紗良は立ち上がり二人の前に移動した。何処か嬉しそうな紗良に俺は質問をする。

鮫野木淳

何かいい事でもありました?

六十部紗良

ええ、鮫野木くんのおかげで

 そう言うと紗良は病院の奥へ向かう。その後を俺と雪音は付いて行った。

 電気が付いていない廊下を進み、階段をいくつか上がると入院施設のある階を歩いていた。紗良はある病室の扉を開け入った。二人も紗良に続いて病室に入る。

 病室は電気が付いていた。二人用の病室らしくベッドが二つ置いておりテレビや収納デスクなど備え付けており生活に困らない病室だった。

 雪音は気になり紗良に聞いた。

小斗雪音

あの、ここに何かあるんですか?

六十部紗良

無いわよ、ただの部屋よ

六十部紗良

夜は暗くなければアンノンは襲ってこないわ。ここはただの休む場所よ

 紗良はベッドに腰を深く沈めた。

六十部紗良

雪音さんはもう一つのベッドを使いなさい。鮫野木くんは椅子があるわよ

鮫野木淳

まるでそこで寝たら? みたいな言い方してますが、冗談ですよね?

六十部紗良

あら?

 紗良は今までに見せない驚いた表情をしていた。

鮫野木淳

あらって本気で提案したんですね!

鮫野木淳

俺だってベッドで寝たいんですが

六十部紗良

それなら、隣に同じ間取りの部屋があるわ。そこで寝れるわよ

六十部紗良

電気を付けて寝る事ね。アンノンが入って来るかもよ

 紗良は不敵に笑っていた。心の底で笑っている事が分かる。

鮫野木淳

六十部さんが楽しいそうでなりよりです……

六十部紗良

冗談は抜きにして鮫野木くん、緋山にある家に住んでる子が居るのね

鮫野木淳

えっ、そうですね

 スイッチを入れ替えたように真面目に紗良は質問をした。

六十部紗良

その子はどんな子かしら?

鮫野木淳

女の子ですよ。多分、中学生です。警戒されて警察を呼ぶなんて言われたな

鮫野木淳

家の前に知らない学生が居たら怖いよな

鮫野木淳

確か名前は……の、何だっけ?

小斗雪音

野沢心だよ。淳くん

鮫野木淳

お、それだ。良く覚えてたな

 名前が思い出せない俺の代わりに雪音が答えた。記憶力の良さに感心する。

六十部紗良

へぇーそうなの

 例えるなら探偵の顔とでも言うのか紗良は何か閃いたようだ。考えがあるそうで紗良は椅子に腰掛け静かになった。

 残された二人は話し合って同じベッドで寝ることにした。

 ついでに一つ分かったこと、六十部紗良はかなり気まぐれで自由な人だ。

 緋物市にあるとある全国チェーン店にメイド服を着た女性と背の低い白衣を着た女性が居座っていた。そこに若い男性が合流した。

男性

小斗先輩、久しぶりです

ミミタン

この姿ではミミタンです。吉良くん

吉良正和

あ、そうでしたね

 久しぶり合った先輩に頭が上がらない吉良正和(キラマサカズ)は少し恥ずかしそうにしていた。

鬼灯先生

まあいい、それでアイツは?

吉良正和

六十部先輩は遅れるそうです。仕事が仕事ですから

鬼灯先生

ふん、医者だからな

吉良正和

分かっているなら怒らないで下さいよ

 鬼灯は鋭く吉良の目を睨んだ。吉良は直ぐに視線を逸した。

 うわー怒ってるな。まぁ仕方ないんだけど、会うって言ったのは先輩だし会いたくないけど大人としてけじめを付けに来たんだな。

鬼灯先生

まあいい、それで状況は?

 吉良は鬼灯の正面に座り話す。

吉良正和

はい、合計六名の緋物学園の生徒が旧野沢家跡地で倒れてから二人は十二日、四人は三日、未だに目覚める気配はありません

鬼灯先生

それは知ってる。過程は飛ばせ

吉良正和

すみません、職業柄で――では、調査したところ廃墟の映像を投稿していたY氏もとい吉田一誠(ヨシダイッセイ)さんは噂通り亡くなっていました

吉良正和

死因は心臓発作でした。ネットに上がってない部分の動画も見ました。吉田さんが撮影準備をしている場面でしたね。後はネットに上がっている通りです

鬼灯先生

そうかY氏は死んでいたか……

 内容を聞いて鬼灯は気を落とした。何かしら情報が欲しかったからだった。

吉良正和

はい、動画自体に編集はありませんでした。恐らく襲われた可能性が大です

鬼灯先生

吉良、警察が言っている通り地下から発生した有毒ガスのせいと思うか

 吉良は横に頭を振った。Y氏もとい吉田一斉が気を失った原因は有毒ガスではないと確信しているからだった。

 緋山のような山で有毒ガスが発生しない。調べれば誰にも分かることだが警察は有毒ガスのせいにしていた。

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