日の明かりで目が覚める。隣のベッドを除くと紗良と雪音が仲良さそうに寝ていた。

 誰かの提案で制服がシワになるから上着は脱いで寝る事になった。誰もがその提案に賛成して上着とネクタイをハンガーにかけて眠りについた。

 そのおかげかワイシャツ姿で眠る二人を見れているそうだ。気が抜けて上まで閉じていたボタンが一つ、二つ外され、そこから見える肌に目が行ってしまう。

 上着を脱いだとは言えこれはこれで……。

 俺はこの光景が現実と思えなかった。

 これは夢なのかと脳に問いかけたが寝起き独特のだるさで上手く判断できない。朝は上手く脳が動かないからだ。

 夢ならもう少し現実味のないのが観たい。望むならラブコメ主人公みたいな展開にならないだろうか。

 俺は夢だと思い込みシーツを被りベッドに横になった。

 ラブコメの主人公ならヒロインに起こされてハプニングの一つや二つがあっても不思議じゃない。

 そう、ヒロインが主人公を起こしに来たら布団の中に別のヒロインがいて口論になる。そして理不尽にビンタされたりする。

 隣のベッドに女子がいる事態奇跡に近いんだ。そんな展開にはならないよな。

 淡い期待を消して気がつけば二度寝をしていた。

小斗雪音

淳くん、いい加減起きてくれない

 誰かが俺を起こそうとしている。

 気持ち良く寝ているのに起こさないでくれ眠たいんだから。

 重い体に力をいれて起き上がった。背伸びをして起こしてくれた人に挨拶をする。

鮫野木淳

おはよう。ユキちゃん

小斗雪音

ようやく起きました。朝になりましたよ

鮫野木淳

見れば分かるよ……

 背伸びをした腕を下ろした時、手が暖かい物に触れた。それはまるで生き物のように息をしている事が手を通して伝わってきた。

鮫野木淳

何だ? この感じ何かおかしいぞ

 誰かいると思った時には全てが手遅れで雪音はシーツを引き剥がした。シーツが雪音の手によって剥がされると鮫野木の隣に丸まって眠る六十部紗良がいた。まるでマジシャンが何もないところから人を出すようにだった。

小斗雪音

淳くん、これはナニ?

鮫野木淳

ナニ? と言われても俺にもさっぱり分からん

 雪音の目をまともに凝視する事が出来なかった。出来ると言えばこの場を収める事だけだった。

 俺は紗良を起こそうとして揺さぶった。

 紗良は眠たそうに状態を起こすと目を擦る。

六十部紗良

あら、もう朝かしら

鮫野木淳

寝ぼけてないで起きてください。お願いしますから!

六十部紗良

寝ぼけるもなにも、どうして鮫野木くんは私のベッドにいるのかしら?

鮫野木淳

それは俺の言葉です!!

小斗雪音

淳くん、ちょっといいかな

 冷たく俺を呼ぶ声に答える。雪音に呼ばれベッドから降りて正面に立った。今までに見たことがない表情をしていた。

鮫野木淳

その落ち着いてみてはどうでしょうか

小斗雪音

私は落ち着いているよ

 俺の問に返事がなんて早いんだ。なんてこったラブコメの展開には憧れていたが実際に起きるとこんなに心が痛いとは思いもしなかった。

 睨みつける視線をそらし雪音は口を開く。

小斗雪音

淳くんはいつも美少女が好きだよね

鮫野木淳

そ、それはアニメ、二次元であってリアルとは違うのです

小斗雪音

魔装少女リンカだっけ? 確か黒髪の女の子が好きって言ったけどそういうことだったんだね

 ユキちゃんが言っているのは魔装少女リンカに出てくるパイラ・コンの事だ。聞き流していたと思っていたが覚えていたのか。

鮫野木淳

待て、確かに言った。けど、キャラが好きって訳で黒髪の女子が好きではない

鮫野木淳

それと雪音さん、あなたは何か勘違いしてる

小斗雪音

勘違い?

 勘違いを正さなければいけなかった。状況として雪音は鮫野木と紗良の間で何かがあった事になっている。実際、そんな事は起こっていないのは事実だ。

 俺は何も悪い事はしていない間違った事実を正すだけだ。

鮫野木淳

いいかいユキちゃん。俺は好きな相手じゃなきゃ手は出さないさ

鮫野木淳

それに俺は……えーと、自分で言うのもあれだが……ヘタレなんだぜ

小斗雪音

ふーん、そう

 雪音は冷たくあしらうと背中を向けてしまった。様子から間違いを正す事は無理に終わったようだ。

 完全に怒らせてしまった。俺なりに頑張ったんだけどな。

六十部紗良

あら、私に魅力がないみたいね。心外だわ

鮫野木淳

六十部先輩頼みますから冗談は言わないでください

 紗良の冗談を受け流し状況の打破に考えを回した。

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