動けない鮫野木が存在しないかのように野沢は道を歩いていた。しかし何処か不自然に見える。何処か人として違う感じが何となくする。

 良く観察をしたら直ぐに違和感に気づいた。野沢に覇気と言った感情が無いように見えたからだ。生気がなく目の前だけを見て歩いている。まるで操り人形みたいになっていた。昨日のような刺々しい態度は面影が全くと言ってなかった。

鮫野木淳

おい、ボクっ娘……どうした?

野沢心

…………

 野沢は何も反応せず歩き続けている。鮫野木にも気づかないまま通り過ぎた。

 俺はその様子を横で見ることしたか出来なかった。呆然していると俺に突然女性が話しかけてきた。

???

君、何しに心ちゃんに話しかけたのかな?

???

もしかして君達がノイズなのかな?

鮫野木淳

ノイズ……ですか?

 俺に話しかけてきた女性は野沢の後ろに居た女性だった。

 いつの間にか近くに居た女性に驚きながらも野沢を目で追おうとしたら女性が鮫野木の顔を掴み強制的に女性と顔を合わさせた。

 紫の瞳に自分が映るのが分かる距離にまで顔が近い。俺は驚いて腰が抜けそうだった。女性は顔が合うと手を離して適切な距離をとった。

 紫色の長い髪をしたスタイルのいい女性は鮫野木を凝視していた。何か気にしているようで随分集中していた。

 こちらの異変に危機を感じて雪音と紗良が鮫野木の元に向かった。合流すると紗良は女性に質問をした。

六十部紗良

ちょっといいかしら、あなたは誰?

ムラサキ

わたし、か、この姿ではムラサキと呼ばれているかな

ムラサキ

それはそうと君達はノイズかな?

六十部紗良

ノイズの意味がさっぱり分からないのだけど、教えてくれないかしら

 ムラサキは首を傾げ「うむ」と声を漏らし困惑している。困っているよりは宛が外れたような様子を見せる。

ムラサキ

心ちゃんを餌にしておけばノイズが来ると思ったけど来なかったかな

ムラサキ

ただの人間が来てしまったかな

 残念そうに気を落としている。いじけているのか片足で地面を擦り付けていた。

 言動から察するに野沢心のことを知っているようだ。しかし、何かがおかしい。説明できないがムラサキは人ではない気がした。見た目では分からないが違和感が引っかかって人と認識しなかった。

 みんなも何処がそう思っているいるようだ。雪音と紗良は俺に視線を合わせると意思は決まった。

鮫野木淳

すみません、俺達はこれで

ムラサキ

なに勝手に帰ろうとしているのかな

 関わることを避けようとしたらムラサキはそれを止めた。

 俺はつばを飲んで質問をした。

鮫野木淳

どうして帰っていけないのでしょうか

ムラサキ

決まっているだろ。わたしの質問が終わってないからかな

 最初にムラサキと目が合った時みたいに恐ろしさを感じた。

 クソ、一体なんなんだ。ムラサキって人はまるで人じゃないみたいじゃないか。これは逃げるべきだろうか。けど下手に相手をしたら嫌な予感がする。

 こんな時、アニメの主人公なら知的に会話をして敵の情報を手に入れるとかするんだけど俺にはそんな器用なことは出来ないぞ。

 六十部先輩なら出来そうだけど任せても良いのか。

 三人とも口を開かない様子を見てムラサキは質問を初めた。

ムラサキ

君達はノイズではないと仮定するけど数が合わないかな。他の人間は何処に居るのかな

ムラサキ

他に三人居るはずだけど隠しているのかな

鮫野木淳

それって――藤松と凪沙のことか

ムラサキ

質問に答えるのが君達の選択かな。余計なことを言うのは時間の無駄かな

 俺は思わず口に出した。その事にムラサキはイラついたようで表情に出ていた。

 紗良はその様子を良くないと思ったのか鮫野木の前に出て代わりに答えた。

六十部紗良

三人とははぐれてしまったの、探していたらここに来た。そうよね

鮫野木淳

……ああ

 後ろを振り向いてアイコンタクトをとった。俺は引き下がるように感情を抑えこの場を紗良に任せることにした。

 俺としては情けないと思ったが相手が何を考えているか分からない以上俺では役に立たない。ここは紗良に任せた方が良さそうだ。

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