うーん……。


 音が調子外れなのは、長い間放置していた所為。

 自室の風琴に小さな指を置き、尤は深く息を吐いた。

 小さい頃通っていた音楽教室は、治安と尤自身の体調の悪化で通うのを止められてしまった。

……。

 今も、あの山茶花の生け垣はあるのだろうか。聞こえなくなっていく音に、尤は再び溜め息を吐いた。

第4話 久し振りに弾いてみる

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