葉栗を救出し、シャドーが融合した巨人を倒した敬介達は、夕暮れ灯台へと戻っていた。

少し離れたところには、倉間八雲もいる。

第三試練に挑んだ全ての者が戻っているわけではなく、敬介は辺りを見回す。

何人か見当たらないな。

そうだね。
半分くらいの人たちがいない。

一方、仁や雪らも辺りを見回す。

蓮がいねぇぞ。

たしかにどこにもいないっすね。

きっと、驚かせようと思って隠れてるのよ。
連が負けるわけないもの。

それから少しの時間が経つと、太陽の光が少しずつ出てきて、辺りも明るく照らされ始める。

…………。

そして、試練の監督者である鈴香が灯台から出てきて、試練の受験者たちを目の前へと並ばせる。

えー、皆さん!
第三試練お疲れ様でした。

まず、第三試練の結果から話します。

胸ポケットからメモを取り出し、そこに書かれているであろう情報を読み上げていく。

第三試練の受験者全14名。
うち、ここにいる8名は条件クリアにより合格。
5名は途中リタイアのため、協会の人間が保護し、失格とする……。

ここまで説明すると、鈴香は少し間をおいてから続きを話し始める。

そして、残る1名である並桐蓮は第三試練開始直後に行方不明。
呪符の森から突如として消え去ったため、協会は死亡と断定。
以上。

え?

蓮さんが、死んだ?

そんなわけあるかっ!!

嘘ではないわ。
森を監視していた協会の者が、突如彼の光力を探知できなくなり、その周辺を捜索したが発見できなかった。

嘘でしょ……。

まぁ、シャドーがうじゃうじゃいる森だからね。
毎回、こういうことは起きるもんなんですよ。
あまり気にしないようにしてくださいね。

受験者たちが驚く中、笑いながら慰めようとする。

てめぇ!!

仁は叫びながら、鈴香に詰め寄り、とてつもない形相で睨みつける。

あら、どうしました?

よくも笑ったな!!

そんなにムキになることないじゃないですか。

仁、やめろ!!

敬介が2人の間に入り、仁を落ち着かせようとする。

そして、自身も溜まっていた怒りを抑えながら冷静に話し出す。

なぁ、なんであんたは笑ってるんだ。
本当に死んでしまったなら、言い方があるだろ。
こいつら友達だったんだぞ!!

友達?

きょとんとした表情をする鈴香だったが、下を向き笑いをこらえる素振りを見せた。

あの女……。

様子をうかがう周囲の者たちも、鈴香の情緒に違和感を感じている。

何がおかしい?

てめぇら、遊びにきてんのか?

光術士になるってのは、そういうことなんだよ。
仲間が死んだくらいで、ギャアギャアとわめくなよ。

全ての受験者に聞こえるように大声で叫んだ。

その感情的だが、的を得ているような言葉に辺りは静まり返った。

ふざけんなっ!!

待てっ!!

大きくはないが、どこかよく通る声が仁の叫びを遮った。

圧倒され、殴りかかろうとしていた仁も動きを止める。

鈴香、そう彼らを煽るな。

後藤さん……。
この認証試練は、私に任せてもらえるのではないんですか?

君の光術士としての考えも分かるが、ここは下がれ。

後藤がそう命じると、鈴香は足取りをふらつかせ、時々笑いながら灯台の中へと戻って行った。

さて、君たちのことを不快にする発言について、代わりに詫びよう。
並桐蓮については、別途連絡することにする。

後藤が受験者たちへ軽く頭を下げると、仁と敬介も少し後ずさった。

…………。

…………。

…………。

今回急な認証試練となってしまったが、各々が積み上げてきた光術士としての力を存分に発揮したことだと思う。

…………。

…………。

そして、今日からは正式な光術士として日々精進して生きることだ。

…………。

…………。

…………。

これにて、認証試練を終了とする。

認証試練が終了し、正式な光術士として認められた敬介達であったが、並桐連の死を告げられたことにより、心の底から喜ぶことはできない。

むしろ、光術士としての本当の恐ろしさに触れたようで、誰もが生き残れるのが当たり前ではないことだと実感したのであった。

第3章--認証試練編--(95話)-試練が終わる時-

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