オカルト雑誌マーの編集である富乃は頭を抱えていた。ある噂について調べていていたからだ。

 女の子と楽しく過ごせて遊べる男の楽園があると言う都市伝説があった。その名も生命の果実、その店に通った客は夢のような店と言われる。

 サービスもいい、まるで天国のようだった。満足度満点で文句の付けようのない店らしい。

 しかし、もう一度同じ店に行こうとしても二度とたどり着けないそうだ。どんなに探しても見つからないらしく諦めるしかないようだった。

 そのせいで廃人になった人や他の店では満足できない人がいるらしい。二度と行けない幻の店が存在すると噂になっているそうだ。

 富乃は夜の繁華街でありもしない生命の果実を探していた。

定員

お兄さん、無いよ……生命の果実なんて

富乃

そうですよね

 編集長から探せと言われ一ヶ月以上も経とうとしていた。期限までもうすぐで終わりだ。長い取材に嫌気を指していた。

 ただ、生命の果実に関する情報はぼちぼちと出てきた。見つからない割に噂は聞く、だから都市伝説なのだろう。

老人

あんた生命の果実を探しているのかい

富乃

はい、探してますが……

 老人はどうやら富乃を探しているようで声をかけたそうだ。老人は生命の果実を探すのをやめる事と生命の果実を忘れる事を伝えにきたそうだ。

老人

探しているのならやめたほうが良い。俺みたいになる

富乃

おじいさんみたいに?

老人

ふっ、おじいさんね……

老人

ここでは詳しく話せん、場所を変えるぞ

富乃

そ、そうですね。場所を変えましょう

 怪しいと思ったが数少ない情報でもあり締め切りに追われていて付き合うことにした。

 生命の果実に行った事がある斉藤(仮名)と共に近くにあったファミレスに向かい話を聞くことになった。

 富乃は許可を得て話の内容をボイスレコーダーで録音をした。

富乃

斉藤(仮名)さんは生命の果実に行ったことがあるんですか

斉藤(仮名)

あるから止めようとしているんだ

富乃

止める?

斉藤(仮名)

あんたはあそこに行こうとしたんだろ?

富乃

いえ、私は取材で――

斉藤(仮名)

取材でもいかん!!

富乃

まぁまぁ、落ち着いて……

富乃

どのような店でしたか? 行かないので教えて下さい

斉藤(仮名)

五年前だった――あの店はまるで天国だったよ

富乃

天国ですか

斉藤(仮名)

飲み歩いていて気が付いたらその店に居た

斉藤(仮名)

酔いが冷めたよ。余りにも綺麗すぎて

富乃

その店の場所は覚えてますか?

斉藤(仮名)

覚えてるよ。二回行ったからな

富乃

二回ですか!

 噂では二度と行けないと有名だった。その場所に二度行ったとなると本当に存在する可能性が高くなった。

斉藤(仮名)

欲に負けたんだよ。まぁ、もう行きたくない。いや行ってはいけない……だな

斉藤(仮名)

なぁ、俺は何歳に見えるよ?

 富乃は顔を良く覗いた。白髪にシミが目立つ肌、老けて見える人柄は七十以上に見える。

富乃

えっと、七十五とかですか?

斉藤(仮名)

三十二……だよ

 免許証を取り出して目の前に置いた。免許証を取り確認すると間違いなく三十二歳だった。証明写真の斉藤(仮名)と目の前にいる斉藤(仮名)は同一人物みたいに見える。

 偽造でなさそうな免許証を取り返して話した。

斉藤(仮名)

いいか、あそこは天国であり地獄だ。俺のようになりたくなければ行くんじゃない

富乃

…………

富乃

何があったんですか?

斉藤(仮名)

あんたの雑誌だから話すが吸い取られたとでも言うべきなんだろう

斉藤(仮名)

力が抜けて俺は廃ビルで倒れていた

斉藤(仮名)

この姿でな

富乃

そうですか……

 最高の快楽を味わうっているのは客ではなく店の方だと言い残して斉藤(仮名)と別れた。最後に廃ビルのある場所に向かったがそこはコンビニになっていた。良く思えばあの老人は免許証の写真と良く似た人だったかもしれない。

 結局のところ生命の果実は見つからなかった。しかし、生命の果実は存在する。取材をして確信に変わった。

 富乃は取材を元に記事を書いた。

※この話はフィクションです。実際の人物・団体・事件とは一切関係はありません。

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