けれど、警察の発表を信じていなかった。なんせ大人達は各自で真実を追い求めていたからだった。日にちをまたぎ緋物学園の六人の生徒が廃墟で倒れて発見された。
けれど、警察の発表を信じていなかった。なんせ大人達は各自で真実を追い求めていたからだった。日にちをまたぎ緋物学園の六人の生徒が廃墟で倒れて発見された。
その事件の違和感を突き止めているうちに気付きがあった。
その一つが有毒ガスの発生していない事に繋がった。
先輩の感が正しかったですね
偶然、噂を知っていただけさ
鬼灯が軽くため息を吐いたところに白衣を着た男が現れた。男は手に持っていた封筒を鬼灯の前に置いた。
久しぶりです。六十部先輩
はい、久しいですね。吉良くん
落ち着いた様子で吉良の隣に座った。
皆さんとは大学以来ですね
そうだな、六十部武蔵(ロクジュウブムサシ)
そうですね。鬼灯
ほう――
自分の名前を呼び捨てされて怒りを抑える。訳があって鬼灯は六十部武蔵の事が嫌いだった。鬼灯と違い武蔵は気にする素振りを見せない。
吉良は鬼灯と武蔵の険悪のムードを遮るように話した。
えーと、これは何ですか? 六十部先輩
先輩はよしてくれ吉良くん、もう学生ではありません。気軽に……呼び捨てても良いのですよ
いや、俺の中で六十部先輩が定着してるので、どうも……
そんな事どうでもいい
話を遮り鬼灯は封筒の中身を取り出した。二十枚も超える書類があった。鬼灯は一枚ずつ書類を確認する。
鬼灯は目つきを変え集中していた。
あなたに言われた通り用意しましたよ。被害者全員の治療録です
用意するのに手間がかかりましたよ
武蔵を無視して読み続けた。その事に嫌気を指すこともなく武蔵は眼鏡をかけ直す。ミミタンは聞き覚えのない言葉に首を傾げてた。
被害者の治療録?
カルテの事ですよ。ミミタンさん
鬼灯に頼まれて集めました。廃墟で意識を失った全ての患者のカルテですよ
その事を聞いてミミタンは落ち込んだ。
雪音ちゃんのもあるの……
はい、私の妹のカルテもあります
二人の妹は同じ病院で入院をしていた。目覚める気配は不明だった。いつ目覚めるか分からない妹が心配で仕方のない。武蔵も表情に出さないが同じ気持ちだろう。
治療録を見た鬼灯は武蔵に問いを投げた。
ところで死因が同じなのはどう思う医者?
死因が同じってちょっといいですか
吉良はカルテを受け取り確認した。カルテには患者の名前から住所といった個人情報やら入院情報が書かれていた。
その中に吉田一誠の名前もあった。カルテにも死因が心臓発作と書かれている。
死因だけを見ると六名を除く二十三名が心臓発作で亡くなっているのが分かった。
二十人近くが同じ場所で意識を失い、同じ死因で亡くなっている。こんな偶然があるだろうか。
カルテの通りですよ心臓発作で亡くなっています
廃墟で発見されて入院、日にちは別々ですが昏睡状態から心臓発作で亡くなっています
ただ、K・S記念病院で預かっている六名の緋物学園の生徒は別です
小斗雪音、久賀秋斗、鮫野木淳、凪沙新吾、藤松紅、六十部紗良は昏睡状態で入院しています
原因は不明ですが彼らも心臓発作で亡くなるかもしれません
カルテの情報が物語っていた。ミミタンは落ち込みを隠せないでいた。
……そんな
それって雪音ちゃんはどうなるの?
――メイドが落ち込むんじゃない。そうだろミミタン
鬼灯ちゃん
鬼灯は背中を優しく叩いた。そして息を強く吐いた。
正直ここまでだとは思わなかった
それで医者の六十部武蔵、お前はどう思う? ガスの発生しない山の有毒ガスが原因と思うか?
鬼灯はカルテを一度、見つめて話した。武蔵は黙って話を聞いた。
これだけの人が犠牲になっている。これからも出るかもしれない
私は生徒を止めることが出来なかった。けど、救うことは出来るはずだ
一度、科学を捨ててみないか?
四人の大人達は選択をしなければ行けなかった。未来に関わる選択になる事など知る由もないままに……。
裏の世界
完
次回
カゴメ中学校
つづく