棚から取り出した本に挟まれていた紙片を、そっと引き抜く。

 紙片には何も書かれていないから、この紙片は栞代わりに使われていたもの。

これ、どこに、挟まってた?

 手の中の本をぱらぱらとめくる。

……。

 読めない文字の本だから、この本は父の本。

……。

 怒られる。

……。


 温かくなった心に、尤(ゆう)は小さく微笑んだ。

第12話 父の本に、触れてはいけない

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