ギャー
ただいま
那由多、ひとりなの?
この男は起きないわよ
夢から覚めない
夢の中で死んでしまったのだから
こいつ、こんな顔してたっけ?
…………
ええ、こういう顔をしていたわ
さて、メニュー表を水に流しましょ
うん
メニュー表に書かれているのは、貴方の死因だったのよ……ナツキさん
ジャーっと
悪い夢は水に流しましょう
これで、良いのね?
タツキくん
うん、ありがとう。那由多ちゃん……
悪いわね、トイレで待たせて
待合室ないから
平気だよ
私は平気じゃない、ずーっと我慢していたんだから
もれちゃう
幽霊なのに?
あ、幽霊だから大丈夫だった
千歳さん、邪魔だから、トイレ行ってて
はい
騒がしくてごめんね
もう一度聞く、これで良かったのね?
オレが死んだあとも、兄貴はオレが生きてるって信じて街を歩いていて
色んな人たちに迷惑かけていた
柔道部のクラスメイトや、交番のおまわりさんのことを殺してまわった
彼らは行方不明になった
なぜか、兄貴が犯人だって誰も気づかなかった
誰かが終わらせてあげないと、いけなかったんだ
兄貴は自分で終わることが出来なかったから
死んでも死にきれなかったタツキくんは、ナツキさんを殺す方法を探していた
私のところに来たのは正解ね
ここはドリームショップ
幽霊たちが夢を見る場所
そして、夢を見れなくなったものたちが、夢を見る場所
愚かなる人間に夢を見せる場所
夢に囚われ永遠に眠れ
タツキくんの依頼通り、ナツキさんをここにおびき寄せて、彼に夢を見せた
彼の身体はもう目覚めない
夢の中で魂もろとも、私が刺殺したから
この、抜け殻はどこに捨てる?
兄貴の遺体は、兄貴が殺した彼らが眠る公園の茂みの中に置いて欲しい
そうね、それが良いわ
行方不明者の遺体が見つかって、世間は大騒ぎでしょうね。私たちには関係のないことだけど
そうだね
ナツキさんの人生を捻じ曲げた貴方は、成仏はできないわ
うん
生と死の狭間で、永遠に夢を見続けましょう
私たちと一緒に
ひとつ、聞いてもいいかな?
何かしら
オレを殺したのって……那由多ちゃん?
………
兄貴はオレが生きていると思っていた……だってオレの死因は違うから
4階から飛び降りたオレはその時は死んでいなかったんだ、病院で容態が急変して死んだんだよね
誰かがオレに薬を投与した
……………
Gが出たー
え?
な……
お願い、奴を滅ぼしてーー
フフフ、あの時もGが出たのよ
え?
小学生の頃、トイレ掃除を押し付けられたとき私はGに遭遇した
みんな笑っていた。私を助けてくれたのは、低学年の年下の男の子だった
それが、タツキくんだった
え?
嬉しかった、でも私は恥ずかしくてお礼が言えなかった
君が辛いときには、助けてあげようって……その時に誓ったの
数年後、私は自殺した。
幽霊として彷徨っているとき、女装して身体を売っている貴方を見たの
泣いている貴方を見てしまった
傲慢だと思う、助ける方法は殺して私の側に連れてくることしかないって
何だ、そうだったんだ
助けてくれて、ありがとう……那由多ちゃん
え?
オレが助かる方法なんて、それしかなかっただろうから
生きていても、身体を売る以外のことが出来なかったと思う。だから、ありがとう
バカね、最初に助けてくれたのはタツキくんなのよ
これからも、よろしく……色々教えてください。先輩
せ、先輩として色々教えてあげる
男じゃなくて、女の子の扱いかたも……ね
は……はい
こらぁ! Gをどうにかしてぇ
タツキくん、これは夢なのかもしれないのよ
この夢の中で、私たちは永遠の夢を見続けるの
はい、これは夢の中の夢だからね
夢の中の夢だけど、Gはいるんだよ! 夢だけど、夢じゃないよコレ
………対峙してきますよ
ダメよ、先輩の私の許可なくGを殲滅したら
わ、わかりました……千歳さん頑張ってください
一番偉いの私なんだけど!!
あら、お客様? 初めてかしら?
いらっしゃいませ
ようこそ、ドリームショップへ
はい、メニュー表だよ
私のオススメは、濃厚なる甘味の首つりサンデーだけどどうかしら?
あら? そっちの方が良いのね
大丈夫だよ、彼女は怒っていないから
オススメを無視したぐらいじゃ怒らないから安心して
ええ、好きなものを選んで良いのよ
フフフ、腐腐腐、どんな夢なのかは見てのお楽しみよ
じゃあ、目を閉じて