……。

 月が無い世界は、どのような世界だろうか?

 夜空に浮かぶ満月を見上げ、書棚から天文の本を取り出す。

 月が無ければ、地球の自転は今よりもずっと速く、風が吹きすさぶ荒れた惑星になるらしい。

……。


 月があって、良かった。

 穏やかな世界を柔らかく照らす月に、尤(ゆう)はそっと頭を下げた。

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