楽しくない
……
こんなところにいたんだ
………兄貴、どうして夢の中にまで現れるんだろ
それは、オレがお前の兄貴だからさ
しつこいんだな
弟のことが心配なだけだよ
血が繋がっていないのに
知っていたんだな
オレ、兄貴のことは尊敬しているよ
じゃあ……
目閉じてな
………
逃げないのかよ
向き合わないといけないから
じゃあ………
………っぁ
………あんた、楽しいの?
嬉しいの?
楽しく……ないな
これは、ある兄弟の物語よ
タツキくんは幼い頃から、童顔で女の子みたいって周囲にからかわれていた
タツキくんの家は貧乏で、父親は借金まみれだった
母親は姿を消していた
借金の返済のために、タツキくんのお兄さんはタツキくんを女装させて男に迫らせた
兄貴の頼みじゃ、仕方ないな
タツキくんは、お兄さんを尊敬していたし大好きだったから従っていた
だけど、耐えられるはずがない
苦しいって言っても、嫌って言っても、タツキくんのお兄さんは止めさせてくれなかった
学校では柔道部に虐められていた、家に帰るとお兄さんに拘束されていた
アンパン買ってこいって言っただろ
ジャムパンじゃねーよ!この女顔!!
ご、ごめんなさい
お兄さんの拘束から逃げ出して、交番に駆け込んだけど警察官はタツキくんを助けなかった
兄に監禁されているんです!助けてください!
家出少年か、困ったな
警察官は家出少年を家に送り届けた
タツキくんは二度目の脱走を図った、監禁されていたマンションから飛び降りた
…………
お兄さんもタツキくんを追いかけて飛び降りた
そして
助かったのは……貴方だけ
………
ああ、その通りだよ
貴方の名前は
ナツキ
………
タツキくんのお兄さん
………ああ、その通りだ
その姿はタツキくんのもの
…………ああ、そうだよ
これは、タツキくんの夢でもあるの
ナツキくんを殺すという
ああ
だけど、お兄さんと仲良くしたいという夢もタツキくんのもの
それは、弟を愛でたいという貴方の夢と一致したのだけど
この夢は、ただの一人芝居よ
………今まで通りに男に迫られて嫌がっていれば良かったのに、自分で自分を襲って楽しかった?
………
………
楽しくない
そう
殺してあげるわ