千歳

ギャー

那由多

ただいま

千歳

那由多、ひとりなの?

那由多

この男は起きないわよ

那由多

夢から覚めない

那由多

夢の中で死んでしまったのだから

千歳

こいつ、こんな顔してたっけ?

…………

那由多

ええ、こういう顔をしていたわ

那由多

さて、メニュー表を水に流しましょ

千歳

うん

那由多

メニュー表に書かれているのは、貴方の死因だったのよ……ナツキさん

那由多

ジャーっと

那由多

悪い夢は水に流しましょう

那由多

これで、良いのね?

那由多

タツキくん

タツキ

うん、ありがとう。那由多ちゃん……

那由多

悪いわね、トイレで待たせて

千歳

待合室ないから

タツキ

平気だよ

千歳

私は平気じゃない、ずーっと我慢していたんだから

千歳

もれちゃう

タツキ

幽霊なのに?

千歳

あ、幽霊だから大丈夫だった

那由多

千歳さん、邪魔だから、トイレ行ってて

千歳

はい

那由多

騒がしくてごめんね

那由多

もう一度聞く、これで良かったのね?

タツキ

オレが死んだあとも、兄貴はオレが生きてるって信じて街を歩いていて

タツキ

色んな人たちに迷惑かけていた

タツキ

柔道部のクラスメイトや、交番のおまわりさんのことを殺してまわった

タツキ

彼らは行方不明になった

タツキ

なぜか、兄貴が犯人だって誰も気づかなかった

タツキ

誰かが終わらせてあげないと、いけなかったんだ

タツキ

兄貴は自分で終わることが出来なかったから

那由多

死んでも死にきれなかったタツキくんは、ナツキさんを殺す方法を探していた

那由多

私のところに来たのは正解ね

那由多

ここはドリームショップ

那由多

幽霊たちが夢を見る場所

那由多

そして、夢を見れなくなったものたちが、夢を見る場所

那由多

愚かなる人間に夢を見せる場所

那由多

夢に囚われ永遠に眠れ

那由多

タツキくんの依頼通り、ナツキさんをここにおびき寄せて、彼に夢を見せた

那由多

彼の身体はもう目覚めない

那由多

夢の中で魂もろとも、私が刺殺したから

那由多

この、抜け殻はどこに捨てる?

タツキ

兄貴の遺体は、兄貴が殺した彼らが眠る公園の茂みの中に置いて欲しい

那由多

そうね、それが良いわ

那由多

行方不明者の遺体が見つかって、世間は大騒ぎでしょうね。私たちには関係のないことだけど

タツキ

そうだね

那由多

ナツキさんの人生を捻じ曲げた貴方は、成仏はできないわ

タツキ

うん

那由多

生と死の狭間で、永遠に夢を見続けましょう

那由多

私たちと一緒に

タツキ

ひとつ、聞いてもいいかな?

那由多

何かしら

タツキ

オレを殺したのって……那由多ちゃん?

那由多

………

タツキ

兄貴はオレが生きていると思っていた……だってオレの死因は違うから

タツキ

4階から飛び降りたオレはその時は死んでいなかったんだ、病院で容態が急変して死んだんだよね

タツキ

誰かがオレに薬を投与した

那由多

……………

千歳

Gが出たー

タツキ

え?

那由多

な……

千歳

お願い、奴を滅ぼしてーー

那由多

フフフ、あの時もGが出たのよ

タツキ

え?

那由多

小学生の頃、トイレ掃除を押し付けられたとき私はGに遭遇した

那由多

みんな笑っていた。私を助けてくれたのは、低学年の年下の男の子だった

那由多

それが、タツキくんだった

タツキ

え?

那由多

嬉しかった、でも私は恥ずかしくてお礼が言えなかった

那由多

君が辛いときには、助けてあげようって……その時に誓ったの

那由多

数年後、私は自殺した。

那由多

幽霊として彷徨っているとき、女装して身体を売っている貴方を見たの

那由多

泣いている貴方を見てしまった

那由多

傲慢だと思う、助ける方法は殺して私の側に連れてくることしかないって

タツキ

何だ、そうだったんだ

タツキ

助けてくれて、ありがとう……那由多ちゃん

那由多

え?

タツキ

オレが助かる方法なんて、それしかなかっただろうから

タツキ

生きていても、身体を売る以外のことが出来なかったと思う。だから、ありがとう

那由多

バカね、最初に助けてくれたのはタツキくんなのよ

タツキ

これからも、よろしく……色々教えてください。先輩

那由多

せ、先輩として色々教えてあげる

那由多

男じゃなくて、女の子の扱いかたも……ね

タツキ

は……はい

千歳

こらぁ! Gをどうにかしてぇ

那由多

タツキくん、これは夢なのかもしれないのよ

那由多

この夢の中で、私たちは永遠の夢を見続けるの

タツキ

はい、これは夢の中の夢だからね

千歳

夢の中の夢だけど、Gはいるんだよ! 夢だけど、夢じゃないよコレ

タツキ

………対峙してきますよ

那由多

ダメよ、先輩の私の許可なくGを殲滅したら

タツキ

わ、わかりました……千歳さん頑張ってください

千歳

一番偉いの私なんだけど!!

那由多

あら、お客様? 初めてかしら?

タツキ

いらっしゃいませ

那由多

ようこそ、ドリームショップへ

千歳

はい、メニュー表だよ

那由多

私のオススメは、濃厚なる甘味の首つりサンデーだけどどうかしら?

那由多

あら? そっちの方が良いのね

タツキ

大丈夫だよ、彼女は怒っていないから

タツキ

オススメを無視したぐらいじゃ怒らないから安心して

那由多

ええ、好きなものを選んで良いのよ

那由多

フフフ、腐腐腐、どんな夢なのかは見てのお楽しみよ

那由多

じゃあ、目を閉じて

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