

グージィ

ジャハ! ですって??

ヤムカ

おまえら、そんなとこ目指してんのか? 今ジャハは、魔女だか何だかに占領されて、町には入れねえってうわさだぞ。

ベシワク

ヤムカ、何か知ってるの? その話詳しく――

ベシワク

う、痛っ!

突然足首に痛みが走った。かがんで触ってみると、はれている。どこかでひねったらしい。

ベシワク

うわ、やっちゃった。氷で滑ったときか? それとも剣を投げた体勢が悪かったかな。

ルーガル

怪我をしたのか? 痛そうだ。

ヤムカ

おいおい、大丈夫かよ。

ベシワク

うん、大丈夫・・・あっでも。
あのさ、二人って、回復魔法は使える? もし使えるなら、助けてほしいんだけど・・・

何本もの矢に射抜かれたルーガルが、こうしてピンピンしてるのだ。
軽い怪我くらい、すぐに治せちゃうんじゃないだろうか。期待の目を二人に向けてみるが・・・。

ルーガル

・・・・・・。

ヤムカ

あー、そうだなあ・・・

ベシワク

あれ? 反応がイマイチ。

ヤムカ

回復魔法なんて、魔力めちゃくちゃ食うんだぜ? オレは自分の人形動かす以外は、日常的な魔法しかできねえっての。そこの病み上がり契約魔法師に頼めよ。

ルーガル

いつも精霊が勝手にやるから、自分でやったことはないんだ。呪文はわかるが加減がわからず、サービスしてしまうかもしれない。足が一本増えてもいいか?

よくない。

ベシワク

・・・さっきの盗賊に、回復魔法使う奴が!

ヤムカ

いたけど、もうとっくに洞窟から出ちまってるな。

ベシワク

そんなあ!

ヤムカの言葉に、僕はがっくり肩を落とした。
どうやら、このまま足を引きずって、ジャハまで行くことになりそうだ。

グージィ

アナタもヤムカのカタにノりマス?

ヤムカ

乗せねえよ。

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