……。


 ここでの生活は、夢だったのだろうか。

 朽ち果ててしまっている小さな家を、そっと見上げる。

 門を守る二本の木はそのままだから、おそらくここが、小さな少年、尤(ゆう)が一人淋しく暮らしていた場所。

 必要があったとはいえ、その尤を欺いていたのは、自分。

……。


 溜め息を、捺(なつ)はどうにか飲み込んだ。

pagetop