泣き疲れて何もかも出し切った。その頃には車は目的地のキャンプ場にたどり着いていた。この場所なら人の目も新監視社会で増えすぎた監視カメラも気にせずに異能力の特訓が出来た。

 過去に戻る前はこの場所で異能力が使えるように協力者に教え込まれた。おかげで異能力を使い再びここにこれた。

 車を降り森の匂いが心を落ち着かせた。普段はキャンプや森林浴で人が多いそうだ。だがシーズンではないので人は二人を覗いて誰も居なかった。

美野 一四日

貸し切りみたいですよね

協力者

この時期はこんなもんだろ

 都内から離れて自然と近い穏やかな場所だった。季節が違えば星も綺麗に見れるそうだ。

美野 一四日

質問してもいいですか?

協力者

ああ、良いぞ

 こうして協力者と二人きりになる瞬間はない気がする。誰も居ないのだから聞いてもいいよね。

 協力者に対する疑問をぶつけた。

美野 一四日

あの……何で古暮(コグレ)って呼ばれていたんですか。それに門の教団と面識ありますよね

協力者

古暮か、それは過去に戻る前に知ったのか?

美野 一四日

はい、銃を持った群馬って人が読んでました

協力者

――そうか、未来じゃ群馬さんと戦うのか……俺は戦えたか?

 いくつかの体験で協力者は群馬と戦って破れていた。美野は知っている限りの事を伝えると協力者は何とも言えない表情を浮かべていた。

 美野が話し終わると協力者は本心を話した。

協力者

知っているならお前だけに話す。けど、他の人には秘密にしてくれないか

美野 一四日

はい、協力者さんにとって重要な事なんですよね

協力者

実は俺は三年前のテロで記憶が無いんだ

 何処か悲しみを感じさせる瞳から協力者は深刻そうだった。その心情を察した美野はより真剣に受け止める事にした。

 協力者は日本中で起きた同時爆破テロに巻き込まれた結果、記憶を失った。何も宛もない身元が分からない状態を門の教団が引き取ったそうだ。

 そこで異能力が使える事を知ったそうで群馬が率いる組織に預けられた。その組織で異能力を使えるように鍛えられ門の教団の仕事も手伝いさせられた。

 その時に群馬から古暮と名前を与えられた。

協力者

今思えば群馬さんは俺が異能力を使えるから手を指し伸ばしたんだろうな

協力者

利用価値が無いのに助ける気はない。そんな連中さ

協力者

一年以上は群馬のところにいたが段々門の教団のやり方がおかしいって感じていた

美野 一四日

例えばどんな事ですか?

 協力者は美野の目を見つめる。

協力者

異能力を使って人助けをする組織なら今も門の教団に居るさ

協力者

ただ、違法な方法で物資や資金を集めたりしてた。それと教団らしく祈りをしていたよ

協力者

どうだ。俺の事はどう見える?

 協力者の過去を聞いて答えは決まっていた。

 瞳に映る透き通ったものに何も疑う事はなく美野は協力者の手を握って目をそらさなかった。

美野 一四日

綺麗に見えます。過去から学んで戦っている目です。綺麗に決まったいます

美野 一四日

私は過去から何も学ばないでここに居るのが恥ずかしいですけど

協力者

――離してくれないか

美野 一四日

あ、ごめんなさい

 手を離しちょっとした沈黙の後、協力者は口を開いた。

協力者

昔話をしよう

協力者

俺が門の教団から逃げて直ぐに蒼依さんにAnother誘われたんだ。最初は怪しかったがいく宛もなかったし目的もなかったから誘いに乗ってしまった

協力者

まさか敵対していた親玉にスカウトされるなんて思わなかったな

 気軽に昔話を話しだした。まずAnotherで名乗る名前がなかった為、協力者と名乗った事。

 結成したばかりのAnotherに女子がいない事に五十嵐が嘆いていた。この頃から五十嵐の事が苦手になった事。

 槇木兄妹が来た時はうるさい兄とおとなしい妹達のデコボコな関係が羨ましかった事。

 パニーチェが来た時は癖がすごい奴が来たなと思ったが礼儀が正しい事が分かつた事など協力者の過去を話した。

 過去の話を聞いて疑問が浮かんだ美野は質問をした。

美野 一四日

あの、気になったんですけど蒼依さんはどうやって協力者さん、異能力者を探したんでしょうか?

協力者

それか、俺も気になって聞いたんだが企業秘密だよって教えてもらえなかったな

協力者

多分、蒼依さんの異能力なんだろう?

 協力者さんでも知らないのか、なら仕方ないよね。蒼依さんにも秘密にしたいことはあるだろうし聞くのは野暮だな。

 人には事情があると思いこれ以上聞くことはなかった。

メビウス・ザ・ループ(23)

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