『ロッカーに住む女』

 ――ナンチャイの職場でのお話。

ナンチャイ

そーなんすか、
へぇ~そうなんすね。
知らなかったっす。

臨時の上司

そもそもロッカー点検てのは
グダグダグダグダ……

ナンチャイ

そーなんすか、
へぇ~そうなんすね。
知らなかったっす。

臨時の上司

つまりロッカー点検てのは
グダグダグダグダ……

ナンチャイ

そーなんすか、
へぇ~そうなんすね。
知らなかったっす。

 今日は防犯上の関係性で、上司である管理者が違う支店の人と入れ替わる日だった。



 そして本日はロッカー点検の日。職員がロッカーにとんでもない物を隠してないか、抜き打ちである恐ろしい点検なのだ。ナンチャイはロッカーへの途上で、その臨時の上司のうんちくを軽く聞き流していた。



 その上司は悪い人ではなかったが、うんちくが耳障りな方で(点検にきているからしょうがないと言えばしょうがないですが)、ロッカー点検の意義を饒舌に語っていた。

ナンチャイ

ダリーな。
いつもなら予定調和感が
漂うのに長くなりそう……

臨時の上司

そしたら始めましょうか。

ナンチャイ

は~い。

臨時の上司

あ~ゴチャゴチャしてるねぇ。
普段から整理整頓が
どうのこうの――

ナンチャイ

ハッ!?

臨時の上司

!?
どうしたんだね?

ナンチャイ

いや、
なんでもありません。

 ナンチャイに衝撃が走った。



 流石に横領した金とかがあるわけではなかったし、整理整頓はされてないが、ぶっちゃけやましい物など一つもない。点検は下の方から始まり少しづつ上に向かってきている。臨時の上司は言葉どおりに点検を入念に行っている。実に勤勉で真面目な様子だ。整理整頓が行き届いてないせいか、点検は遅々として進んでいない。



 そしてナンチャイの目に否応なしに飛び込んできた物――それは……

ハコオンナ

だった。

 『ハコオンナ』とは、ボードゲーム好きなナンチャイ(オフ会来た人は、皆で遊んだね♪ 楽しかったっす)が持つ、ホラー系のボードゲームである。仕事終わりに数人で集まって楽しもうと目論見持ってきていたのだ。

 その小ぶりの箱に描かれたイラストは、ホラーそのもので、でかでかと『ハコオンナ』と意味分からん言葉が書かれている。それはそれは不気味でおよそ職場のロッカーにふさわしくない代物だった。

イメージっす。気になる人は調べましょう。超面白いっすよ♪

ナンチャイ

うひぃ~!!
なんちゅ~絵面!
ロッカーにこれは
意味分からん過ぎる!
こんなもん発見されたら
何言われるか
分かったもんじゃないぞ~。
でももう絶対みつかるぅ~!

臨時の上司

まぁもちろん大丈夫だけど
もうちょっと
整理整頓した方が――

ナンチャイ

うおぉ~!
やっぱ見つかる~
ってか見えるに
決まってるや~ん!

臨時の上司

!?

 見付かったー!
 当然と言えば当然の結果。
 あー、めんどくさい。
 何かお説教されるのか。

臨時の上司

…………

臨時の上司

そもそも整理整頓は――

ナンチャイ

まさかのスルー!!
指導するどころか
自分のスペックを越える
逸品ゆえのスルー!
問い質そうと試みることも
遠ざける雰囲気!
よ、良かったー!

 もしくは私が人には言えぬレベルの怪しい趣味をお持ちとでも考えたのだろうか。そうならこの上司は優しさらしきものでスルーしてくれたんだろうか。絶対元の職場で何か言われそうだが、ゴタゴタがなくてなんしかラッキー! って話でした。

特にこのイラストに意味ないっす。

第十五話 『ロッカーに住む女』

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