緋物東中学校(あけものひがしちゅうがっこう)は鮫野木淳の母校だ。青春らしき思い出も悲しい思い出も詰まった場所でもある。

 卒業してから一度も足を運んでいなかった。縁もない限り行く理由もない。

 近づくうちに知っている道になっていく。しかし、高校性になってから二年間も経って随分と変わった気がする。

 二年経も経っているからだろうか知らない建物があったりしている。道筋は変わりのないようだが若干、違和感を覚える。

 違和感に気づきながらも緋物東中学校に向かった。

 しばらくして遠くに緋物東中学校が見える所まで来た時、鮫野木はある事に気づいた。

 そう言えば野沢心の着ていた制服って緋物東中の制服だっけ? 違ったような気がする。

 制服の事で雪音に聞こうとしたら先に雪音が緋物東中学校を見ながら鮫野木に疑問を投げる。

小斗雪音

ねぇ、淳くん。何かおかしくない?

鮫野木淳

おかしいって何が

小斗雪音

私の知っている学校じゃないよ

 何か思ったのか雪音は駆け出して緋物東中学校に向かった。

 俺は急いで追いかけた。

 緋物東中学校の前で雪音は複雑な表情で校舎を見つめていた。

小斗雪音

…………

鮫野木淳

これは……なんだ

 目の前にある中学校は二人の知る緋物東中学校ではなかった。中学校の建つ場所は同じなのだが記憶と全く別の中学校がそこに建っていた。

 何処か古い作りに見える三階建ての校舎だった。校門は開いており誰でも入ることが出来る。

 名前を確認すると表紙にカゴメ中学校と書かれていあった。

鮫野木淳

カゴメ中学校? 何だ……緋物東中じゃないのか

鮫野木淳

本当にここは緋物市なのか?

 野沢心を追って緋物東中学校に向かったつもりだが別の謎に出会ってしまった。本来と違う建物がある事に鮫野木と雪音は動揺を隠せなかった。

 校門の前で立ち止まっている二人に追いついた紗良は質問をする。

六十部紗良

二人共、どうしたの鳩が豆鉄砲を食ったような顔をしているわ

鮫野木淳

そんな顔をしたい時もあるのさ

鮫野木淳

そこを見てくれ緋物東中じゃなくって俺の知らないカゴメ中学校だ。校舎も見たこともないしどうなっているんだか

 鮫野木は紗良に校門にある表紙を見せた。表紙を確認した紗良は考えを巡らせた。

 俺達の居る裏の世界と俺達が居た緋物市に似た世界だと改めて認識させられた。

 恐らくだが元の世界である緋物市と裏の世界はズレがあるんだろう。廃墟だった所が家になっていた点もある。このカゴメ中学校もそのズレと思うしかない。

鮫野木淳

俺はここに野沢心が居ると思うんだ。勘だけど自身はある

 俺の勘だがズレがある場所に何かありそうで気になっている。

 鮫野木の意見を聞いて紗良はクスリと笑った。

六十部紗良

あら、私も同じ事を考えていたの

六十部紗良

ここには何かあるわ。鮫野木くんと同じ勘だけどね

 紗良も同じ事を考えていた。俺は勇気を踏み出して目の前の謎に立ち向かう決心をした。

鮫野木淳

そうみたいですね。調べる価値はありそうだ

 俺は頷いた。

 恐らくカゴメ中学校に野沢心が居る。

 鮫野木と紗良はこのまま野沢心を探しに行こうとカゴメ中学校に足を入れようとした。ただ一人、小斗雪音だけは引き止める。

小斗雪音

駄目、行かないで

鮫野木淳

ユキちゃん……

小斗雪音

なんだが怪しいよ。前みたいにムラサキって人が居たらどうなるか分からないよ

 野沢心に会いに行く時に出会ったムラサキと名乗る人が待ち構えるのではないかと心配していた。

 カゴメ中学校も野沢家も元の世界では別の建物だ。

 もし、元の世界と別の建物に近づくとムラサキが来てしまうのではないのか。そう思いついてしまった。

 何かあった訳ではないが存在が恐ろしいと思えた人に会いたくはない。

小斗雪音

それにここに野沢ちゃんが居るとは限らないじゃない

小斗雪音

私は嫌な予感がするの。ここに入ってはいけない

 ユキちゃんの気持ちが分かる。

 恐ろしい思いは誰だってしたくない。出来れば誰かが解決してくれるのを待ったほうがいい。

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